◆入賞発表/2012年2月12日(日)◆
(2月4日~11日/19名)
【最優秀/2句】
★福の豆受けて明るき音鳴らす/佃 康水
福の豆をいただくことは、福をいただいたようでうれしい。「明るき音」は、作者の明るく気持ちが出て、句がかろやかなのがいい。(高橋正子)
★雪晴れの空へ明るき鳥の声/井上治代
学生俳句のよさが出た句で、率直でこだわりのない明るさがよい。(高橋正子)
【高橋正子特選/5句】
★節分の星へ開けたる窓一つ/藤田洋子
節分と星の取り合わせにいい抒情がある。窓一つも小さな星空を見せて「節分の夜」の雰囲気をよく出している。(高橋正子)
★寒明けのひかり随所に水の音/小西 宏
寒が明けると、気持ちが春へと向かう。ひかりが随所に、水の音が聞こえて、寒から解放された喜びがある。(高橋正子)
★窓際の梅が開くよちらほらと/迫田和代
窓際に見えるものがきれいなもの、たのしいものであれば、日々の生活が楽しい。梅の花がちらほら開き、日ごと暖かくなっていく。(高橋正子)
★雪嶺へ飛行機雲の一直線/川名ますみ
晴れ渡った大空に一直線に伸びる飛行機雲が雪嶺に向かってゆく。飛行機雲が気持ちのよい景色を引き立ててくれています。(高橋秀之)
★対岸にクレーンが一基冴え返る/高橋秀之
向う岸で荷の積み下ろしで有ろうか工事中で有ろうか大きなクレーンが一基見えて居る。海や湾の広さ、水の冷たさ、クレーンの高さなど全てがこの寒さを倍増し、将に冴え返るが納得いきます。(佃 康水)
【多田有花特選/5句】
★立春の光どこへも満ちわたり/津本けい
春が来た、それは光から、その情景と気持ちの明るさをすらっと詠まれています。気持ちのよい御句です。(多田有花)
★梅東風や海見る丘に牛の鳴く/佃 康水
★春浅し小枝の先はみな光る/古田敬二
★薄氷や風の形のそのままに/桑本栄太郎
★岬より春風の吹く港町/迫田和代
【高橋秀之特選/5句】
★雪嶺へ飛行機雲の一直線/川名ますみ
晴れ渡った大空に一直線に伸びる飛行機雲が雪嶺に向かってゆく。飛行機雲が気持ちのよい景色を引き立ててくれています。(高橋秀之)
★春浅し小枝の先はみな光る/古田敬二
冬から春に向かう季節。冬木も春に向けて勢いをつけてきます。小枝の先が光るところに春の息吹を感じます。(高橋秀之)
★星煌めく空よりふわり雪が降る/津本けい
春を迎えて夜空の星も煌いて見えますが、まだ雪が降ってくるこの季節です。微妙な季節感と自然の気候が感じられました。(高橋秀之)
★春雪の竹撓らせて弾ませて/黒谷光子
竹に積もった春の雪が突然重さで落ち、撓んでいた竹が弾んで、立ち戻ったのを偶然見られかのでしょうか。竹と雪の弾み舞う景を想像しています。(祝恵子)
★雪晴れの空へ明るき鳥の声/井上治代
学生俳句のよさが出た句で、率直でこだわりのない明るさがよい。(高橋正子)
【小西 宏特選/5句】
★節分の豆を炒る手も弾みくる/藤田洋子
節分の豆まきは、子どもたちにとってはとても楽しい行事の一つです。そして豆を炒る大人にとっても、転がり弾む豆の動きや翻る手に、春の訪れを目前に控えた喜びが感じられるのでしょう。立春を待つ思いを「豆を炒る手」に込めて捉えた季感が嬉しく伝わってきます。(小西宏)
★門前を誰ぞ過ぎ行く春の夜/黒谷光子
春の夜はなんとなく心が広がり、人の気配に敏感になるのも不思議な喜びの一つです。門前を通り過ぎるのは誰でしょうか? ひょっとして人知れぬ春の足音?(小西宏)
★湖西晴れ湖南も晴れて春立ちぬ/今村征一
「湖西晴れ湖南も晴れて」に湖の広さが感じられ、春到来の伸びやかさが伝わってきます。作者の、湖畔に立って胸を広げておられる姿もよく見えています。(小西宏)
★春星の榛名の空のかぎりなし/小口泰與
星空の芒洋とした広がりの中に榛名山の影が大きく映ります。春のゆったりとした天と地が活写されていて、読者の心も大らかになります。(小西宏)
★鍋囲みおれば遠くに「鬼は外」/小川和子
豆まきを遠くに聞くのもいいですね。このご家族はもう豆まきを済ませたのでしょうか。あるいは、よその豆まきを聞いて楽しむだけなのでしょうか。いずれにせよ、ご近所と一体になっているところが心休まります。「鍋囲みおれば」と作者のわざと距離を置いている姿が少し可笑しく、共感がもてます。(小西宏)
【黒谷光子特選/5句】
★湖西晴れ湖南も晴れて春立ちぬ/今村征一
湖のある所は何処も湖西湖南と言うのでしょうが、やはり琵琶湖を想像しました。立春の近江の情景を大きく美しく詠まれていると思います。(黒谷光子)
★梅東風や海見る丘に牛の鳴く/佃康水
梅が咲く海の見える丘に佇めば牛の鳴く声が聞こえてきます。まだ寒さの残る風の中にも長閑な春を感じます。(黒谷光子)
★春浅し小枝の先はみな光る/古田敬二
春とは言えまだ寒さの残る頃、それでも小枝の先は光をため芽吹くのも間近です。(黒谷光子)
★下萌に我が影乗りて柔らかし/津本けい
土から出たばかりのさ緑の草に立てば、そこに映る影も自ずから柔かく、穏やかな早春のひと時を感じます。(黒谷光子)
★薄氷や風の形のそのままに/桑野栄太郎
蹲踞に張った薄氷にある波模様、夕べの風の形をそのまま残しているのでしょう。朝の陽に美しく煌めきます。
【祝 恵子特選/5句】
★春雪の竹撓らせて弾ませて/黒谷光子
竹に積もった春の雪が突然重さで落ち、撓んでいた竹が弾んで、立ち戻ったのを偶然見られかのでしょうか。竹と雪の弾み舞う景を想像しています。(祝恵子)
★枝はみな陽につやつやと桜芽木/小川和子
日に当たる桜芽木のつややかな枝、花を待つ楽しみがあります。 (祝恵子)
★膝折りて瀬戸海眺む春の鹿/佃 康水
鹿の一、二というような座わる行程を思い出しています。海を眺めて何を思っているのでしょう。宮島の鹿を思いました。 (祝恵子)
★寒戻る梅の蕾はためらわず/多田有花
寒さが戻ってきていますが、自然の強さは巡ってくる梅の咲く時期を忘れません。嬉しい春です。 (祝恵子)
★洗われし色となる森春きざす/古田敬二
雨風にうたれた森の清々しさが、新芽を出し、蕾を持ち、春が来ていることを思います。 (祝恵子)
【迫田和代特選/5句】
★立春や陽を抱くようにシャツ干され/古田敬二
さぞお干しになったシャツはよく乾いたことでしょう。暖かい春の陽にあたったのですもの。陽を抱くように とお詠みになられた作者の感性がいいですね。(迫田和代)
★踏みしめて二月の畦の湿りくる/藤田洋子
丹精なさっていらっしゃるらしいから屹度黒い土でしょう。二月の土だから春の土らしく湿っているのでしょう。何をお植えになるのでしょう。楽しみです。 (迫田和代)
★春立つというハミングのような日に/今村征一
雪の深いところでは立春が待ち遠いでしょう。三寒四温といいまして確実に美しい春の花の咲き乱れる日になります。ハミングしたい日にです。 (迫田和代)
★軒下の雪は背丈をとうに越え/黒谷光子
湖北は大雪ですのね。背丈を越すという雪にはこの広島ではありません。お気をつけてくださいませ。自然でいい句ですね。 (迫田和代)
★春淡き濡れし落葉を踏みてゆく/多田有花
山歩きでしようか。淡い春ですね。濡れた落葉を踏みてゆくなんて素晴らしいではないですか。もうすぐ貴女しか見れない春が来ますよ。いいですね。 (迫田和代)
【藤田洋子特選/5句】
★春雨にそれぞれ畝の水溜まり/祝恵子
幾筋もの畝に柔らかに降り注ぐ春雨、その潤いのある畝土にこれからの作物の生長を思い、明るい春の訪れを感じます。(藤田洋子)
★紅梅の幹も花芽もほのと紅/黒谷光子
幹も花芽もほのかに色付く紅梅に春の息吹を感じます。心あたたかく満たしてくれるほのかな明るさです。(藤田洋子)
★青空に梅の蕾の紅をさす/足立弘
二月の澄んだ青空に、梅の蕾の紅が明るく美しく映えます。その色彩の明るさに、おのずと春を迎える喜びが伝わります。(藤田洋子)
★能勢の里メジロホオジロあまた来て/河野啓一
メジロホオジロ、春を喜ぶ鳥たちの美しい囀りが聞こえてくるようです。里の鳥たちに囲まれて、ひととき春の明るさに浸っていらっしゃるのでしょう。(藤田洋子)
★雪晴れの空へ明るき鳥の声/井上治代
学生俳句のよさが出た句で、率直でこだわりのない明るさがよい。(高橋正子)
【佃 康水特選/5句】
★梅林に蕾ほころぶ気に満ちて/多田有花
震え上がるほどの寒い日が続いていますがその寒さに耐えながら蕾は何時でも花開く構えが満ち満ちています。見て居ると元気を貰い春が待ちどうしいです。(佃康水)
★地衣纏う桜木立や春初め/小西 宏
探梅に出かけると地衣を纏った桜木立に度々出会います。梅はふっくらと膨らみ開花寸前ですが、桜の花芽は紅の細い蕾を空に向けて居て、桜の時期には未だもう少し時間がかかりそうです。将に春初めですが桜木立の花の時期が待たれます。(佃 康水)
★対岸にクレーンが一基冴え返る/高橋秀之
向う岸で荷の積み下ろしで有ろうか工事中で有ろうか大きなクレーンが一基見えて居る。海や湾の広さ、水の冷たさ、クレーンの高さなど全てがこの寒さを倍増し、将に冴え返るが納得いきます。(佃 康水)
★春雪の竹撓らせて弾ませて/黒谷光子
先日、バスを待っていて御句のその情景に出会いました。竹笹に積もった雪で撓っていましたが突然雪が落ち、そのバンドで竹が弾んだ様に起き上がりました。一瞬の情景を活き活きと詠まれたと思います。(佃 康水)
★朝空へ花芽の紅き並木道/川名ますみ
外に出ると先ずは空や周りの木々を眺めます。美しい朝の空に紅の花芽の並木道がずっと続いている。朝空 花芽 紅 並木道 全てがひた向きに、前向きに春を待っていらっしゃる作者の優しさが見える様です。(佃 康水)
【入選/11句】
★朝の雨宿して梅の開き初む/多田有花
梅の花が開き始めました。その梅には明け方まで残っていたであろう雨の滴がまだ残っています。春の初めの一こまが感じられます。(高橋秀之)
★春耕や引き抜く草の根の強し/古田敬二
春になり新しく耕すために草の根を引こうとするが、その根もしっかりと張っている。春になり草も元気が強くなっていることを感じます。(高橋秀之)
★夕日差す春と思わば柔らかし/祝恵子
夕日は春夏秋冬いずれの季節でも差し込みますが、春の日はほかの季節と比べて柔らかく感じる作者の気持ちが、ストレートに嬉しさを感じさせてくれます。(高橋秀之)
★利根川の濁り初めるや蕗の薹/小口泰與
利根の濁りは春の色なのでしょう。そのかたわらで蕗の薹が出始めました。自然のすべてが春の中へと目覚めていくさま、その喜びを敏感に詠われています。(多田有花)
★秩父嶺をはるか連ねて木の芽風/小川和子
風に春の兆しを感じ取られたのでしょう。見上げれば秩父連峰にさす日差しも何か春めいて見えます。(多田有花)
★働く灯ビルに重ねて春立ちぬ/今村征一
都会の立春です。高層ビルが林立する大都会にも春はやってきてました。もっとも季節から遠く存在しているようなビルの中にあえて春立つ日の景色を詠まれたのがユニークです。(多田有花)
★大空に膨らみ確と桜の芽/津本けい
暦の上では春、とは言えまだまだ寒さがきびしい中、桜の木は確実に芽を膨らませていますね。「大空に」がいいです。(小川和子)
★雪溶けるリズムよき音耳安し/黒谷光子
★枯芝にはや草しかと芽を出せり/足立弘
★春禽の声空に満ち鄙の宿/河野啓一
★一木を雨滴きらめかせ山椿/藤田裕子
▼コメントのない句にコメントをお願いします。
(2月4日~11日/19名)
【最優秀/2句】
★福の豆受けて明るき音鳴らす/佃 康水
福の豆をいただくことは、福をいただいたようでうれしい。「明るき音」は、作者の明るく気持ちが出て、句がかろやかなのがいい。(高橋正子)
★雪晴れの空へ明るき鳥の声/井上治代
学生俳句のよさが出た句で、率直でこだわりのない明るさがよい。(高橋正子)
【高橋正子特選/5句】
★節分の星へ開けたる窓一つ/藤田洋子
節分と星の取り合わせにいい抒情がある。窓一つも小さな星空を見せて「節分の夜」の雰囲気をよく出している。(高橋正子)
★寒明けのひかり随所に水の音/小西 宏
寒が明けると、気持ちが春へと向かう。ひかりが随所に、水の音が聞こえて、寒から解放された喜びがある。(高橋正子)
★窓際の梅が開くよちらほらと/迫田和代
窓際に見えるものがきれいなもの、たのしいものであれば、日々の生活が楽しい。梅の花がちらほら開き、日ごと暖かくなっていく。(高橋正子)
★雪嶺へ飛行機雲の一直線/川名ますみ
晴れ渡った大空に一直線に伸びる飛行機雲が雪嶺に向かってゆく。飛行機雲が気持ちのよい景色を引き立ててくれています。(高橋秀之)
★対岸にクレーンが一基冴え返る/高橋秀之
向う岸で荷の積み下ろしで有ろうか工事中で有ろうか大きなクレーンが一基見えて居る。海や湾の広さ、水の冷たさ、クレーンの高さなど全てがこの寒さを倍増し、将に冴え返るが納得いきます。(佃 康水)
【多田有花特選/5句】
★立春の光どこへも満ちわたり/津本けい
春が来た、それは光から、その情景と気持ちの明るさをすらっと詠まれています。気持ちのよい御句です。(多田有花)
★梅東風や海見る丘に牛の鳴く/佃 康水
★春浅し小枝の先はみな光る/古田敬二
★薄氷や風の形のそのままに/桑本栄太郎
★岬より春風の吹く港町/迫田和代
【高橋秀之特選/5句】
★雪嶺へ飛行機雲の一直線/川名ますみ
晴れ渡った大空に一直線に伸びる飛行機雲が雪嶺に向かってゆく。飛行機雲が気持ちのよい景色を引き立ててくれています。(高橋秀之)
★春浅し小枝の先はみな光る/古田敬二
冬から春に向かう季節。冬木も春に向けて勢いをつけてきます。小枝の先が光るところに春の息吹を感じます。(高橋秀之)
★星煌めく空よりふわり雪が降る/津本けい
春を迎えて夜空の星も煌いて見えますが、まだ雪が降ってくるこの季節です。微妙な季節感と自然の気候が感じられました。(高橋秀之)
★春雪の竹撓らせて弾ませて/黒谷光子
竹に積もった春の雪が突然重さで落ち、撓んでいた竹が弾んで、立ち戻ったのを偶然見られかのでしょうか。竹と雪の弾み舞う景を想像しています。(祝恵子)
★雪晴れの空へ明るき鳥の声/井上治代
学生俳句のよさが出た句で、率直でこだわりのない明るさがよい。(高橋正子)
【小西 宏特選/5句】
★節分の豆を炒る手も弾みくる/藤田洋子
節分の豆まきは、子どもたちにとってはとても楽しい行事の一つです。そして豆を炒る大人にとっても、転がり弾む豆の動きや翻る手に、春の訪れを目前に控えた喜びが感じられるのでしょう。立春を待つ思いを「豆を炒る手」に込めて捉えた季感が嬉しく伝わってきます。(小西宏)
★門前を誰ぞ過ぎ行く春の夜/黒谷光子
春の夜はなんとなく心が広がり、人の気配に敏感になるのも不思議な喜びの一つです。門前を通り過ぎるのは誰でしょうか? ひょっとして人知れぬ春の足音?(小西宏)
★湖西晴れ湖南も晴れて春立ちぬ/今村征一
「湖西晴れ湖南も晴れて」に湖の広さが感じられ、春到来の伸びやかさが伝わってきます。作者の、湖畔に立って胸を広げておられる姿もよく見えています。(小西宏)
★春星の榛名の空のかぎりなし/小口泰與
星空の芒洋とした広がりの中に榛名山の影が大きく映ります。春のゆったりとした天と地が活写されていて、読者の心も大らかになります。(小西宏)
★鍋囲みおれば遠くに「鬼は外」/小川和子
豆まきを遠くに聞くのもいいですね。このご家族はもう豆まきを済ませたのでしょうか。あるいは、よその豆まきを聞いて楽しむだけなのでしょうか。いずれにせよ、ご近所と一体になっているところが心休まります。「鍋囲みおれば」と作者のわざと距離を置いている姿が少し可笑しく、共感がもてます。(小西宏)
【黒谷光子特選/5句】
★湖西晴れ湖南も晴れて春立ちぬ/今村征一
湖のある所は何処も湖西湖南と言うのでしょうが、やはり琵琶湖を想像しました。立春の近江の情景を大きく美しく詠まれていると思います。(黒谷光子)
★梅東風や海見る丘に牛の鳴く/佃康水
梅が咲く海の見える丘に佇めば牛の鳴く声が聞こえてきます。まだ寒さの残る風の中にも長閑な春を感じます。(黒谷光子)
★春浅し小枝の先はみな光る/古田敬二
春とは言えまだ寒さの残る頃、それでも小枝の先は光をため芽吹くのも間近です。(黒谷光子)
★下萌に我が影乗りて柔らかし/津本けい
土から出たばかりのさ緑の草に立てば、そこに映る影も自ずから柔かく、穏やかな早春のひと時を感じます。(黒谷光子)
★薄氷や風の形のそのままに/桑野栄太郎
蹲踞に張った薄氷にある波模様、夕べの風の形をそのまま残しているのでしょう。朝の陽に美しく煌めきます。
【祝 恵子特選/5句】
★春雪の竹撓らせて弾ませて/黒谷光子
竹に積もった春の雪が突然重さで落ち、撓んでいた竹が弾んで、立ち戻ったのを偶然見られかのでしょうか。竹と雪の弾み舞う景を想像しています。(祝恵子)
★枝はみな陽につやつやと桜芽木/小川和子
日に当たる桜芽木のつややかな枝、花を待つ楽しみがあります。 (祝恵子)
★膝折りて瀬戸海眺む春の鹿/佃 康水
鹿の一、二というような座わる行程を思い出しています。海を眺めて何を思っているのでしょう。宮島の鹿を思いました。 (祝恵子)
★寒戻る梅の蕾はためらわず/多田有花
寒さが戻ってきていますが、自然の強さは巡ってくる梅の咲く時期を忘れません。嬉しい春です。 (祝恵子)
★洗われし色となる森春きざす/古田敬二
雨風にうたれた森の清々しさが、新芽を出し、蕾を持ち、春が来ていることを思います。 (祝恵子)
【迫田和代特選/5句】
★立春や陽を抱くようにシャツ干され/古田敬二
さぞお干しになったシャツはよく乾いたことでしょう。暖かい春の陽にあたったのですもの。陽を抱くように とお詠みになられた作者の感性がいいですね。(迫田和代)
★踏みしめて二月の畦の湿りくる/藤田洋子
丹精なさっていらっしゃるらしいから屹度黒い土でしょう。二月の土だから春の土らしく湿っているのでしょう。何をお植えになるのでしょう。楽しみです。 (迫田和代)
★春立つというハミングのような日に/今村征一
雪の深いところでは立春が待ち遠いでしょう。三寒四温といいまして確実に美しい春の花の咲き乱れる日になります。ハミングしたい日にです。 (迫田和代)
★軒下の雪は背丈をとうに越え/黒谷光子
湖北は大雪ですのね。背丈を越すという雪にはこの広島ではありません。お気をつけてくださいませ。自然でいい句ですね。 (迫田和代)
★春淡き濡れし落葉を踏みてゆく/多田有花
山歩きでしようか。淡い春ですね。濡れた落葉を踏みてゆくなんて素晴らしいではないですか。もうすぐ貴女しか見れない春が来ますよ。いいですね。 (迫田和代)
【藤田洋子特選/5句】
★春雨にそれぞれ畝の水溜まり/祝恵子
幾筋もの畝に柔らかに降り注ぐ春雨、その潤いのある畝土にこれからの作物の生長を思い、明るい春の訪れを感じます。(藤田洋子)
★紅梅の幹も花芽もほのと紅/黒谷光子
幹も花芽もほのかに色付く紅梅に春の息吹を感じます。心あたたかく満たしてくれるほのかな明るさです。(藤田洋子)
★青空に梅の蕾の紅をさす/足立弘
二月の澄んだ青空に、梅の蕾の紅が明るく美しく映えます。その色彩の明るさに、おのずと春を迎える喜びが伝わります。(藤田洋子)
★能勢の里メジロホオジロあまた来て/河野啓一
メジロホオジロ、春を喜ぶ鳥たちの美しい囀りが聞こえてくるようです。里の鳥たちに囲まれて、ひととき春の明るさに浸っていらっしゃるのでしょう。(藤田洋子)
★雪晴れの空へ明るき鳥の声/井上治代
学生俳句のよさが出た句で、率直でこだわりのない明るさがよい。(高橋正子)
【佃 康水特選/5句】
★梅林に蕾ほころぶ気に満ちて/多田有花
震え上がるほどの寒い日が続いていますがその寒さに耐えながら蕾は何時でも花開く構えが満ち満ちています。見て居ると元気を貰い春が待ちどうしいです。(佃康水)
★地衣纏う桜木立や春初め/小西 宏
探梅に出かけると地衣を纏った桜木立に度々出会います。梅はふっくらと膨らみ開花寸前ですが、桜の花芽は紅の細い蕾を空に向けて居て、桜の時期には未だもう少し時間がかかりそうです。将に春初めですが桜木立の花の時期が待たれます。(佃 康水)
★対岸にクレーンが一基冴え返る/高橋秀之
向う岸で荷の積み下ろしで有ろうか工事中で有ろうか大きなクレーンが一基見えて居る。海や湾の広さ、水の冷たさ、クレーンの高さなど全てがこの寒さを倍増し、将に冴え返るが納得いきます。(佃 康水)
★春雪の竹撓らせて弾ませて/黒谷光子
先日、バスを待っていて御句のその情景に出会いました。竹笹に積もった雪で撓っていましたが突然雪が落ち、そのバンドで竹が弾んだ様に起き上がりました。一瞬の情景を活き活きと詠まれたと思います。(佃 康水)
★朝空へ花芽の紅き並木道/川名ますみ
外に出ると先ずは空や周りの木々を眺めます。美しい朝の空に紅の花芽の並木道がずっと続いている。朝空 花芽 紅 並木道 全てがひた向きに、前向きに春を待っていらっしゃる作者の優しさが見える様です。(佃 康水)
【入選/11句】
★朝の雨宿して梅の開き初む/多田有花
梅の花が開き始めました。その梅には明け方まで残っていたであろう雨の滴がまだ残っています。春の初めの一こまが感じられます。(高橋秀之)
★春耕や引き抜く草の根の強し/古田敬二
春になり新しく耕すために草の根を引こうとするが、その根もしっかりと張っている。春になり草も元気が強くなっていることを感じます。(高橋秀之)
★夕日差す春と思わば柔らかし/祝恵子
夕日は春夏秋冬いずれの季節でも差し込みますが、春の日はほかの季節と比べて柔らかく感じる作者の気持ちが、ストレートに嬉しさを感じさせてくれます。(高橋秀之)
★利根川の濁り初めるや蕗の薹/小口泰與
利根の濁りは春の色なのでしょう。そのかたわらで蕗の薹が出始めました。自然のすべてが春の中へと目覚めていくさま、その喜びを敏感に詠われています。(多田有花)
★秩父嶺をはるか連ねて木の芽風/小川和子
風に春の兆しを感じ取られたのでしょう。見上げれば秩父連峰にさす日差しも何か春めいて見えます。(多田有花)
★働く灯ビルに重ねて春立ちぬ/今村征一
都会の立春です。高層ビルが林立する大都会にも春はやってきてました。もっとも季節から遠く存在しているようなビルの中にあえて春立つ日の景色を詠まれたのがユニークです。(多田有花)
★大空に膨らみ確と桜の芽/津本けい
暦の上では春、とは言えまだまだ寒さがきびしい中、桜の木は確実に芽を膨らませていますね。「大空に」がいいです。(小川和子)
★雪溶けるリズムよき音耳安し/黒谷光子
★枯芝にはや草しかと芽を出せり/足立弘
★春禽の声空に満ち鄙の宿/河野啓一
★一木を雨滴きらめかせ山椿/藤田裕子
▼コメントのない句にコメントをお願いします。