隠れ家-かけらの世界-

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負のエネルギーにあふれる映画「カポーティ」

2008年04月20日 19時56分14秒 | 映画レビュー
「カポーティ」(2005年、アメリカ)

監  督  ベネット・ミラー  
出  演  フィリップ・シーモア・ホフマン/キャサリン・キーナー/
クリス・クーパー/クリフトン・コリンズJr./
ブルース・グリーンウッド



 1959年、アメリカ・カンサス州の家族を襲った残忍な事件。
 トルーマン・カポーティはその事件に興味をもち、友人の作家ネルを伴って現地に取材に出かける。
 本の帯には「ノンフィクション小説の金字塔」と記されているが、この作品『冷血』を完成させるまでのカポーティの苦悩の日々を描いた映画。

 この早熟の天才作家と言われたカポーティのキャラクターがなんとも奇異。別に同性愛者だとか、そういうのは私には関係ないけど。
 優しいのか、ずるいのか、繊細なのか、図太いのか、純粋なのか、計算高いのか…。
 ニューヨークのセレブやインテリたちの集まるパーティでのこびへつらうようなカポーティの鼻持ちならない感じ。
 死刑判決をうけた殺人犯べりーへの取材で見せる真摯な態度、だけど執筆のためには彼にも偽りを言う俗人っぽさ。
 それでも彼は、べりーから犯行時の事実を聞き出すことに成功しながらも、死刑執行の延期、延期のために原稿の結末を書けない苦悩を味わう。
 そしてカポーティへの信頼の情を表すべりーの願いで死刑執行を見届ける。
 彼は『冷血』のあと、一遍の作品を完成させることもなく、アルコール依存症のためか、奇行を繰り返し、80年代に亡くなったという。
 『冷血』を完成させるために経験したことが彼を作家としては二度と立ち上がらせることはなかったということなのか。
 地味だけど、引き込まれるような暗い負のエネルギーを感じさせる映画だ。
 主人公カポーティを演じたフィリップ・シーモア・ホフマンの湿った引きずるような?セリフや佇まいが気持ち悪くて魅力的。この作家のしぶとさと弱さを納得させてくれる。

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