「さらば 八月のうた」 (劇団M.O.P)
2010年8月13日(金) at 紀伊国屋ホール
作・演出 マキノノゾミ
キャスト キムラ緑子/三上市朗/小市慢太郎/林英世ら、劇団員
劇団M.O.P.の最後の公演。最後も新作「さらば 八月のうた」。
この日は、仕事の打ち合わせや諸々の諸事情で、夜のこの公演に新宿まで行くのが難しい状況で、チケットを誰かに譲ろうかな、と当日の昼まで迷っていたのだ。
でも、最後だぞ、M.O.P.は最後だぞ、ここ何年もこの劇団の芝居を観る機会がなくて、それで最後なんだぞ、解散しちゃうだぞ、と心の中で誰かがグズグズ繰り返すもんだから、エイヤッと新宿・紀伊国屋ホールに駆けつけた・・・という経緯があるのだ。
だけど、本当に行ってよかった。行かなければ、それはそれで知らないわけだから、どうってことなく過ぎたかもしれないけど、でもそれは大きな大きな損失だったぞ。ああ、チケットを譲らなくてよかった・・・。ホントによかった。
■「悔い」
ココを読むと、マキノノゾミがなぜM.O.P.を解散するのか、M.O.P.が彼にとってどういう存在だったか・・・、わかるようでわからない気持ちになります。
わからないけれどわかる、そんな感じです。
でも、この集団がどんなふうに進んできたか、終わろうとしているのか・・・、なんだか「わかる」と言いたい気持ちになります。
それが、もう10年くらいM.O.P.を観なかった私の「悔い」であり、「悔い」であり、「悔い」なのです。ああ・・・。
■才能
DJ(キムラ緑子)がリスナーからの「ある歌」のついての疑問を受け取るところから始まります。
その歌にまつわる出来事が寒川丸(氷川丸のことだね)の甲板で、戦争中から現代までの間繰り広げられ、そのオムニバスのようなエピソードが終盤、見事につながっていく。すべて、その「わかれのうた」にまつわる出来事なのです。
戦時中、慰問船や病院船として使われた寒川丸でのエピソードには、マキノさんのおしつけがましくないメッセージが感じられるけれど、それ以外は、人の運命をおもしろおかしく、スピーディーに、でも結局胸に迫る上質な切なさに昇華させてくれます。
おかしくて笑ってしまって、でもそのあとでふっと立ち止まって胸を震わせる、そんな感じでしょうか。
その数々のエピソードのバックには、26年(M.O.P.の年月と同じ)続いた番組の打ち切りを前にした中年の女性DJの悲哀が描かれ、それもさりげなく胸に迫ってきます。
理屈じゃない「おもしろさ」と、よくできたストーリー展開は、マキノノゾミ氏の得意とするところなのだなあと、改めてその才能を感じます。
■いちばん好きな女優さん
もうキムラ緑子さんのすばらしさ、艶っぽさ、はなやかさ、憎らしいくらいのうまさ、えぐさ・・・。それが光って光っています。
DJ以外に、戦時中の漫才師(最後にDJの女性の祖母であったことがわかるのですが)の二役なのですが、こちらの奔放な役柄は彼女でなくては、と思います。
ここ何年も、私のいちばん好きな女優さんだったのだと、改めて気づいてしまいました。
この人が出る芝居はついついチケットを求めてしまうのですが(いつも満足させてもらっています)、やっぱりM.O.P.ではその魅力が200%くらい輝きます。
DJの相手役の小市慢太郎さん。この人の声と安定した演技も健在。
そのほかの個性豊かな役者たち。これからどんなところで姿を見せてくれるのか、それも楽しみです。
■「わかれのうた」
圧巻は、最後にDJが歌う「わかれのうた」。
彼女の高音で細くたおやかに響く声が、聴いているこちらの胸に迫る。何かをとくに伝えるでもなく、しなやかにただ流れるだけの歌唱が胸に迫ります。
この歌に導かれた人々の人生や過去や現実が、心地よい記憶となって、ステージから客席に流れてきました。
ちなみに、この日のゲストは北村有起哉氏。
アドリブで客席を沸かせてくれました。
最後まで、解散の寂しさを感じさせない、なんだか見事な演出だったな。
本当のラスト公演はどうなるのでしょうか。
よかったら、コチラのインタビュー、読んでみてください。

まったく関係ありませんが、ココで、メナード「イルネージュ」のCMが見られます(スピッツ「シロクマ」)。
15分バージョンと30分バージョンあり。
2010年8月13日(金) at 紀伊国屋ホール
作・演出 マキノノゾミ
キャスト キムラ緑子/三上市朗/小市慢太郎/林英世ら、劇団員
劇団M.O.P.の最後の公演。最後も新作「さらば 八月のうた」。
この日は、仕事の打ち合わせや諸々の諸事情で、夜のこの公演に新宿まで行くのが難しい状況で、チケットを誰かに譲ろうかな、と当日の昼まで迷っていたのだ。
でも、最後だぞ、M.O.P.は最後だぞ、ここ何年もこの劇団の芝居を観る機会がなくて、それで最後なんだぞ、解散しちゃうだぞ、と心の中で誰かがグズグズ繰り返すもんだから、エイヤッと新宿・紀伊国屋ホールに駆けつけた・・・という経緯があるのだ。
だけど、本当に行ってよかった。行かなければ、それはそれで知らないわけだから、どうってことなく過ぎたかもしれないけど、でもそれは大きな大きな損失だったぞ。ああ、チケットを譲らなくてよかった・・・。ホントによかった。
■「悔い」
ココを読むと、マキノノゾミがなぜM.O.P.を解散するのか、M.O.P.が彼にとってどういう存在だったか・・・、わかるようでわからない気持ちになります。
わからないけれどわかる、そんな感じです。
でも、この集団がどんなふうに進んできたか、終わろうとしているのか・・・、なんだか「わかる」と言いたい気持ちになります。
それが、もう10年くらいM.O.P.を観なかった私の「悔い」であり、「悔い」であり、「悔い」なのです。ああ・・・。
■才能
DJ(キムラ緑子)がリスナーからの「ある歌」のついての疑問を受け取るところから始まります。
その歌にまつわる出来事が寒川丸(氷川丸のことだね)の甲板で、戦争中から現代までの間繰り広げられ、そのオムニバスのようなエピソードが終盤、見事につながっていく。すべて、その「わかれのうた」にまつわる出来事なのです。
戦時中、慰問船や病院船として使われた寒川丸でのエピソードには、マキノさんのおしつけがましくないメッセージが感じられるけれど、それ以外は、人の運命をおもしろおかしく、スピーディーに、でも結局胸に迫る上質な切なさに昇華させてくれます。
おかしくて笑ってしまって、でもそのあとでふっと立ち止まって胸を震わせる、そんな感じでしょうか。
その数々のエピソードのバックには、26年(M.O.P.の年月と同じ)続いた番組の打ち切りを前にした中年の女性DJの悲哀が描かれ、それもさりげなく胸に迫ってきます。
理屈じゃない「おもしろさ」と、よくできたストーリー展開は、マキノノゾミ氏の得意とするところなのだなあと、改めてその才能を感じます。
■いちばん好きな女優さん
もうキムラ緑子さんのすばらしさ、艶っぽさ、はなやかさ、憎らしいくらいのうまさ、えぐさ・・・。それが光って光っています。
DJ以外に、戦時中の漫才師(最後にDJの女性の祖母であったことがわかるのですが)の二役なのですが、こちらの奔放な役柄は彼女でなくては、と思います。
ここ何年も、私のいちばん好きな女優さんだったのだと、改めて気づいてしまいました。
この人が出る芝居はついついチケットを求めてしまうのですが(いつも満足させてもらっています)、やっぱりM.O.P.ではその魅力が200%くらい輝きます。
DJの相手役の小市慢太郎さん。この人の声と安定した演技も健在。
そのほかの個性豊かな役者たち。これからどんなところで姿を見せてくれるのか、それも楽しみです。
■「わかれのうた」
圧巻は、最後にDJが歌う「わかれのうた」。
彼女の高音で細くたおやかに響く声が、聴いているこちらの胸に迫る。何かをとくに伝えるでもなく、しなやかにただ流れるだけの歌唱が胸に迫ります。
この歌に導かれた人々の人生や過去や現実が、心地よい記憶となって、ステージから客席に流れてきました。
ちなみに、この日のゲストは北村有起哉氏。
アドリブで客席を沸かせてくれました。
最後まで、解散の寂しさを感じさせない、なんだか見事な演出だったな。
本当のラスト公演はどうなるのでしょうか。
よかったら、コチラのインタビュー、読んでみてください。



まったく関係ありませんが、ココで、メナード「イルネージュ」のCMが見られます(スピッツ「シロクマ」)。
15分バージョンと30分バージョンあり。