若いころ、瀬戸内寂聴に傾倒していた。寂聴がまだ「瀬戸内晴美」を名のっていた時分から彼女の著書を求めていた。その中に初秋に咲くハギの花を讃えた一節があった。「よし、ハギを植えよう」と思い立ち園芸店に足繁く通ったり果ては通販で取り寄せたりして庭に植え込んでいった。ハギにも色んな種類があり何年かは楽しんだが。理想はハギの花のトンネルを庭に登場させる事だった。
浅はかにも、ハギの旺盛な成長ぶりは学習してなかった。狭い庭がハギに占領されるまでそんなに年数はかからなかった。ハギの花のトンネルの夢は叶わぬまま撤去と相成った。もう品種の呼び名は忘れてしまったが成長の遅いハギだけ数本残したが、他の花木に埋もれてしまい私からも忘れられてしまった。
愛読書も「瀬戸内寂聴」から新田次郎、藤沢周平、山本周五郎と変化して来た。私もこの里山に根をおろし20年余になるが、土手や草原に自生するハギの花を身近に目にするようになってハギは大自然のなかに咲くのが一番だとしみじみと思うようになった。