
米国ではデリバティブ取引の価格データがまもなく公表を義務付けられる。不透明な市場に光が当たり、業界を牛耳ってきた一握りの市場参加者の力が弱まるかもしれない。
2010年に成立した米金融規制改革法(ドッド=フランク法)は、デリバティブ市場について価格の透明性確保に主眼を置いている。同市場では実際の取引価格の検証が難しい場合があり、金融危機の際にはこうした不透明感ゆえに、クレジット・デフォルト・スワップ(CDS)市場で企業の健全性をめぐってパニックが起こるケースが見られた。
不透明な取引構造下では受け手と出し手の価格スプレッドが広がるため、市場を支配する大手ディーラーはこれを利用して利益を上げることが可能だ。一部の大手資産運用会社は銀行から有利なプライシングを提示されたり、銀行間の価格差を駆け引きに使うことでも恩恵を受けてきた。
こうした状況が変わろうとしている。取引データを収集する企業は間もなく、データの公表を義務付けられる。
スタンフォード大学のファイナンス学教授、ダレル・デュフィー氏は新規則について「競争を促進し、市場参加者の調査コストを引き下げ、大手ディーラーの寡占的な力を弱めるだろう」と話す。
米商品先物取引委員会(CFTC)は20日、取引データ公表の期限を来年4月10日まで延長した。公表されたデータは大きな注目を集めるだろうし、小規模な市場参加者は自らが提示された価格と他の投資家のそれとを見比べることが可能になる。銀行側は、大手顧客に有利な価格を提示すれば他の顧客からも同様の扱いを求められかねないため、こうした慣行を控えるようになるかもしれない。
<社債市場で実績>
少なくとも当初は、市場ボラティリティが高まり大口取引の実行が難しくなるとの指摘もある。
一部の大手資産運用会社は、価格の透明性により自らの取引ストラテジーが公になったり、取引主体が特定されてしまうなら、取引の執行能力が損なわれかねないと訴えている。ディーラーも、顧客向けにヘッジポジションを取るのが困難になる可能性があると言う。
価格データは一定の期間後に公表され、その期間は取引の種類毎に異なる。しかし初年度以降はこの猶予期間がCFTCの要請により縮小することになる。公表されるデータは取引契約の種類、デュレーション、価格、名目規模などで、これらの情報はダウンロードできる。
社債市場は2002年に透明性強化を狙った取引報告法令順守エンジン(TRACE)制度を採用済み。社債市場の経験に照らすと、デリバティブ市場の流動性がデータ公表により損なわれるとの心配は行き過ぎのようだ。
バブソン・カレッジ(マサチューセッツ州)のファイナンス学教授、マイケル・ゴールドスタイン氏は「流動性は損なわれなかった。(デリバティブ市場でも)同様ではないか」と話す。社債市場では、新たな透明性強化制度が取引コストの軽減にも役立った。ゴールドスタイン氏は「価格スプレッドは(新規則導入後)すぐに縮小した。そしてその効果は時を経るにつれさらに強まることが証明された」と述べた。
<導入時期の遅れも>
ただ、銀行がスワップ取引のデータ保管機関に情報を送信する際の技術的な問題などにより、新規則の導入時期が遅れかねないとの懸念が一部で持ち上がっている。
しかし米証券保管振替機関(DTCC)のマネジングディレクター、マリソル・コラーゾ氏は、資産クラスと商品毎に切れ目なく価格情報を提供する準備が整っており、ウェブサイト上ではRSSフィードも提供すると説明している。
インターコンチネンタル取引所傘下のICEトレード・ボールトのブルース・タッパー社長は、ICEもリアルタイムでのデータ配信や公表猶予期間の適用、取引相手の匿名化といった準備が整っていると述べた。
当時http://www.nli-research.co.jp/report/kkyo/2010/2011_03/kkyo1103-2.pdfこんな研究結果もありますね
以前よりずっと慎重に価格を提示するようになる
長期的には市場の健全性を高めると思われます
フィクストインカム市場における電子取引環境の拡大に向けた大きな一歩
そういえば最近、為替スワップは規制除外されました
記事内にもありますがCMEグループが連邦裁判所に訴えたりしてますがその訴えの行方も気になりますね
2010年に成立した米金融規制改革法(ドッド=フランク法)は、デリバティブ市場について価格の透明性確保に主眼を置いている。同市場では実際の取引価格の検証が難しい場合があり、金融危機の際にはこうした不透明感ゆえに、クレジット・デフォルト・スワップ(CDS)市場で企業の健全性をめぐってパニックが起こるケースが見られた。
不透明な取引構造下では受け手と出し手の価格スプレッドが広がるため、市場を支配する大手ディーラーはこれを利用して利益を上げることが可能だ。一部の大手資産運用会社は銀行から有利なプライシングを提示されたり、銀行間の価格差を駆け引きに使うことでも恩恵を受けてきた。
こうした状況が変わろうとしている。取引データを収集する企業は間もなく、データの公表を義務付けられる。
スタンフォード大学のファイナンス学教授、ダレル・デュフィー氏は新規則について「競争を促進し、市場参加者の調査コストを引き下げ、大手ディーラーの寡占的な力を弱めるだろう」と話す。
米商品先物取引委員会(CFTC)は20日、取引データ公表の期限を来年4月10日まで延長した。公表されたデータは大きな注目を集めるだろうし、小規模な市場参加者は自らが提示された価格と他の投資家のそれとを見比べることが可能になる。銀行側は、大手顧客に有利な価格を提示すれば他の顧客からも同様の扱いを求められかねないため、こうした慣行を控えるようになるかもしれない。
<社債市場で実績>
少なくとも当初は、市場ボラティリティが高まり大口取引の実行が難しくなるとの指摘もある。
一部の大手資産運用会社は、価格の透明性により自らの取引ストラテジーが公になったり、取引主体が特定されてしまうなら、取引の執行能力が損なわれかねないと訴えている。ディーラーも、顧客向けにヘッジポジションを取るのが困難になる可能性があると言う。
価格データは一定の期間後に公表され、その期間は取引の種類毎に異なる。しかし初年度以降はこの猶予期間がCFTCの要請により縮小することになる。公表されるデータは取引契約の種類、デュレーション、価格、名目規模などで、これらの情報はダウンロードできる。
社債市場は2002年に透明性強化を狙った取引報告法令順守エンジン(TRACE)制度を採用済み。社債市場の経験に照らすと、デリバティブ市場の流動性がデータ公表により損なわれるとの心配は行き過ぎのようだ。
バブソン・カレッジ(マサチューセッツ州)のファイナンス学教授、マイケル・ゴールドスタイン氏は「流動性は損なわれなかった。(デリバティブ市場でも)同様ではないか」と話す。社債市場では、新たな透明性強化制度が取引コストの軽減にも役立った。ゴールドスタイン氏は「価格スプレッドは(新規則導入後)すぐに縮小した。そしてその効果は時を経るにつれさらに強まることが証明された」と述べた。
<導入時期の遅れも>
ただ、銀行がスワップ取引のデータ保管機関に情報を送信する際の技術的な問題などにより、新規則の導入時期が遅れかねないとの懸念が一部で持ち上がっている。
しかし米証券保管振替機関(DTCC)のマネジングディレクター、マリソル・コラーゾ氏は、資産クラスと商品毎に切れ目なく価格情報を提供する準備が整っており、ウェブサイト上ではRSSフィードも提供すると説明している。
インターコンチネンタル取引所傘下のICEトレード・ボールトのブルース・タッパー社長は、ICEもリアルタイムでのデータ配信や公表猶予期間の適用、取引相手の匿名化といった準備が整っていると述べた。
当時http://www.nli-research.co.jp/report/kkyo/2010/2011_03/kkyo1103-2.pdfこんな研究結果もありますね
以前よりずっと慎重に価格を提示するようになる
長期的には市場の健全性を高めると思われます
フィクストインカム市場における電子取引環境の拡大に向けた大きな一歩
そういえば最近、為替スワップは規制除外されました
記事内にもありますがCMEグループが連邦裁判所に訴えたりしてますがその訴えの行方も気になりますね