1.東日本大震災
長谷川達夫は大学一年生。
すり鉢状の大教室の中ほどの席で、教養ゼミナールの授業を受けていた。
講座名は「地震って何?」だ。
今日のテーマは、先生も体験した十数年前の東日本大震災についてである。
「すさまじい力で部屋がゆすられ、私は壁にたたきつけられた。」
「つぶれた家の2階から這い出ると、周りは爆撃されたように破壊された建物が広がっていた。」
「余震が続き、火災も発生したので、けがをした人たちを助けながら、裏の高台に避難した。」
「しばらくして不気味な海鳴りの音が聞こえ、水平線に灰色の高い城壁が現れた。」
「その灰色の高い壁はすごいスピードで陸地に迫ってきて、眼下の街を飲み込んでしまった。」
「私たちは、まだ街に残っている人たちのことを思い、声も出なかった。」
映像を交えた先生の話は、臨場感にあふれていた。
「この、いつ起こるかわからない地震について、私たちは知っておく必要があります。」
東日本大震災:
2011年3月、東北地方を中心に襲った大地震。
震源は、宮城県沖130キロ、深さ24キロで、その規模はモーメントマグニチュード、
MW9.0であった。(日本周辺における観測史上最大の地震)
倒壊や大津波、火災などにより、2万余名の死者、行方不明者が発生した。