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青樹句会

主宰:高橋信之(花冠名誉主宰)

◆第8回句会投句箱②◆

2012-03-03 08:30:05 | 日記
◆今日の秀句/高橋正子選◆
○2月26日
★水音の春の小川でありにけり/桑本栄太郎

○2月27日
山占めてビニールハウスが春光に/津本けい(正子添削)

○2月28日
★射線科の窓の囀り吾がものに/川名ますみ(正子添削)

○2月29日
★雨止んで白木蓮の芽のあまた/小西 宏
句意のよく通る句。雨が止んだばかりの空にぞくぞくと白木蓮の芽が見える。尖った花芽からはやがて鮮やか白木蓮が咲くだろうと、楽しみにする気持ちが読める。(高橋正子)

○3月1日
★店先の竹筒に挿し早桜/祝恵子

○3月2日
★枯れしものまず伏してから葦芽ぐむ/古田敬二


■投句箱■
第8回句会のご投句(3月4日(日)~3月10日(土)/1日3句以内)は、下の<コメント欄>にお書き込みください。句評など投句以外のことを書き込まないでください。投句以外の伝言などは、<伝言版>にお書きください。
※第8回句会の入賞発表は、3月11日(日)になります。

●伝言版
伝言、お問い合せなどがありましたら、下記アドレスの<伝言版>にお書き込みください。
http://blog.goo.ne.jp/kakan100

ご挨拶

2012-02-26 12:16:50 | 日記

正月から始めた「きがるに句会」も第7回を迎えました。おとといは、本当に春が来たような日差しが溢れて暖かでほっとしたものでした。今日は雨模様で少し寒さが戻っていますが、皆様の句に、弾んだ気持ちやしなやかな感性の句がたくさんあって、この冬の寒さともそろそろお別れかな、と思いました。ご投句と選、コメントをありがとうございました。特別招待選者の皆様、選とコメントをありがとうございました。次回は第8回です。ご投句をお待ちしています。これで第7回句会を終わります。(主宰 高橋正子)

第7回句会入賞発表

2012-02-22 15:41:04 | 日記
◆入賞発表/2012年2月26日◆

【最優秀/2句】
★たんぽぽの野に散らばれる低さかな/津本けい
「低さかな」は、言えそうでなかなか言えない。野に咲くたんぽぽは、まだ風も冷たいせいか、丈が低く野にへばりつくように咲いている。野に咲くたんぽぽの景色を平易な言葉でうまく表現した。(高橋正子)

★バケツありて男の汲める水温む/川名ますみ(信之添削)
男が汲んだバケツは、頼もしい男の腕でなみなみと汲んだ水がはいっているバケツ。この水を見ていると、やわらかで、光がまじり、「水温む」を実感させてくれる。あかるい心境が詠まれて、読み手にも明るさが与えられる。(高橋正子)

【高橋正子特選/5句】
★乙訓は風吹く丘ぞ菜花咲く/桑本栄太郎
乙訓は、長岡京があったところとして知られるが、丘に菜花が咲きやわらかな起伏を彩っている。風もやわらかに菜花をなでてゆく。「乙訓」がよく効いている。(高橋正子)

★カットする鏡に淡きチューリップ/祝恵子
髪をカットする様子が鏡に映っているが、その鏡に淡い色の、おそらく淡いピンクのチューリップが映っているのだろう。「淡い」と言ってチューリップの色や形を読者にゆだねたところに春らしさが出た。鏡の中に明るくやさしい春がある。(高橋正子)

★沖よりも甍の光り春めけり/多田有花(正子添削)
★陽をまとい子らブランコを宙に漕ぐ/小川和子
★遠汽笛空へ弾ませ風二月/藤田裕子

【高橋秀之特選/5句】
★春雪の光る遠嶺や県境/黒谷光子
冬と違い春の雪は陽の光を受けてきらきらとしています。湖国の県境の遠嶺の山々の雪も、明るい雪を感じさせてくれたのでしょう。(高橋秀之)

★余寒去り木々伸びやかに影を成す/多田有花
前日までの寒波が緩み、暖かな一日を待ちわびたかのように、寒さから解放された木々が一気に伸びやかになる。自然の息吹を感じさせてくれます。(高橋秀之)

★陽をまとい子らブランコを宙に漕ぐ/小川和子
春の暖かい陽射しが包む公園では、元気な子ども達がぶらんこを大きくこいでいる様子は、陽気に誘われた元気な子ども達の活気が伝わってきます。(高橋秀之)

★遠汽笛空へ弾ませ風二月/藤田裕子
遠くから響く汽笛が二月の風に乗って大空に広がっていきます。春浅き風は、きっと心地よい風だったことでしょう。(高橋秀之)

★たんぽぽの野に散らばれる低さかな/津本けい
野に咲くタンポポはまだまだ背が低く、早咲きだけなのか、点々と咲いています。春先の野原の様子をとてもうまく伝えてくれました。(高橋秀之)

【黒谷光子特選/5句】
★たんぽぽの野に散らばれる低さかな/津本けい
花も葉も土にくっつくように咲き始めたたんぽぽ、早春のたんぽぽの野の情景が浮かびます。低さかな が素敵です。(黒谷光子)

★野に山にしるき響きや雪解川/佃 康水
野や山に響く雪解川の響きは春の兆し、心地よい響きです。(黒谷光子)

★空に張る小さきものよ楓の芽/小西宏
小さきものよと呼びかける詠みに楓の芽の愛らしさ、美しさがいっそう引き立ちます。(黒谷光子)

★蕗の薹手のひらふっと野の香り/藤田洋子
蕗の薹の香りが移った手のひら、ほんのりと匂います。春の香りがうれしいです。(黒谷光子)

★麗らかやとんびゆるりと旋回す/井上治代
ゆっくりと旋回する鳶の大空は、春ならでは情景と思います。のびのびとした気持ちになりました。(黒谷光子)

【祝 恵子特選/5句】
★釣り船の影きらきらと春の海/多田有花
春の海に浮かぶ釣り船、ゆったりと揺れていて春の光が釣り船を覆っているようです。(祝 恵子)

★菜の花や遠くに牧の牛の群れ/古田敬二
牧場の風景でしょうか。タンポポが咲き、のどかさが伝わってきます。(祝 恵子)

★植替の土さらさらと春めきぬ/川名ますみ
春めいてお花の苗を植えられる準備でしょう。土もさらさらとして、嬉しい思いです。(祝 恵子)

★日暮れゆく松尾大社や春ともし/桑本栄太郎
見知った土地や神社が句に出ると嬉しくなります。松尾大社の大きな鳥居や春夕方の景色が浮かびます。(祝 恵子)

★梅二月開きて遠き地図の旅/藤田洋子
梅の咲く頃となり春めいてくればどこか遠くの旅に出たくなります。地図を広げて。(祝 恵子)

【迫田和代特選/5句】
★伐りて来し庭の白梅供花とせり/小口泰興
白梅は梅の中でも香りがいいのです。供えられ田方もさぞお喜びだったでしょう。お優しい句ですね。(迫田和代)

★たんぽぽの野に散らばれる低さかな/津本けい
早春のタンポポは大地を掴むように低く生えます。そして可愛い花です。それを素晴らしい句になさった詠み人の表現力に感動しております。(迫田和代)

★ただいまの声遠くまで春の宵/高橋秀之
お仕事に勢を出された後 奥様とお子様のお待ちになるお宅に帰られてつい大声でただいまとおっしゃったお気持ち 吹き出しました。温かいくですね。(迫田和代)

★春寒や米とぐ音のすきとおる/井上治代
音がすきとおるのは寒い日ですものね。お寒かったでしょう。(迫田和代)

★水温む男の汲みしバケツあり/川名ますみ
男の人がお汲みみなったのですもの。水温むといわれてるので皆が待っている春なんでしょう。豊かな句ですね。(迫田和代)

【藤田洋子特選/5句】
★空に張る小さきものよ楓の芽/小西 宏
早春、紅色のやわらかな新芽を吹く楓、小さいながらも空に張るいのちの息吹が、とても愛おしく新鮮に感じられます。(藤田洋子)

★残雪の田にきらきらと水流る/黒谷光子
残雪の田も、田に入る水の流れも、眩しいばかりに輝いて、早春の澄んだ清らな空気を感じさせてくれます。(藤田洋子)

★沖よりも甍の光り春めきぬ /多田有花
はるかに望む沖も美しく広がり、またさらに、甍の照り合う眩しさに明るい日差しを感じ、おのずと春めく気配が感じ取れます。(藤田洋子)

★青空へ伸びる一枝梅一輪/桑本栄太郎
青空のもと、一枝に咲く一輪の梅がことさら美しく気品高く、伸びやかな明るさに早春の喜びを感じます。(藤田洋子)

★菜の花や遠くに牧の牛の群れ/古田敬二
菜の花が咲き、遠望に群れる牛の群れ、明るく見えわたるのどかな情景に、あたたかく穏やかな気持ちになれます。(藤田洋子)

【佃 康水特選/5句】
★青空やちいほの蕾枝垂れ梅/小口泰與
寒さも去り青空が戻って来ると一気に梅の開花が期待されます。沢山の蕾を付けた枝垂れ梅がその時を待っています。「ちいほの蕾」と「枝垂れ梅」の措辞が新鮮です。(佃 康水)

★余寒去り木々伸びやかに影を成す/多田有花
やっと余寒が去った感が有ります。柔らかな日差しを受ける木々の影も伸びやかで、人の動きも軽やかになる様な気が致します。(佃 康水)

★たんぽぽの野に散らばれる低さかな/津本けい
たんぽぽは地に張り付いたかの様に葉を広げ濃い黄色の花がしっかりと低く咲いて居ます。次第に伸びるのでしょうが、今はしっかりと根づいたたんぽぽの強さを感じます。(佃 康水)

★梅東風の吹くよ旧知の友ませば/小川和子
懐かしいお友達とお逢いになったのでしょうか。ご一緒ならば春の風も心地よくさぞ楽しい一時に旧交を温められたことでしょう。(佃 康水)

★菜の花や遠くに牧の牛の群れ/古田敬二
菜の花の咲いて居る所から見える牛牧場、春の長閑な風景が目に浮かびます。広々とした草原と季節の花、その取り合わせにゆったりと心を和ませてくれます。(佃 康水)

【井上治代特選/5句】
★伐りて来し庭の白梅供花とせり/小口泰與
清らかな白梅を伐って仏様にお供えすると、ほのかな香りが広がり、先祖の方々も安らいだ気持になられたことと思います。(井上治代)

★残雪の田にきらきらと水流る/黒谷光子
きらきらと光りながら流れる水の音に、寒く長かった冬も終わり、自然界のものがいっせいに煌めき始める予感がします。(井上治代)

★陽をまとい子らぶらんこを宙に漕ぐ/小川和子
大空に向かって夢をいっぱいにのせてブランコを漕いでいる子ども達。幸せそのものです。こういった幸せが続けばよいと思います。(井上治代)

★春の雨水の輪やがて音生まる/藤田洋子
春の雨が一つ、二つと水の輪になり、やがて重なり合って、ポツリ、ポツリという音が生まれる。視覚と時間的経過をうまくとらえてつくられた俳句だと思います。(井上治代)

★植替の土さらさらと春めきぬ/川名ますみ
植替するために土に触れるとその感触はさらさらとしてあたたかく心地よいものでした。土も春めいているととらえた作者の感覚がすばらしいと思いました。(井上治代)

【小西 宏特選/5句】
★伐りて来し庭の白梅供花とせり/小口泰與
「伐りて来し」や「せり」の音がきっぱりと澄んで聞こえ、白梅を引き立てています。まだ春も浅いのでしょう。句全体に凛とした響きが感じられます。 (小西 宏)

★街の畑狭しといえど菜花咲く/河野啓一
住む街への愛情と春到来の喜びが静かに語られている、優しさ溢れる佳品と思います。 (小西 宏)

★釣り船の影きらきらと春の海/多田有花
ゆったりと漂う釣り船の間に間に春の海がきらきらと輝く。ゆるやかな句のリズムが長閑な春のうねりを届けてくれています。 (小西 宏)

★野に山にしるき響きや雪解川/佃 康水
春の野を歩いてみれば、雪解けの水の増えた川の響きが強く感じられるようになったのでしょう。生き生きとした春の情景が鮮明に詠われています。 (小西 宏)

★春寒や米研ぐ音のすきとおる/井上治代
「米研ぐ音のすきとおる」が春寒の肌触りを見事に表現しています。春の寒さが、あらためて好きになりそうです。 (小西 宏)

【古田敬二特選/5句】
★残雪の田にきらきらと水流る/黒谷光子
早春の田はまだ残雪に覆われている。が、よくみると春の日に溶けた雪が小さな流れを作り、きらめいている。春を迎える作者の喜びが、きらきらという言葉で表わされている。(古田敬二)

★春めきてバスの系統変えてみる/桑本栄太郎
あたたかな日和に誘われて吟行に出る。いつものルートを変えて違う場所へ出かけてみよう。日常のあっさりとした表現で春の来訪を喜ぶ気持ちが表されている。いい句に出会うことができるでという作者の確信を感ずる。(古田敬二)

★橋立の靄より現るる浅利舟/今村征一
小高い所から橋立の靄を見下ろしている。靄を破って小さな浅利船の影がゆっくりと現れる。モノトーンの絵を見るような感じがする。(古田敬二)

★春光や小走り滑る浜千鳥/小西 宏
春光にきらめく海面。岸辺をちょこちょこと歩く浜千鳥。中七の表現が浜千鳥の歩き方をうまく表現している。「ひねもすのたりのたりかな」の春の海である。(古田敬二)

★梅二月開きて遠き地図の旅/藤田洋子
今年は梅の開花が遅れているがようやくにして咲き始めた。どこか遠くへの旅を計画されているのあろう。「開きて」は梅の「開」花と旅に出る目的地の載っている地図を「開く」にかけているように読んだ。(古田敬二)

【入選/8句】
★しなやかに野の畔へ跳ぶ春の猫/古田敬二
冬はコタツで丸くなると歌われる猫も野で活動する春になりました。躍動的で猫が活き活きと感じられる句と感じます。 (高橋秀之)

★岸辺より始まる春の兆しかな/今村征一
水が温かくなり小魚が泳ぎ始め、草花も芽吹くようになって、岸辺は春の兆しが感じられるようになりました。(高橋秀之)

★蕗の薹揚げてふくらむ紙の上/藤田洋子
美味しそう。紙の上でふくらむ蕗の薹。思い出せばわくわくしてきます。春の味ですね。(迫田和代)

★水温む児らの歓声空の下/河野啓一
少し温かくなってくると、子どもたちは水に触れたがりますね。その子どもたちの様子をいきいきと詠われています。(多田有花)

★音のする雪解け水が春の野に/迫田和代
雪解けの音はやはり水音で象徴されます。雪がとけ氷がとけ水になって流れ下ってくる、それがうれしく耳に届きます。(多田有花)

★金盞花潮騒聞こゆ湯宿かな/古賀一弘
海辺の温泉宿に来られています。霜が降りない暖かいところでは、キンセンカは早春から咲きます。あの形と色がさらに暖かさを感じさせてくれます。(多田有花)

★映画館出れば眩しい春の空/足立弘
映画館でしばし物語の世界に旅をしておられました。その暗がりから出ると、外は春の青空でした。その明るさが新鮮です。(多田有花)

★温かき重き襁褓を替えうらら/小西 宏
赤ちゃんのおむつ、と解釈していいでしょうか。日々成長する赤ん坊の元気の印が「温かき重き襁褓」ですね。(多田有花)


第7回句会全作品

2012-02-22 15:39:52 | 日記
◆第7回句会全作品/現在20名(2月19日~25日)◆

No.1 小口泰與
焼栄螺灯しの早き我家かな
伐りて来し庭の白梅供花とせり
さえずりや野を分け利根の激しかり
ほろろ打つ雉や赤城の荒き風
あぜ道の空や雲雀の鳴き別れ
下校児や荒れ田の雉の翔け出でし
揚ひばり鍋割山に真昼の日
風に乗り湖心へ流る春の月
たんぽぽや風なき湖のささら波
裏木戸を出づや紅梅ふふみおり
虹鱒の夕日を加え遡上せり
ばらの芽の光放てり遠浅間
斜め降る雨の雲雀のこえ短
竹の節ゆったり越ゆる春の雨
田の雨にさそわれ出づる地虫かな
産土の山をつなぎて霞かな
灰色の空や雲雀の影もなし
青空やちいほの蕾枝垂れ梅
雨に染む山茱萸の花の鮮しや
枝々に雨粒ともししだれ梅
ばらの芽の風に対いてあえかなる

No.2 河野啓一
水温む児らの歓声空の下
水ぬるむ幼き頃を想い出し
窓越しの空広くして春浅し
パン屑に雀次々春の庭
春光や朝の冷気を通り来る
芽柳の色待つ賀茂の河原かな
茫漠と向こう岸まで水の春
新しきビルに日差しや春の色
この次は幾つひこばえ数え行く
蕗の薹蒼く小さき宝物
春霞遠くに走るモノレール
街の畑狭しといえど菜花咲く
雨を得て芽吹きの気配丘の上
春の夢覚めし夜来の雨音に
春の水滴り落ちて箕面山
レース越し朝の光と八重椿
蒼い海白き梅林見上げおり
雨を得て目覚め行くかな春の森
白梅の咲いて花みな空に透け
紅梅のつぼみ海辺に青空に
苗木植うブルーベリーは青紫色

No.3 黒谷光子
淡雪の京の路地裏通り抜け
芽柳や神宮の朱の大鳥居
春ぬくし能楽堂へ連れ立ちて
残雪の田にきらきらと水流る
春雪の光る遠嶺や県境
残雪の遠嶺も近き日当たれば
有職雛紙雛駅の飾り窓
靴跡のなき残雪の畑道
残雪に菜っ葉列なし頭出し
朝靄に隠れ給いし辻地蔵
ゆるゆると群れて長閑や川の鯉
穏やかに明けしが二月の風すさぶ
色あふる春の店先供花を選る
供花切るに踏む残雪の嵩わずか
一木の南に廻り紅椿

No.4 多田有花
釣り船の影きらきらと春の海
大橋を望む汀の春の雪
風花や暮れし浪花のビルの間に
余寒去り木々伸びやかに影を成す
陽炎のかなたに甍連なりぬ
薄氷の池なかばまで残りおり
梅林の季節始まる未開紅
二月早や閉店セールの園芸店
沖よりも甍の光り春めきぬ
昼の陽の薄きに紅梅の開く
さみどりの梅の蕾の膨らみぬ
静かなることこそよけれ梅林は
紅梅の開く雨滴を留めおき
雨あがる春の山路に人と会う
春の夕途切れ途切れのハーモニカ
せせらぎの音を近くに梅開く
陽を溜めし頂にあり春の風
うすうすとむらさきだちて春の山
雨日ごと梅の開花を促して
春雨や図書館で選ぶ本五冊
半地下より上りて春陰の中へ

No.5 桑本栄太郎
歩みゆく春の路地裏先斗町
春水の木屋町流る高瀬川
托鉢の僧の独りや春北風
つかの間の日差し明るく春北風
青空へ伸びる一枝梅一輪
北国は未だ時化おり多喜二の忌
ほどけゆく飛行機雲の春の雲
その中のいつぽんのみや梅ひらく
梅林の遅速際立ち梅二月
春めきてバスの系統変えてみる
手をつなぎ園児散歩の丘の梅
転々と空へ辿りて梅ひらく
上桂駅のホームの桜芽木
日暮れゆく松尾大社や春ともし
春雨の本降り来たる嵐山
うすうすとさみどり揺るゝ柳の芽
乙訓は風吹く丘ぞ菜花咲く
太古より目覚むナデシコ春の夢
耕さる土の乾きや風光る
風音の耳に途切れし揚ひばり
採り跡の千々の乱れや春の畑

No.6 小川和子
テ-ブルに桃色淡きサイネリア
長閑けしやマザ-テレサの映画観る
カ-テンを開けて春日の居間に入る
陽をまとい子らブランコを宙に漕ぐ
春空に放課後の子らの声響く
よく鋤かれ真っすぐ均されし畑
梅東風の吹くよ旧知の友ませば
会果てて友等と啜る鰊そば
鉄橋を隔て蛇行す春の川
掃き浄まる中院しんと春日さす
箒目の筋美しく沈丁花
高き枝に無垢に開けりしだれ梅
喜多院の水屋春水溢れさす
柄杓もて冷水汲める長閑けさに
水音の微かに喜々と百千鳥

No.7 藤田裕子
春雪の結晶ふわり又ふわり
眼前にあるは春雪の静けさよ
陽当たりて木々を離るる春の雪
日暮るれば垣のどこからか恋の猫
遠汽笛空へ弾ませ風二月
芽吹くもの全てに雨の潤いを

No.8 津本けい
たんぽぽの野に散らばれる低さかな
誰も居ぬ梅畑つがいの目白くる
白梅の花びらに淡く蕊の翳
いぬふぐり閉じて尖りてなお真青
しらじらと曇天の野に梅ひらく
下萌をふわりと行けば気も軽く
学校囲みぶきぶき育つ春キャベツ
弁当に日あたり花菜和え淡し
さみどりを零して友とうぐいす餅
踏切の鳴って橙の春夕焼
空晴れて梢芽吹ける河畔林
座布団干すそば屋を廻り草青む
クレヨンより柔き色降り木の芽雨
笹鳴のあたりに寄れば木々しんと
張子雛に日の当たりきて洋食屋
クレヨンより柔き色降り木の芽雨
笹鳴のあたりに寄れば木々しんと
張子雛に日の当たりきて洋食屋

No.9 今村征一
暖かし黒松続く芦屋川
二ン月の伎芸天女のやうな空
行間に見え隠れする浅き春
河口見るより芦屋川涸れ尽くす
一日がとつても長く梅の花
清冽な記憶蘇州の春銀河
岸辺より始まる春の兆しかな
靄を引く大琵琶晴れて春動く
一輪の梅に集まる瞳かな
橋立の靄より現るる浅利舟
堅香子の花むらさきに黄昏るる
遠くまで来過ぎし遊歩あたたかし
花街の灯りほのかに芽吹く川岸
日脚伸ぶ岬の先にまた岬
午後四時を告ぐ料峭の時計台
古希にして恋に似しもの梅二月

No.10 高橋秀之
ただいまの声遠くまで春の宵
親と子の銭湯通い春の宵
大空に白くぼんやり春の月
半身に春泥いっぱい子供服
雨上がり周回道路に梅の花
春の雨空高く飛ぶ鳥の群れ

No.11 古田敬二
しなやかに野の畔へ跳ぶ春の猫
早春や園児へ挨拶何回も
春浅しオリオン星座はやや西へ
笹の根の地中に深く切れる音
取り除く笹の根地中に切れる音
雑草は雑草として春の色
オリオン座春の寒さを降らし来る
群れ離れ一つ咲くありいぬふぐり
菜の花や遠くに牧の牛の群れ
煌めきへもぐる鳥あり春の池
雨あがる芽吹く大樹の賑わしく
雪柳ポツリポツリの白さかな
剪定の切り口白し梅林
耳に風優しき日なり梅開花
春来ればこずえの揺れも柔らかし

No.12 迫田和代
奥の雪溶かして運ぶ蒼い川
雑談も楽しいホームに春の風
朝日うけキラキラ光る瀬戸の春
春の陽を浴びて木々の芽動き出す
音のする雪解け水が春の野に
静まった茶室の床に梅三つ

No.13 古賀一弘
鎌倉や虚子の墓守つくしんぼ
金盞花潮騒聞こゆ湯宿かな
カルピスや二人のストロー風光る

No.14 足立弘
美術館蠟梅の香も訪れぬ
映画館出れば眩しい春の空
雪国の一両電車走り去る

No.15 佃 康水
小さく群れ中洲に歩む春の鴨 
訪う丘の空へ紅梅濃くなりぬ
野に山にしるき響きや雪解川

No.16 小西 宏
温かき重き襁褓を替えうらら
大仏の頬に傷あり春の風
黄梅の風の明るき池の水
早春のなお凛として枝の張り
春光や小走り滑る浜千鳥
剪定の切口丸く青空にるき池の水
空に張る小さきものよ楓の芽
少しずつ地球動ける余寒かな
雨降って柑橘映える暖かさ
猫ねむり梅が一輪咲きました
廃れ田に移り泥食う春の鴨
下萌えを嗅いで根を掘る小犬かな

No.17 藤田洋子
春の雨水の輪やがて音生まる
堰あふる川は二月の雨の音
幾筋も畝盛り上がり春の雨
蕗の薹手のひらふっと野の香り
蕗の薹揚げてふくらむ紙の上
梅二月開きて遠き地図の旅

No.18 井上治代
春寒や米研ぐ音のすきとおる
麗らかやとんびゆるりと旋回す
如月の光舞い降り草萌ゆる

No.19 川名ますみ
浅き春パキラの鉢を大きくす
植替の土さらさらと春めきぬ
水温む男の汲みしバケツあり
伯父の持つ春水いつぱいのバケツ
撒かれたる水のひかりにある温み
撒かれゆく水ひかりあり温みあり

No.20 祝恵子
明かり取り明かりもれきて梅ふふむ
紅白と障子に影を盆梅展
幹太く古木となりて梅二月
カットする鏡に淡きチューリップ
木の芽雨狸の陶の下げし酒
振れば鳴る鈴縄揺れて春の日を


※選者の選は、下記の要領でお願いします。
①上記全作品からお選びください。
②特選5句をお選びください。5句すべてにコメントを付けてください。
③選句期間は、2月25日(土)午後9時~26日(日)正午です。
④選句は、下の<コメント欄>にお書き込みください。選者名もお忘れなきよう、お願いします。

※選句は、多少の遅れがあっても、許されますが、その場合は、ご一報ください。

▼選者の選は、2月25日(土)午後9時に始めてください。

◆第7回句会投句箱◆

2012-02-20 10:27:24 | 日記
◆今日の秀句/高橋正子選◆
○2月19日
★伐りて来し庭の白梅供花とせり/小口泰與

○2月20日
★たんぽぽの野に散らばれる低さかな/津本けい
「低さかな」は、言えそうでなかなか言えない。野に咲くたんぽぽは、まだ風も冷たいせいか、丈が低く野にへばりつくように咲いている。野に咲くたんぽぽの景色を平易な言葉でうまく表現した。(高橋正子)

○2月21日
★沖よりも甍の光り春めけり/多田有花(正子添削)

○2月22日
★野に山にしるき響きや雪解川/佃 康水

○2月23日
★水温む男の汲みしバケツあり/川名ますみ
男が汲んだバケツは、頼もしい男の腕でなみなみと汲んだ水がはいっているバケツ。この水を見ていると、やわらかで、光がまじり、「水温む」を実感させてくれる。あかるい心境が詠まれて、読み手にも明るさが与えられる。(高橋正子)

○2月24日
★乙訓は風吹く丘ぞ菜花咲く/桑本栄太郎
乙訓は、長岡京があったところとして知られるが、丘に菜花が咲きやわらかな起伏を彩っている。風もやわらかに菜花をなでてゆく。「乙訓」がよく効いている。(高橋正子)

○2月25日
★音のする雪解け水が春の野に/迫田和代


◆第7回句会の投句(2月19日~2月25日)は締め切りました。


●伝言版
伝言、お問い合せなどがありましたら、下記アドレスの<伝言版>にお書き込みください。
http://blog.goo.ne.jp/kakan100

ご挨拶

2012-02-19 13:52:15 | 日記

第6回きがるに句会にご参加いただき、ありがとうございます。入賞の皆さまおめでとうございます。特別招待選者の皆さまには、選とコメントをありがとうございました。インフルエンザが猛威をふるっていると今朝の新聞報道にありました。お気をつけください。梅が開くのを待っておりますが、まだちらほらですので、今年はよほど寒いのでしょう。これで、第6回きがるに句会を終わります。次回を楽しみに、ご健吟ください。(主宰/高橋正子)

第6回句会入賞発表

2012-02-17 19:03:56 | 日記

◆入賞発表/2012年2月19日(日)◆
(2月12日~18日/18名)

【最優秀/2句】
★春植えの畝の支度や鍬光る/古田敬二
春に植えるものには、じゃがいもなどがあるが、その畝の支度に余念がない。振り上げる鍬も早春の光に光るという耕しの楽しさがある。(高橋正子)

★蝋梅の向こう甍とひかる海/小西 宏
蝋梅越しに、甍と光る海が見える景色。海辺の景色だが、甍があることによって句が絵画的になった。(高橋正子)

【高橋正子特選/5句】
★雪解水ころがりながら岩陰を/河野啓一
雪解水が「ころがる」というのは、的を得た表現。岩陰をころころと流れる雪解水に春の楚々とした足音が聞こえる。(高橋正子)

★牛鳴いてサイロの丘に草萌ゆる/佃 康水
サイロのある丘に草が萌え、牛の鳴き声ものどかに聞こえる。あかるい風景がのびやかに詠まれている。(高橋正子)

★立春の光まといし庭の木々/足立弘
すっきりとまとめられた句。庭の木々にくまなく立春の光があたって、暦の上だけでなく、実際に、「春は光から」を実感させてくれる。(高橋正子)

★春霞途切れることなく汽笛鳴る/高橋秀之
衝突防止のためでしょうか。ぼんやりと霞に閉ざされた大阪湾に細く長く鳴り交わす船の汽笛はやわらかく、春到来の景色を静かに伝えてくれています。(小西 宏)

★風花の吹き込んでゆく木々の中 /津本けい
晴天の中に舞う雪が木々の中へ吹き込んでゆく様子は、自然の勢いを感じます。(高橋秀之)

【多田有花特選/5句】
★奏でつつ小さき堰越す春の水/黒谷光子
春は雪解けの季節、雪国の方にとってはそれを告げる瀬音は快いものでしょう。「奏でつつ」からそのお気持ちが伝わってきます。(多田有花)

★風花の吹き込んでゆく木々の中/津本けい
春とはいえ寒い日が続きます。芽吹きを待つ木々の列に差し込む日の光と雪片と、春浅い時期ならではの美しい情景です。(多田有花)

★春植えの畝の支度や鍬光る/古田敬二
暖かくなってくると春の農作業が増えていくことでしょう。それらの段取りを整えて畑に向かわれます。鍬が返す日の光も随分強くなりました。(多田有花)

★梅が枝の万蕾滴る雨しずく/佃 康水
間もなく咲く梅、すべての蕾がまるく膨らんでいます。それらを濡らして春の雨が降ります。春の息吹を感じます。(多田有花)

★濠に沿う道はここより梅開く/藤田洋子
ここから道がお濠端となり、梅が植えられているのでしょう。それらの梅のつぼみはいっぱいに膨らんでぽつぽつと開き始めています。早春のやさしい景色です。(多田有花)

【高橋秀之特選/5句】
★芽ぶき待つ大樹の樹形揺るぎなし/古田敬二
春めいてきて冬を乗り越えた木々が芽吹きを待つ時期となりました。樹形揺るぎなしが木々の力強さを伝えてくれます。(高橋秀之)

★岸壁の波のふくらみ春の潮/桑本栄太郎
冬と違い春になると波も穏やかになってきます。正に潮が満ちてくるとふくらむような柔らかさで岸壁に寄せてくるものです。(高橋秀之)

★道端に咲ける菫よ空の青/迫田和代
道端に咲く菫の彩りと空の青さの対比が、作者の感じた春めく自然の活き活きとした感覚をうかがわせてくれます。(高橋秀之)

★児ら帰り余寒の部屋の青畳/藤田裕子
一人でいるときは余寒で寒い部屋も、こどもたち帰って賑やかになってくると暖かく感じるから不思議です。青畳が春の初めの季節感をさらに引き立ててくれています。(高橋秀之)

★探梅や子らの下校のランドセル/祝恵子
梅を探して歩いていると下校時の小学生が歩いているのが目に入りました。梅の木々も小学生のこどもたちも春めいてきて元気になってきました。(高橋秀之)

【小西 宏特選/5句】
★残雪の村に神事の触れ太鼓/黒谷光子
「おこないさん」という五穀豊穣を祈る伝統行事なのだそうですね。残雪の村を触れ太鼓が巡り歩くという、色も見え、音も聞こえてくるような、動きのある俳句です。(小西 宏)

★若駒のすでに山風なじみおり/小口泰與
この春生まれた若駒も厩を出て野に遊び、あたりの風景、気候に馴染んできたという。うきうきする春の光景です。(小西 宏)

★鴨同じ姿で揺られ春の波/多田有花
ただ黙って、鴨がゆるやかな波に揺られているという。「同じ姿で」と詠われたところに春らしい長閑な光景がよく伝わってきます。(小西 宏)

★あの影はどの雲のもの春の畑/津本けい
春の畑をゆっくりと雲の影が動いていきます。「あの影はどの雲のもの?」と問い掛けているところが可笑しく、春らしい長閑な気分が漂ってきます。(小西 宏)

★雪解水ころがりながら岩陰を/河野啓一
「ころがりながら」が愛らしいですね。水音の軽さも耀きもほんとうにそんな勢いです。春の喜びに満ちた俳句に心も軽くなります。(小西 宏)

【黒谷光子特選/5句】
★鴨同じ姿で揺らぎ春の波/多田有花
 それぞれ違うのかも知れませんが、見ているかぎりでは全く同じ姿で揺れている鴨の群、春の水辺のおだやかな光景に心がなごみます。 (黒谷光子)

★うららかや大仏青き晶子の碑/小西宏
おだやかな春の日にゆったりとお座りの鎌倉の大仏様と晶子の歌碑、露座の大仏様も春のうららかな日を喜んでおられることでしょう。 (黒谷光子)

★ぽつぽつと春のしぐれや先斗町/桑野栄太郎
春のしぐれが先斗町の雰囲気とがとてもよく合っていて、あの辺りの情景が浮かびます。 (黒谷光子)

★児ら帰り余寒の部屋の青畳/藤田裕子
賑やかだった部屋も子供たちが帰ってしまうと、青畳だけが目立ち、春の寒さが身に沁みます。 (黒谷光子)

★如月のきらめきに干す濯ぎ物/小川和子
まだ日も短く晴れの日が少ない二月、日のきらめきに濯ぎものが干せるのは嬉しいことですね。「きさらぎのきらめき」に惹かれました。 (黒谷光子)

【祝 恵子特選/5句】
★奏でつつ小さき堰越す春の水/黒谷光子
小川の流れの小さな堰きの水音が、それが奏でているとのこと、春を感じる詠者がいます。(祝恵子)

★白梅や青年僧の白き首/小口泰與
お寺の境内でしょうか。白梅と若き僧の取り合わせが新鮮です。(祝恵子)

★蝋梅の向こう甍とひかる海/小西 宏
蝋梅の先は突き出た甍と光る海、広がりを感じます。(祝恵子)

★児ら帰り余寒の部屋の青畳/藤田裕子
お孫さんでしょうね、居なくなった部屋は賑やかだった青畳が寒く、また寂しさが残ります。(祝恵子)

★濠に沿う道はここより梅開く/藤田洋子
濠端より梅園にに行く途中、ここより梅の花開くときっぱりと梅園に入ったことを知らせています。(祝恵子)

【迫田和代特選/5句】
★白梅や青年僧の白き首/小口泰興
白梅と青年と白い首 で早春の爽やかさに溢れた句だと思います。(迫田和代)

★残雪の村に神事の触れ太鼓/黒谷光子
まだ雪が残っている村に 昔からある神事の触れ太鼓の音を聞いて しっかり春の訪れをお知りになるでしょう。心に沁みる日本の神事ですね。(迫田和代)

★あの影はどの雲のもの春の畑/津本けい
いくつも雲が流れていたのでしょう。畑の影はどの雲のものだろうとお考えになられた作者にのびやかさを感じました。春ですね。(迫田和代)

★牛鳴いてサイロの丘に草萌える/佃 康水
牛の鳴き声ってのんびりして何となく春らしさのあるものを感じます。それにサイロの丘に草萌えるでしょう。春らしい牧歌ですね。(迫田和代)

★濠に沿う道はここより梅開く/藤田洋子
濠の色と梅の色のバランスがいいのと考えられる品のあるくですね。(迫田和代)

【藤田洋子特選/5句】
★一畝は白く豌豆の花そよぐ/津本けい
残る寒さの中、豌豆の花咲く一畝の際立つ白さです。素朴で可憐な豌豆の花に風も優しく、早くも明るい春のうららかさを感じます。 (藤田洋子)

★瀬音聞く陶の工房春浅し/今村征一
流れるせせらぎの水音も清らに、陶土の冷ややかな感触を思い、浅春の陶の工房がとりわけ新鮮に感じられました。 (藤田洋子)

★残雪の村に神事の触れ太鼓/黒谷光子
まだ雪が残っている村に 昔からある神事の触れ太鼓の音を聞いて しっかり春の訪れをお知りになるでしょう。心に沁みる日本の神事ですね。(迫田和代)

★芽ぶき待つ大樹の樹形揺るぎなし/古田敬二
春めいてきて冬を乗り越えた木々が芽吹きを待つ時期となりました。樹形揺るぎなしが木々の力強さを伝えてくれます。(高橋秀之)

★雨上がり花色かすか梅花芽/藤田裕子
恵みの雨を受けて梅の花芽が少し膨らみ、ほんのりとした花の色に気づきます。暖かな春を待ちわびていた作者の心情が伺えます。(井上治代)

【佃 康水特選/5句】
★入相の声残雪の野を渡る/黒谷光子
入相の声とは夕暮れの鐘、つまり晩鐘でしょうか。残雪の野を響き渡って行く 雪国らしい詩情を感じます。と同時に春はもう直ぐの気持もお有りなのでしょう。(佃 康水)

★筆塚や膨らむ梅の初初いし/祝恵子
使い終わった筆、そして筆の毛を提供した動物たちへの供養のための筆塚。そのそびらに今、初初しい梅の蕾が膨らんで居る、そんな温かい光景を思い浮かべました。(佃 康水)

★枝ごとの梅の蕾の中通る/藤田洋子
今年の梅の開花が遅いと庭師さんが話されて居ましたが、確かに蕾が多いです。
そんな梅林の中を明日は開くかしらとかまだまだ硬いなとか思いつつ枝ごとの蕾を観察しながら歩むのも楽しいですね。(佃 康水)

★道端に咲ける菫よ空の青/迫田和代
道端を歩いて居て菫を見つけるとふとその可愛さに立ち止まってしまいます。浅春の晴れた空に菫の色も清々しく輝いて見えた事でしょう。(佃 康水)

★岸壁の波のふくらみ春の潮/桑本栄太郎
春の海は穏やかで光りに満ち溢れ、岸壁に寄せて来る波も柔らかく恰も膨らんでいる様にも見えて長閑さを感じます。(佃 康水)

【井上治代特選/5句】
★ここまでと決め探梅の歩を戻す/今村征一
いつまで見ていても飽きない梅の花。「今日はここまで」と決めた決心の裏に、もう少し見たかったという気持ちもあるように思います。(井上治代)

★ものの芽を包み音なく雨が降る/津本けい
一雨毎に木々の芽は膨らんでいきます。静かな中にも命のあたたかさを感じる句だと思います。(井上治代)

★春植えの畝の支度や鍬光る/古田敬二
春植えの野菜のために畝をつくり、整える。下五の「鍬光る」という表現で「おいしい野菜をつくろう」という作者の意気込みが伝わってきました。(井上治代)

★雨上がり花色かすか梅花芽/藤田裕子
恵みの雨を受けて梅の花芽が少し膨らみ、ほんのりとした花の色に気づきます。暖かな春を待ちわびていた作者の心情が伺えます。(井上治代)

★野辺の道ふと見つけたるすみれ草/河野啓一
野辺の道でふと見つけたすみれ草の床しさ、美しさ。一つの小さな花がこんなにも自分の心をみたしてくれるという作者の感動が素直な一句から伝わってきます。(井上治代)

【入選/9句】
★残雪の田を分けている黒き畦/黒谷光子
よく見かける春先の景がさらりと詠まれているとおもいました。雪解け水を含んで畔道が黒々と区画を分けているのでしょうね。
(河野啓一)

★呼び合える春禽の声晴れし空 /藤田裕子
寒さの残る大気の中で互いに呼びかわしている鳥の声はほんとに気持よく耳に響きます。(河野啓一)

★春立ちて黄色き花の増えゆけり/井上治代
野では蒲公英、庭ではフリージャ、黄水仙と明るく黄色い色が増えてきましたね。嬉しい季節がやってきました。(河野啓一)

★野に立ちて足元に咲く犬ふぐり/迫田和代
春まだ浅い頃、足元に見つけた犬ふぐりはことに嬉しいものですね。野に立つ作者の心明るさがおのずと伝わります。(藤田洋子)

★咲きそうな梅の莟と夕暮れに/川名ますみ
明日にはもう咲きそうな梅の莟のふくらみでしょうか。ほのかに花色を見せる梅の莟に、ほっと心明るくあたたまる夕暮れの一時です。(藤田洋子)

★ものの芽の淡く見ゆるは雨催い/桑本栄太郎
ものの芽が見えるようになってきたところが、まだまだ淡く見えるのは、雨が降ってきたからなのでしょう。これからは一雨ごとに成長してはっきりと見えるようになってくることでしょう。(高橋秀之)

★二度三度公魚跳ねて凍りけり/古賀一弘
公魚の穴釣りでしょうか。味の旬は仲春とのことですが、氷の上での釣りはまだまだ寒そうですね。二度三度跳ねて、そのまま凍ってしまうとは、ずいぶん厳しい魚釣りです。(小西 宏)

★山風に抗して鳴けよ揚雲雀/小口泰與
力強い山風、赤城颪であろうか、を受けて鳴きつつ高揚がる雲雀への賛歌。(高橋正子)

★筆塚や膨らむ梅の初初し/祝恵子
筆塚は、学問の神様の天神様の境内にでもあるのだろう。膨らんできた梅の初々しさ。これからの開花がいっそう楽しみ。(高橋正子)

第6回句会全作品

2012-02-17 18:45:17 | 日記

◆第6回句会全作品/現在18名(2月12日~18日)◆

No.1 小口泰與
山風に抗して鳴けよ揚雲雀
蕗味噌を塗りし魚の焼かれけり
青ぬたや白馬の里の星の数
さえずりや牛小屋ありて牛の群
根分けして水と日輪力かな
白梅や青年僧の白き首
雨粒をのせて紅梅開き初む
嬬恋の空は山ある椿かな
店かどに置きけり風の風車
眼間の鍋割山も雪解なり
朝日受けばらの新芽のあえかなり
水草生う奥利根は山を集めおり
若駒のすでに山風なじみおり
早春の水田の上の朝日かな
田の隅に生まれし里や蝌蚪の里
おのずから膨るる木々や春の鳥
紅梅の雨に厨の窓を開け
おぼえある沼も狭きや春の夢

No.2 今村征一
庭に来る猫の声にも春きざす
佐保姫の吐息空より大地より
ここまでと決め探梅の歩を戻す
朝東風や歩めば真砂鳴く浜辺
なによりも霞み瞬く島の灯に
瀬音聞く陶の工房春浅し
授かりし呱々の声待つ遅日かな
午後四時を告ぐ待春の時計台
日本に花鳥諷詠梅二月
雲水の絵解きレツスン涅槃西風
かく降れば春の雪とはもう言へず
鶯餅抓み推敲一句かな
春月と綺羅なす星とそよ風と
魁て咲くかに梅の梢に雪
手を伸ばす欅に揺らぐ春の月

No.3 黒谷光子
登校の黄色い合羽春の雪
残雪の田を分けている黒き畦
読めぬ字の画数多き春灯下
北側の棟はどの家も雪残す
厨窓明るき午後の春の雨
奏でつつ小さき堰越す春の水
残雪の嵩の高きを啄める
浅春の鯉は流れに逆らわず
入相の声残雪の野を渡る
残雪の宮に神事の幟旗
残雪の村に神事の触れ太鼓
残雪の畑の畝の影薄し

No.4 多田有花
牡蠣殻を吐き出すコンベア春浅し
春の雨降り出す中を歩きけり
瀬戸内の島々連ね春動く
うつつとも夢とも春の眠りかな
やみそうでやまぬ一日春の雨
春泥に轍残して消防車
梅に降る雨も三日となりにけり
風の音聞いているかな春炬燵
旅の絵を描いておりぬ春灯下
鴨同じ姿で揺られ春の波
目を凝らす囀りのするその方へ
薄氷を揺らし昼の陽揺らしけり
春泥の留めし人の行き交うを
北からの車は春の雪を積む
木々の枝うすむらさきの余寒かな

No.5 津本けい
春浅き淵より鯉のひるがえる
一畝は白く豌豆の花そよぐ
あの影はどの雲のもの春の畑
ものの芽を包み音なく雨が降る
枝ごとに光る雫と芽吹きかな
春雨に松葉一本づつの露
畑ゆけばなづなのヴェールに鳥の声
枇杷の花ところどころの小さき実
春の雨止む匂い連れ「花冠」くる
風花の斜めやふいに鳥の声
風花や山並の空晴れわたり
風花の吹き込んでゆく木々の中

No.6 古田敬二
満開もつぼみもありていぬふぐり
地の風を受けて揺れ咲くいぬふぐり
見つめれば小さく揺れていぬふぐり
春野菜伸びる勢い今日もまた
窓春光うまく和音すC-dur(ハ長調)
春耕すその一隅の鮮やかに
野におれば耳吹く風も春気配
春植えの畝の支度や鍬光る
緊張の拳の親子大試験
春浅しひそひそと鳴る竹の音
竹林を行けば料峭という言葉
どの木々も樹形正して芽ぶき待つ
満員で春の森行く乳母車
残雪の伊吹に明るき陽の当たる
芽ぶき待つ大樹の樹形揺るぎなし
ひそやかに赤き芽揃ううばらの枝
残雪に陽の当たるらし伊吹山
白梅の万朶の蕾寺の庭

No.7 小西 宏
陽春の海はしり行く電車窓
うららかや大仏青き晶子の碑
大仏の庭に明るき福寿草
蝋梅の向こう甍とひかる海
青竹の樋より溢る春の水
うららかやガラス細工のオルゴール
春浅き枝に小鳥の声透る
泳ぐさえ丸々重し春の鴨
早春の木々の傾れに日の残る
犬枇杷の実に空のあり浅き春
東屋の屋根に鷺立つ春の雨
雨止んで小鳥の枝の春めけり
観音の庭の蝋梅海を背に
幹廻りコゲラ忙しく身を埋む
春の雪といえども辛き北の国

No.8 桑本栄太郎
ぽつぽつと春のしぐれや先斗町
春浅き顔の行き交う四条かな
日当れば雲の影おき山笑ふ
ものの芽の淡く見ゆるは雨催い
春雨の枝のむらさき更に濃し
春星の雨のあがりて二つ三つ
明けやらぬ朝靄深く春ともし
下萌や脊はばに余るランドセル
春寒くストレステストの吾にこそ
春潮の朝日を返し煌めける
岸壁の波のふくらみ春の潮
曳舟の水脈広げ行く春の海
頑なに季(とき)を待ち居り桜芽木
大阪府三島郡とや菜花咲く
白きものの混じり風吹く余寒かな
春雪のしづる朝日の並木かな
降り止めば歩道真中や雪まろげ
哀しみの名残の雪の夕日」かな

No.9 足立弘
福よ来い鬼にめがけて豆をまく
立春の光まといし庭の木々
春立ちて石灯籠に陽の当たる

No.10 迫田和代
野に立ちて足元に咲く犬ふぐり
春風の吹く瀬戸内やゆっくりと
車椅子散歩しながら草を摘む
土手にある土筆求めて人だかり
道端に咲ける菫よ空の青
美しき人にも似たか詫助よ

No.11 藤田裕子
伸びやかなスケーターの舞い春浅し
児ら帰り余寒の部屋の青畳
呼び合える春禽の声晴れし空
やわらかき二月の風と真向かえり
雨上がり花色かすか梅花芽
雲厚く草木も花も冴返る

No.12 佃 康水
薬草茶口に甘しや春の風邪
梅が枝の万蕾滴る雨しずく
春耕の農婦や頬を紅く染め
醤油蔵老舗の土間や冴え返る
夕東風やそろそろ牛の乳搾り 
牛鳴いてサイロの丘に草萌ゆる

No.13 河野啓一
野辺の道ふと見つけたるすみれ草
雪解水ころがりながら岩陰を
春浅く雨催いして並木道
枯れ木立無言の列や冴え返る
春浅き午後ボランティア中学生
阿波の国豪華百段雛飾り
うすあかね枝先霞む丘の木々
水紋は池の際まで春の鴨
大和川注ぎて朧茅渟の海
八重椿乙女椿と並びおり
春光のようやく広く空に満ち
人の世の坂上るかな日脚伸ぶ
うす雪の積もりて街の春浅し
春の雪淡々積り鳥遊ぶ
春椎茸炭火焼して口に入れ

No.14 川名ますみ
早春の陽に藤棚の小さき葉
ベランダの鉢へ坐りて探梅す
咲きそうな梅の莟と夕暮れに
春浅し貝殻骨をくいと寄す
枝垂梅大き莟を空へ振る
たつぷりと莟の揺るる枝垂梅

No.15 高橋秀之
春霞途切れることなく汽笛鳴る
折り畳み傘が重なる春の雨
頬に吹く目覚めの朝風春浅し
終列車朧月夜は静かなり
朧夜や大阪港の常夜灯
灯台の明かりも翳る朧の夜

No.16 古賀一弘
二度三度公魚跳ねて凍りけり
長靴を脱ぎて焚火へ足の裏
スーパーに浅蜊潮吹く愚痴のごと

No.17 祝恵子
清めらる境内白のほのと梅
筆塚や膨らむ梅の初初し
春夕焼け鳴き交わしたる鴨のいて
背短きタンポポ一本見つけたり
畑に糠撒かれ集まる春の鳥
探梅や子らの下校のランドセル

No.18 井上治代
春立ちて黄色き花の増えゆけり
せせらぎに我が影映し春たのし
少女らの頬煌めきて春ショール

No.19 小川和子
樹々芽吹き空褐色に占めらるる
春浅し甘き香ふっと匂いくる
如月のきらめきに干す濯ぎ物
白梅の綻び堰の音澄めり
藪椿咲きおり森の定位置に
春きざす森の空気の清麗と

No.20 藤田洋子
濠に沿う道はここより梅開く
白梅の一輪ごとに濠の風
枝ごとの梅の蕾の中通る
次々と雨の水輪の濠二月
雨の日の対岸白き梅明り
梅白し放送局の深夜灯


※選者の選は、下記の要領でお願いします。
①上記全作品からお選びください。
②特選5句をお選びください。その中の1句にコメントを付けてください。
③選句期間は、2月19日(日)午前0時~正午です。
④選句は、下の<コメント欄>にお書き込みください。選者名もお忘れなきよう、お願いします。

※選句は、多少の遅れがあっても、許されますが、その場合は、ご一報ください。

◆投句箱◆

2012-02-13 01:47:47 | 日記
■ご案内■
●参加者:花冠会員・同人。会員・同人以外の一般参加も許されますが、参加申込によって、花冠IDを取得してください。
●投句:一日一回、当季雑詠3句以内。ツィッターやフェイスブックに投句した句も許されます。
●投句場所:下の投句箱<コメント欄>にお書きください。投句箱<コメント欄>には、句評など投句以外のことを書き込まないでください。
●選者・選句:選者は高橋正子(花冠主宰)です。前回句会の最優秀受賞者を特別選者として招待いたします。選句・入賞発表は、随時行われます。
※ご投句は、ご本名でお願いします。ご本名以外の場合は、削除されます。

●伝言版
伝言、お問い合せなどがありましたら、下記アドレスの<伝言版>にお書き込みください。
http://blog.goo.ne.jp/kakan100



■投句箱■
第6回句会のご投句(2月12日~2月18日/1日3句以内)は、下の<コメント欄>にお書き込みください。句評など投句以外のことを書き込まないでください。投句以外の伝言などは、上記の<伝言版>にお書きください。
※第6回句会の入賞発表は、2月19日(日)です。

ご挨拶

2012-02-12 17:04:05 | 日記
一日寒い日でした。インフルエンザも流行っているようです。第5回のきがるに句会にご参加いただき、ありがとうございました。入賞の皆さまおめでとうございます。毎日、力のこもった俳句をご投句いただいて圧倒されています。切磋琢磨という言葉がぴったりの状況と思います。次回は第6回句会となります。ご投句をお待ちしています。これで、第5回きがるに句会を終わります。