推進器の製造現場に出向いた。
「金剛」の推進器の直径は約3メートルだ。
鋳型を造り、材料のマンガン黄銅を流し込み、原型を造る。
機械加工の後は手作業による精密加工だ。
推進器は3次元の複雑な形状をしている。
半径方向に違った傾きで螺旋を描く。
しかも、各半径で切った断面は薄い円弧状をしている。
定盤の上にセットされた推進器に作業員が取り付き、ジグを用いて計測しながら、推進器表面を削っている。
担当技師のロバーツ氏が説明してくれる。
「この推進器の形状は、いろいろな試験や計算をして決定したのだよ」
「いくつもの模型を造って性能を計測し、設計図表を作り上げた。」
「一番苦労されたのは、どこですか?」
「翼断面の形状だ。」
「艦の馬力が大きいので、推進器にキャビテーションが起こりやすい。
キャビテーションによる推進器の性能低下やエロージョンを避けるよう工夫したんだ。」
私は材質の成分比、加工の仕方、計測ジグ、検査のやり方などを聞き、ノートに書き取った。
ロバーツ氏は質問の多さに辟易としていたが、それでも丁寧に答えてくれた。
6ヶ月があっという間に過ぎ、「金剛」の進水式を迎えた。
皆が見守る中、くす玉が割られ、するすると「金剛」の船体が滑り降りていく。
そして、真っ白い水しぶきを上げ、ゆっくりとその巨体を海面に浮かび上がらせた。
すばらしい眺めだ。
隣の長尾君に話しかける。
「我々もこの艦以上のものを絶対に造ろうな!」
その後、日本から来た次の技術者達と交代し、我々は帰国の途についた。
参考図:http://dragoner-jp.blogspot.jp/2014/06/blog-post_6.html
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