◆第7回句会全作品/現在20名(2月19日~25日)◆
No.1 小口泰與
焼栄螺灯しの早き我家かな
伐りて来し庭の白梅供花とせり
さえずりや野を分け利根の激しかり
ほろろ打つ雉や赤城の荒き風
あぜ道の空や雲雀の鳴き別れ
下校児や荒れ田の雉の翔け出でし
揚ひばり鍋割山に真昼の日
風に乗り湖心へ流る春の月
たんぽぽや風なき湖のささら波
裏木戸を出づや紅梅ふふみおり
虹鱒の夕日を加え遡上せり
ばらの芽の光放てり遠浅間
斜め降る雨の雲雀のこえ短
竹の節ゆったり越ゆる春の雨
田の雨にさそわれ出づる地虫かな
産土の山をつなぎて霞かな
灰色の空や雲雀の影もなし
青空やちいほの蕾枝垂れ梅
雨に染む山茱萸の花の鮮しや
枝々に雨粒ともししだれ梅
ばらの芽の風に対いてあえかなる
No.2 河野啓一
水温む児らの歓声空の下
水ぬるむ幼き頃を想い出し
窓越しの空広くして春浅し
パン屑に雀次々春の庭
春光や朝の冷気を通り来る
芽柳の色待つ賀茂の河原かな
茫漠と向こう岸まで水の春
新しきビルに日差しや春の色
この次は幾つひこばえ数え行く
蕗の薹蒼く小さき宝物
春霞遠くに走るモノレール
街の畑狭しといえど菜花咲く
雨を得て芽吹きの気配丘の上
春の夢覚めし夜来の雨音に
春の水滴り落ちて箕面山
レース越し朝の光と八重椿
蒼い海白き梅林見上げおり
雨を得て目覚め行くかな春の森
白梅の咲いて花みな空に透け
紅梅のつぼみ海辺に青空に
苗木植うブルーベリーは青紫色
No.3 黒谷光子
淡雪の京の路地裏通り抜け
芽柳や神宮の朱の大鳥居
春ぬくし能楽堂へ連れ立ちて
残雪の田にきらきらと水流る
春雪の光る遠嶺や県境
残雪の遠嶺も近き日当たれば
有職雛紙雛駅の飾り窓
靴跡のなき残雪の畑道
残雪に菜っ葉列なし頭出し
朝靄に隠れ給いし辻地蔵
ゆるゆると群れて長閑や川の鯉
穏やかに明けしが二月の風すさぶ
色あふる春の店先供花を選る
供花切るに踏む残雪の嵩わずか
一木の南に廻り紅椿
No.4 多田有花
釣り船の影きらきらと春の海
大橋を望む汀の春の雪
風花や暮れし浪花のビルの間に
余寒去り木々伸びやかに影を成す
陽炎のかなたに甍連なりぬ
薄氷の池なかばまで残りおり
梅林の季節始まる未開紅
二月早や閉店セールの園芸店
沖よりも甍の光り春めきぬ
昼の陽の薄きに紅梅の開く
さみどりの梅の蕾の膨らみぬ
静かなることこそよけれ梅林は
紅梅の開く雨滴を留めおき
雨あがる春の山路に人と会う
春の夕途切れ途切れのハーモニカ
せせらぎの音を近くに梅開く
陽を溜めし頂にあり春の風
うすうすとむらさきだちて春の山
雨日ごと梅の開花を促して
春雨や図書館で選ぶ本五冊
半地下より上りて春陰の中へ
No.5 桑本栄太郎
歩みゆく春の路地裏先斗町
春水の木屋町流る高瀬川
托鉢の僧の独りや春北風
つかの間の日差し明るく春北風
青空へ伸びる一枝梅一輪
北国は未だ時化おり多喜二の忌
ほどけゆく飛行機雲の春の雲
その中のいつぽんのみや梅ひらく
梅林の遅速際立ち梅二月
春めきてバスの系統変えてみる
手をつなぎ園児散歩の丘の梅
転々と空へ辿りて梅ひらく
上桂駅のホームの桜芽木
日暮れゆく松尾大社や春ともし
春雨の本降り来たる嵐山
うすうすとさみどり揺るゝ柳の芽
乙訓は風吹く丘ぞ菜花咲く
太古より目覚むナデシコ春の夢
耕さる土の乾きや風光る
風音の耳に途切れし揚ひばり
採り跡の千々の乱れや春の畑
No.6 小川和子
テ-ブルに桃色淡きサイネリア
長閑けしやマザ-テレサの映画観る
カ-テンを開けて春日の居間に入る
陽をまとい子らブランコを宙に漕ぐ
春空に放課後の子らの声響く
よく鋤かれ真っすぐ均されし畑
梅東風の吹くよ旧知の友ませば
会果てて友等と啜る鰊そば
鉄橋を隔て蛇行す春の川
掃き浄まる中院しんと春日さす
箒目の筋美しく沈丁花
高き枝に無垢に開けりしだれ梅
喜多院の水屋春水溢れさす
柄杓もて冷水汲める長閑けさに
水音の微かに喜々と百千鳥
No.7 藤田裕子
春雪の結晶ふわり又ふわり
眼前にあるは春雪の静けさよ
陽当たりて木々を離るる春の雪
日暮るれば垣のどこからか恋の猫
遠汽笛空へ弾ませ風二月
芽吹くもの全てに雨の潤いを
No.8 津本けい
たんぽぽの野に散らばれる低さかな
誰も居ぬ梅畑つがいの目白くる
白梅の花びらに淡く蕊の翳
いぬふぐり閉じて尖りてなお真青
しらじらと曇天の野に梅ひらく
下萌をふわりと行けば気も軽く
学校囲みぶきぶき育つ春キャベツ
弁当に日あたり花菜和え淡し
さみどりを零して友とうぐいす餅
踏切の鳴って橙の春夕焼
空晴れて梢芽吹ける河畔林
座布団干すそば屋を廻り草青む
クレヨンより柔き色降り木の芽雨
笹鳴のあたりに寄れば木々しんと
張子雛に日の当たりきて洋食屋
クレヨンより柔き色降り木の芽雨
笹鳴のあたりに寄れば木々しんと
張子雛に日の当たりきて洋食屋
No.9 今村征一
暖かし黒松続く芦屋川
二ン月の伎芸天女のやうな空
行間に見え隠れする浅き春
河口見るより芦屋川涸れ尽くす
一日がとつても長く梅の花
清冽な記憶蘇州の春銀河
岸辺より始まる春の兆しかな
靄を引く大琵琶晴れて春動く
一輪の梅に集まる瞳かな
橋立の靄より現るる浅利舟
堅香子の花むらさきに黄昏るる
遠くまで来過ぎし遊歩あたたかし
花街の灯りほのかに芽吹く川岸
日脚伸ぶ岬の先にまた岬
午後四時を告ぐ料峭の時計台
古希にして恋に似しもの梅二月
No.10 高橋秀之
ただいまの声遠くまで春の宵
親と子の銭湯通い春の宵
大空に白くぼんやり春の月
半身に春泥いっぱい子供服
雨上がり周回道路に梅の花
春の雨空高く飛ぶ鳥の群れ
No.11 古田敬二
しなやかに野の畔へ跳ぶ春の猫
早春や園児へ挨拶何回も
春浅しオリオン星座はやや西へ
笹の根の地中に深く切れる音
取り除く笹の根地中に切れる音
雑草は雑草として春の色
オリオン座春の寒さを降らし来る
群れ離れ一つ咲くありいぬふぐり
菜の花や遠くに牧の牛の群れ
煌めきへもぐる鳥あり春の池
雨あがる芽吹く大樹の賑わしく
雪柳ポツリポツリの白さかな
剪定の切り口白し梅林
耳に風優しき日なり梅開花
春来ればこずえの揺れも柔らかし
No.12 迫田和代
奥の雪溶かして運ぶ蒼い川
雑談も楽しいホームに春の風
朝日うけキラキラ光る瀬戸の春
春の陽を浴びて木々の芽動き出す
音のする雪解け水が春の野に
静まった茶室の床に梅三つ
No.13 古賀一弘
鎌倉や虚子の墓守つくしんぼ
金盞花潮騒聞こゆ湯宿かな
カルピスや二人のストロー風光る
No.14 足立弘
美術館蠟梅の香も訪れぬ
映画館出れば眩しい春の空
雪国の一両電車走り去る
No.15 佃 康水
小さく群れ中洲に歩む春の鴨
訪う丘の空へ紅梅濃くなりぬ
野に山にしるき響きや雪解川
No.16 小西 宏
温かき重き襁褓を替えうらら
大仏の頬に傷あり春の風
黄梅の風の明るき池の水
早春のなお凛として枝の張り
春光や小走り滑る浜千鳥
剪定の切口丸く青空にるき池の水
空に張る小さきものよ楓の芽
少しずつ地球動ける余寒かな
雨降って柑橘映える暖かさ
猫ねむり梅が一輪咲きました
廃れ田に移り泥食う春の鴨
下萌えを嗅いで根を掘る小犬かな
No.17 藤田洋子
春の雨水の輪やがて音生まる
堰あふる川は二月の雨の音
幾筋も畝盛り上がり春の雨
蕗の薹手のひらふっと野の香り
蕗の薹揚げてふくらむ紙の上
梅二月開きて遠き地図の旅
No.18 井上治代
春寒や米研ぐ音のすきとおる
麗らかやとんびゆるりと旋回す
如月の光舞い降り草萌ゆる
No.19 川名ますみ
浅き春パキラの鉢を大きくす
植替の土さらさらと春めきぬ
水温む男の汲みしバケツあり
伯父の持つ春水いつぱいのバケツ
撒かれたる水のひかりにある温み
撒かれゆく水ひかりあり温みあり
No.20 祝恵子
明かり取り明かりもれきて梅ふふむ
紅白と障子に影を盆梅展
幹太く古木となりて梅二月
カットする鏡に淡きチューリップ
木の芽雨狸の陶の下げし酒
振れば鳴る鈴縄揺れて春の日を
※選者の選は、下記の要領でお願いします。
①上記全作品からお選びください。
②特選5句をお選びください。5句すべてにコメントを付けてください。
③選句期間は、2月25日(土)午後9時~26日(日)正午です。
④選句は、下の<コメント欄>にお書き込みください。選者名もお忘れなきよう、お願いします。
※選句は、多少の遅れがあっても、許されますが、その場合は、ご一報ください。
▼選者の選は、2月25日(土)午後9時に始めてください。
No.1 小口泰與
焼栄螺灯しの早き我家かな
伐りて来し庭の白梅供花とせり
さえずりや野を分け利根の激しかり
ほろろ打つ雉や赤城の荒き風
あぜ道の空や雲雀の鳴き別れ
下校児や荒れ田の雉の翔け出でし
揚ひばり鍋割山に真昼の日
風に乗り湖心へ流る春の月
たんぽぽや風なき湖のささら波
裏木戸を出づや紅梅ふふみおり
虹鱒の夕日を加え遡上せり
ばらの芽の光放てり遠浅間
斜め降る雨の雲雀のこえ短
竹の節ゆったり越ゆる春の雨
田の雨にさそわれ出づる地虫かな
産土の山をつなぎて霞かな
灰色の空や雲雀の影もなし
青空やちいほの蕾枝垂れ梅
雨に染む山茱萸の花の鮮しや
枝々に雨粒ともししだれ梅
ばらの芽の風に対いてあえかなる
No.2 河野啓一
水温む児らの歓声空の下
水ぬるむ幼き頃を想い出し
窓越しの空広くして春浅し
パン屑に雀次々春の庭
春光や朝の冷気を通り来る
芽柳の色待つ賀茂の河原かな
茫漠と向こう岸まで水の春
新しきビルに日差しや春の色
この次は幾つひこばえ数え行く
蕗の薹蒼く小さき宝物
春霞遠くに走るモノレール
街の畑狭しといえど菜花咲く
雨を得て芽吹きの気配丘の上
春の夢覚めし夜来の雨音に
春の水滴り落ちて箕面山
レース越し朝の光と八重椿
蒼い海白き梅林見上げおり
雨を得て目覚め行くかな春の森
白梅の咲いて花みな空に透け
紅梅のつぼみ海辺に青空に
苗木植うブルーベリーは青紫色
No.3 黒谷光子
淡雪の京の路地裏通り抜け
芽柳や神宮の朱の大鳥居
春ぬくし能楽堂へ連れ立ちて
残雪の田にきらきらと水流る
春雪の光る遠嶺や県境
残雪の遠嶺も近き日当たれば
有職雛紙雛駅の飾り窓
靴跡のなき残雪の畑道
残雪に菜っ葉列なし頭出し
朝靄に隠れ給いし辻地蔵
ゆるゆると群れて長閑や川の鯉
穏やかに明けしが二月の風すさぶ
色あふる春の店先供花を選る
供花切るに踏む残雪の嵩わずか
一木の南に廻り紅椿
No.4 多田有花
釣り船の影きらきらと春の海
大橋を望む汀の春の雪
風花や暮れし浪花のビルの間に
余寒去り木々伸びやかに影を成す
陽炎のかなたに甍連なりぬ
薄氷の池なかばまで残りおり
梅林の季節始まる未開紅
二月早や閉店セールの園芸店
沖よりも甍の光り春めきぬ
昼の陽の薄きに紅梅の開く
さみどりの梅の蕾の膨らみぬ
静かなることこそよけれ梅林は
紅梅の開く雨滴を留めおき
雨あがる春の山路に人と会う
春の夕途切れ途切れのハーモニカ
せせらぎの音を近くに梅開く
陽を溜めし頂にあり春の風
うすうすとむらさきだちて春の山
雨日ごと梅の開花を促して
春雨や図書館で選ぶ本五冊
半地下より上りて春陰の中へ
No.5 桑本栄太郎
歩みゆく春の路地裏先斗町
春水の木屋町流る高瀬川
托鉢の僧の独りや春北風
つかの間の日差し明るく春北風
青空へ伸びる一枝梅一輪
北国は未だ時化おり多喜二の忌
ほどけゆく飛行機雲の春の雲
その中のいつぽんのみや梅ひらく
梅林の遅速際立ち梅二月
春めきてバスの系統変えてみる
手をつなぎ園児散歩の丘の梅
転々と空へ辿りて梅ひらく
上桂駅のホームの桜芽木
日暮れゆく松尾大社や春ともし
春雨の本降り来たる嵐山
うすうすとさみどり揺るゝ柳の芽
乙訓は風吹く丘ぞ菜花咲く
太古より目覚むナデシコ春の夢
耕さる土の乾きや風光る
風音の耳に途切れし揚ひばり
採り跡の千々の乱れや春の畑
No.6 小川和子
テ-ブルに桃色淡きサイネリア
長閑けしやマザ-テレサの映画観る
カ-テンを開けて春日の居間に入る
陽をまとい子らブランコを宙に漕ぐ
春空に放課後の子らの声響く
よく鋤かれ真っすぐ均されし畑
梅東風の吹くよ旧知の友ませば
会果てて友等と啜る鰊そば
鉄橋を隔て蛇行す春の川
掃き浄まる中院しんと春日さす
箒目の筋美しく沈丁花
高き枝に無垢に開けりしだれ梅
喜多院の水屋春水溢れさす
柄杓もて冷水汲める長閑けさに
水音の微かに喜々と百千鳥
No.7 藤田裕子
春雪の結晶ふわり又ふわり
眼前にあるは春雪の静けさよ
陽当たりて木々を離るる春の雪
日暮るれば垣のどこからか恋の猫
遠汽笛空へ弾ませ風二月
芽吹くもの全てに雨の潤いを
No.8 津本けい
たんぽぽの野に散らばれる低さかな
誰も居ぬ梅畑つがいの目白くる
白梅の花びらに淡く蕊の翳
いぬふぐり閉じて尖りてなお真青
しらじらと曇天の野に梅ひらく
下萌をふわりと行けば気も軽く
学校囲みぶきぶき育つ春キャベツ
弁当に日あたり花菜和え淡し
さみどりを零して友とうぐいす餅
踏切の鳴って橙の春夕焼
空晴れて梢芽吹ける河畔林
座布団干すそば屋を廻り草青む
クレヨンより柔き色降り木の芽雨
笹鳴のあたりに寄れば木々しんと
張子雛に日の当たりきて洋食屋
クレヨンより柔き色降り木の芽雨
笹鳴のあたりに寄れば木々しんと
張子雛に日の当たりきて洋食屋
No.9 今村征一
暖かし黒松続く芦屋川
二ン月の伎芸天女のやうな空
行間に見え隠れする浅き春
河口見るより芦屋川涸れ尽くす
一日がとつても長く梅の花
清冽な記憶蘇州の春銀河
岸辺より始まる春の兆しかな
靄を引く大琵琶晴れて春動く
一輪の梅に集まる瞳かな
橋立の靄より現るる浅利舟
堅香子の花むらさきに黄昏るる
遠くまで来過ぎし遊歩あたたかし
花街の灯りほのかに芽吹く川岸
日脚伸ぶ岬の先にまた岬
午後四時を告ぐ料峭の時計台
古希にして恋に似しもの梅二月
No.10 高橋秀之
ただいまの声遠くまで春の宵
親と子の銭湯通い春の宵
大空に白くぼんやり春の月
半身に春泥いっぱい子供服
雨上がり周回道路に梅の花
春の雨空高く飛ぶ鳥の群れ
No.11 古田敬二
しなやかに野の畔へ跳ぶ春の猫
早春や園児へ挨拶何回も
春浅しオリオン星座はやや西へ
笹の根の地中に深く切れる音
取り除く笹の根地中に切れる音
雑草は雑草として春の色
オリオン座春の寒さを降らし来る
群れ離れ一つ咲くありいぬふぐり
菜の花や遠くに牧の牛の群れ
煌めきへもぐる鳥あり春の池
雨あがる芽吹く大樹の賑わしく
雪柳ポツリポツリの白さかな
剪定の切り口白し梅林
耳に風優しき日なり梅開花
春来ればこずえの揺れも柔らかし
No.12 迫田和代
奥の雪溶かして運ぶ蒼い川
雑談も楽しいホームに春の風
朝日うけキラキラ光る瀬戸の春
春の陽を浴びて木々の芽動き出す
音のする雪解け水が春の野に
静まった茶室の床に梅三つ
No.13 古賀一弘
鎌倉や虚子の墓守つくしんぼ
金盞花潮騒聞こゆ湯宿かな
カルピスや二人のストロー風光る
No.14 足立弘
美術館蠟梅の香も訪れぬ
映画館出れば眩しい春の空
雪国の一両電車走り去る
No.15 佃 康水
小さく群れ中洲に歩む春の鴨
訪う丘の空へ紅梅濃くなりぬ
野に山にしるき響きや雪解川
No.16 小西 宏
温かき重き襁褓を替えうらら
大仏の頬に傷あり春の風
黄梅の風の明るき池の水
早春のなお凛として枝の張り
春光や小走り滑る浜千鳥
剪定の切口丸く青空にるき池の水
空に張る小さきものよ楓の芽
少しずつ地球動ける余寒かな
雨降って柑橘映える暖かさ
猫ねむり梅が一輪咲きました
廃れ田に移り泥食う春の鴨
下萌えを嗅いで根を掘る小犬かな
No.17 藤田洋子
春の雨水の輪やがて音生まる
堰あふる川は二月の雨の音
幾筋も畝盛り上がり春の雨
蕗の薹手のひらふっと野の香り
蕗の薹揚げてふくらむ紙の上
梅二月開きて遠き地図の旅
No.18 井上治代
春寒や米研ぐ音のすきとおる
麗らかやとんびゆるりと旋回す
如月の光舞い降り草萌ゆる
No.19 川名ますみ
浅き春パキラの鉢を大きくす
植替の土さらさらと春めきぬ
水温む男の汲みしバケツあり
伯父の持つ春水いつぱいのバケツ
撒かれたる水のひかりにある温み
撒かれゆく水ひかりあり温みあり
No.20 祝恵子
明かり取り明かりもれきて梅ふふむ
紅白と障子に影を盆梅展
幹太く古木となりて梅二月
カットする鏡に淡きチューリップ
木の芽雨狸の陶の下げし酒
振れば鳴る鈴縄揺れて春の日を
※選者の選は、下記の要領でお願いします。
①上記全作品からお選びください。
②特選5句をお選びください。5句すべてにコメントを付けてください。
③選句期間は、2月25日(土)午後9時~26日(日)正午です。
④選句は、下の<コメント欄>にお書き込みください。選者名もお忘れなきよう、お願いします。
※選句は、多少の遅れがあっても、許されますが、その場合は、ご一報ください。
▼選者の選は、2月25日(土)午後9時に始めてください。
花も葉も土にくっつくように咲き始めたたんぽぽ、早春のたんぽぽの野の情景が浮かびます。低さかな が素敵です。
★野に山にしるき響きや雪解川/佃 康水
野や山に響く雪解川の響きは春の兆し、心地よい響きです。
★空に張る小さきものよ楓の芽/小西宏
小さきものよと呼びかける詠みに楓の芽の愛らしさ、美しさがいっそう引き立ちます。
★蕗の薹手のひらふっと野の香り/藤田洋子
蕗の薹の香りが移った手のひら、ほんのりと匂います。春の香りがうれしいです。
★麗らかやとんびゆるりと旋回す/井上治代
ゆっくりと旋回する鳶の大空は、春ならでは情景と思います。のびのびとした気持ちになりました。
早春、紅色のやわらかな新芽を吹く楓、小さいながらも空に張るいのちの息吹が、とても愛おしく新鮮に感じられます。
★残雪の田にきらきらと水流る/黒谷光子
残雪の田も、田に入る水の流れも、眩しいばかりに輝いて、早春の澄んだ清らな空気を感じさせてくれます。
★沖よりも甍の光り春めきぬ /多田有花
はるかに望む沖も美しく広がり、またさらに、甍の照り合う眩しさに明るい日差しを感じ、おのずと春めく気配が感じ取れます。
★青空へ伸びる一枝梅一輪/桑本栄太郎
青空のもと、一枝に咲く一輪の梅がことさら美しく気品高く、伸びやかな明るさに早春の喜びを感じます。
★菜の花や遠くに牧の牛の群れ/古田敬二
菜の花が咲き、遠望に群れる牛の群れ、明るく見えわたるのどかな情景に、あたたかく穏やかな気持ちになれます。
清らかな白梅を伐って仏様にお供えすると、ほのかな香りが広がり、先祖の方々も安らいだ気持になられたことと思います。
★残雪の田にきらきらと水流る/黒谷光子
きらきらと光りながら流れる水の音に、寒く長かった冬も終わり、自然界のものがいっせいに煌めき始める予感がします。
★陽をまとい子らぶらんこを宙に漕ぐ/小川和子
大空に向かって夢をいっぱいにのせてブランコを漕いでいる子ども達。幸せそのものです。こういった幸せが続けばよいと思います。
★春の雨水の輪やがて音生まる/藤田洋子
春の雨が一つ、二つと水の輪になり、やがて重なり合って、ポツリ、ポツリという音が生まれる。視覚と時間的経過をうまくとらえてつくられた俳句だと思います。
★植替の土さらさらと春めきぬ/川名ますみ
植替するために土に触れるとその感触はさらさらとしてあたたかく心地よいものでした。土も春めいているととらえた作者の感覚がすばらしいと思いました。
冬と違い春の雪は陽の光を受けてきらきらとしています。湖国の県境の遠嶺の山々の雪も、明るい雪を感じさせてくれたのでしょう。
★余寒去り木々伸びやかに影を成す/多田有花
前日までの寒波が緩み、暖かな一日を待ちわびたかのように、寒さから解放された木々が一気に伸びやかになる。自然の息吹を感じさせてくれます。
★陽をまとい子らブランコを宙に漕ぐ/小川和子
春の暖かい陽射しが包む公園では、元気な子ども達がぶらんこを大きくこいでいる様子は、陽気に誘われた元気な子ども達の活気が伝わってきます。
★遠汽笛空へ弾ませ風二月/藤田裕子
遠くから響く汽笛が二月の風に乗って大空に広がっていきます。春浅き風は、きっと心地よい風だったことでしょう。
★たんぽぽの野に散らばれる低さかな/津本けい
野に咲くタンポポはまだまだ背が低く、早咲きだけなのか、点々と咲いています。春先の野原の様子をとてもうまく伝えてくれました。
春の海に浮かぶ釣り船、ゆったりと揺れていて春の光が釣り船を覆っているようです。
★菜の花や遠くに牧の牛の群れ/古田敬二
牧場の風景でしょうか。タンポポが咲き、のどかさが伝わってきます。
★植替の土さらさらと春めきぬ/川名ますみ
春めいてお花の苗を植えられる準備でしょう。土もさらさらとして、嬉しい思いです。
★日暮れゆく松尾大社や春ともし/桑本栄太郎
見知った土地や神社が句に出ると嬉しくなります。松尾大社の大きな鳥居や春夕方の景色が浮かびます。
★梅二月開きて遠き地図の旅/藤田洋子
梅の咲く頃となり春めいてくればどこか遠くの旅に出たくなります。地図を広げて。
寒さも去り青空が戻って来ると一気に梅の開花が期待されます。沢山の蕾を付けた枝垂れ梅がその時を待っています。「ちいほの蕾」と「枝垂れ梅」の措辞が新鮮です。
★余寒去り木々伸びやかに影を成す/多田有花
やっと余寒が去った感が有ります。柔らかな日差しを受ける木々の影も伸びやかで、人の動きも軽やかになる様な気が致します。
★たんぽぽの野に散らばれる低さかな/津本けい
たんぽぽは地に張り付いたかの様に葉を広げ濃い黄色の花がしっかりと低く咲いて居ます。次第に伸びるのでしょうが、今はしっかりと根づいたたんぽぽの強さを感じます。
★梅東風の吹くよ旧知の友ませば/小川和子
懐かしいお友達とお逢いになったのでしょうか。ご一緒ならば春の風も心地よくさぞ楽しい一時に旧交を温められたことでしょう。
★菜の花や遠くに牧の牛の群れ/古田敬二
菜の花の咲いて居る所から見える牛牧場、春の長閑な風景が目に浮かびます。
広々とした草原と季節の花、その取り合わせにゆったりと心を和ませてくれます。
「伐りて来し」や「せり」の音がきっぱりと澄んで聞こえ、白梅を引き立てています。まだ春も浅いのでしょう。句全体に凛とした響きが感じられます。
★街の畑狭しといえど菜花咲く/河野啓一
住む街への愛情と春到来の喜びが静かに語られている、優しさ溢れる佳品と思います。
★釣り船の影きらきらと春の海/多田有花
ゆったりと漂う釣り船の間に間に春の海がきらきらと輝く。ゆるやかな句のリズムが長閑な春のうねりを届けてくれています。
★野に山にしるき響きや雪解川/佃 康水
春の野を歩いてみれば、雪解けの水の増えた川の響きが強く感じられるようになったのでしょう。生き生きとした春の情景が鮮明に詠われています。
★春寒や米研ぐ音のすきとおる/井上治代
「米研ぐ音のすきとおる」が春寒の肌触りを見事に表現しています。春の寒さが、あらためて好きになりそうです。