「パスツール君、それでは微生物が発生しないのは当然だよ。」
著名なフランスの博物学者、フェリックス・プーシェは反論した。
1862年、ここはフランス科学の最高峰、パリの科学アカデミーの会場だ。
4年前、プーシェはこの不思議な生命体、微生物は発酵や腐敗によって生ずる化学作用により、自然発生する、という論文を発表した。
人間はもちろん、あらゆる動物、鳥、昆虫等は皆、その親から生まれる。
しかし、この未知だった微生物は、それらとは違って自然に「わき出てくる」ものではないか、という考えが多くの学者に支持されていた。
プーシェがその代表格だ。
しかし、微生物も他の生きものと同じく、親なる生命から生まれてくるものだ、と主張する学者もいた。
パリ高等師範学校の理学部長で、化学者のルイ・パスツールだ。
この論争に終止符を打つべく、科学アカデミーはこの問題に関する実験に基づいた研究を公募した。
パスツールは次の実験を行い、それを発表した。
フラスコ内の微生物を培養する液体を沸騰させ、完全殺菌
フラスコの口をガラスごと溶かし、密封
培養液内を顕微鏡で観察
1ヶ月経っても、培養液内には微生物見られず
完全殺菌、完全密封すれば、微生物は発生しない
この発表に対し、プーシェは激しく批判した。
「新鮮な空気、すなわち酸素がフラスコに入ってこなければ、生きものはいきられない。」
「こんな実験は、全く無意味だ!」
参考図:「ルイ・パスツール」、平見修二、リブリオ出版、1994
最新の画像もっと見る
最近の「世界は微生物で満ちている!」カテゴリーもっと見る
最近の記事
カテゴリー
- クリミアの歴史(7)
- 「オリエント急行」バルカンを行く(9)
- ウイルスって何だろう(6)
- 不死身の通信ネットワークを構築せよ!(6)
- ヒトラーのいない第二次世界大戦(7)
- 不思議な病気(8)
- 秀吉の野望と挫折(9)
- 生命の源「アミノ酸」(6)
- 「ドイツ民主共和国」の消滅(8)
- ナイルの水争い(8)
- ドン・カザーク(19)
- 貧者の空軍(9)
- 地震って何?(7)
- 遥かなる海へ(16)
- 北軍兵士の見た「風と共に去りぬ」(12)
- 脳内麻薬を捜せ!(9)
- 19世紀パリの光と影(9)
- 若宮丸の航跡(9)
- 原爆スパイ(8)
- 「北京の55日」番外編(8)
- 「地球外生命」はいるか?(5)
- 「林彪事件」の謎(8)
- 金(きん)(8)
- 国歌いろいろ(6)
- 悪党(鎌倉末期)(6)
- 老化を防げ!(5)
- 森の中に消えゆくトラ(4)
- テスラー成功と挫折(7)
- 国境とは?(25)
- 日記(0)
- 大西洋(696)
- ソマリアの青い海(20)
- 吹雪のバルト海(24)
- ペルシャ湾波高し(24)
- ロック・オン(20)
- ワレ「雪風」ト共ニ(20)
- 騎兵隊、前へ!(26)
- 惑星の動きを探れ!(19)
- 東方見聞録序章(25)
- 元素を捜せ!(25)
- レアメタルは戦略物質だ!(6)
- 種はどこから?(17)
- 智の都、アレクサンドリア(20)
- 文化大革命の嵐(22)
- 世界は微生物で満ちている!(19)
- 連合艦隊の誕生(17)
- 鉄砲見参!(18)
- 成功は失敗の始まり(17)
- 黒船の影(19)
- 石油の一滴は血の一滴(15)
- 前門の虎、後門の狼(8)
- 月をめざして(18)
- 水の不思議と太陽の恵み(17)
- がんの正体をあばけ!(10)
- 旅行(0)
- グルメ(0)
バックナンバー
人気記事