2024.07.05
ナイロン100℃ 結成30周年記念公演第二弾
『江戸時代の思い出』
at 下北沢 本多劇場
https://natalie.mu/stage/news/579109
作・演出 ケラリーノ・サンドロヴィッチ
出演 三宅弘城/みのすけ/犬山イヌコ/峯村リエ/大倉孝二/松永玲子
藤田秀世/猪俣三四郎/水野小論/眼 鏡太郎/伊与勢我無 木乃江祐希/喜安浩平
池田成志/坂井真紀/奥菜 恵/山西惇
久しぶりの下北駅前。
なんという熱気。コンクリートから攻撃を受けている感じ。
私の実家近くの青春時代の馴染みの街なのに、今では遠くなりにけりか?
「お笑いのライブ、1時間後に始まります! ワンコインでOKで~す」
元気な若手お笑い芸人さんたちの声が響く・・・、「がんばれ」と心の中で。
これも久しぶりのナンセンスコメディーに、客席を心地よく流れる穏やかな笑いに癒される。
開幕まで、お隣の男性はお連れさんに小劇場の演劇生き残り方策を熱く語っていて、業界の方?と思っていたが、芝居が始まって間もなく、武士道?武士之介(実は町人?)(三宅弘城)と参勤交代の行列に遅れてしまった桂川人良(大倉孝二)がすれ違うところで、すでに抑えきれないように爽やかな笑い声をあげていて、純粋なナイロン100℃フリークだったのかも。
『江戸時代の思い出』というタイトルからして、いろんなシチュエーションが思い浮かぶ。
江戸時代の暮らしを懐かしく振り返っている明治初期の庶民のお話とか、まさに江戸に暮らす人がそのまた過去を思い返すとか、はたまた江戸時代を擬人化して「彼か彼女」が語る江戸時代とか?(いやいや・・・)
芝居の流れをここで解説することが不可能だが、ただ武士之介が嫌がる人良に押し売りする思い出話は実は未来の話だったりするし、小学生の頃に埋めたタイムカプセルを掘り返す現代の五人組が最後に井戸?を覗いて「下にステキな?世界が広がっているよ」と次々に入っていくその先に江戸の街があるのかな?と思わせるところから(私が・・・ですが)、時代がループしていく浮遊感に気持ちよく揺られることができる。
第一話があっけなく終わると、芝居は客席に移り、芝居がつまらないからと帰ろうとする男女の観客を落ち武者の装束姿の武士が待ち伏せして遮るやりとり。こういうのも、結構好きだなあ。
かみ合わない会話と荒唐無稽な芝居の流れの中で、三宅弘城と大倉孝二、茶店の二人の姉(犬山イヌコと松永玲子)が見せる、それぞれのやりとりの絶妙の間や練られたセリフの味わいが、帰りの電車の中でもふっと思い出されて、ヘンな薬物でも飲まされたかのような。
時代考証などどこかにあったのか? そのあたりは不明だけど、ヘンに土臭い芝居が楽しかった。
お久しぶりの池田成志さんや山西惇さんの毒気にもやられ、満足な帰り道だった。
ここまで読んでも、どんな芝居だったのか、伝わらないだろうなあ。それは私には荷が重すぎます(笑)。
夕食時に一本ずつ録画を見て、わが家ではさっき『季節のない街』が無事に最終回を迎えた。満足な私と相方。
配信も何も知らなかったから、ようやく世の中の『季節のない街』ファンに追いついたかのようだ。
山本周五郎の原作も読んでいるし、映画『どですかでん』も見ているけど、これは私にはまったくの新作でオリジナル。
たぶんここ数年のドラマの中で「好きな5本」に入るかもしれない。
(ここでも、宮藤官九郎さん、お見事。『歌舞伎町野戦病院』じゃなかった『新宿野戦病院』も楽しんでいます)
池松壮亮、仲野太賀、渡辺大知(三人とも大好き)を中心とする役者たちが演じる、「”ナニ”で被災した人々が身を寄せる仮設住宅」に暮らす人々がみんな、うるさくてやっかいで、そして血を流して、生きている。そこがなによりいとおしい。
生きやすい毎日を求めて、自分で考えることをやめて、与えられたコンプライアンスを守ることに必死で、守らない人には冷淡で・・・。そういう日常にいつの間にか自分をはめこんでいることが息苦しく恥ずかしくなる映像だ。
登場人物の一人一人を長々とここで語りたくなるくらいに、心を突き動かされた。こんな年齢になっても、生き直したくなる作品に出会えるなんて、私も?捨てたもんじゃない。
毎日が変わるわけではないけれど、仮設住宅での最後の夜の大騒ぎで急に大笑いをして殻を破ったかつ子(三浦透子)がエンディングでカリスマ店員のようになっている姿に力をもらう。
しっかり者の親孝行次男タツヤ(仲野太賀)より、ダメな長男のほうにどうしても愛を注いでしまう母親(坂井真紀)の「あるある」を誰も責められないけれど、でもそのタツヤに家族なんてクソ食らえ!だよ、とマジで背中を押している自分に笑えたり。
近々、このドラマの推しと会う約束をしたので、大いに語り合ってくる。