会計ニュース・コレクター(小石川経理研究所)

検証東芝危機 不正の温床(4)あらゆる手で黒字に固執 監査法人、機能せず(日経より)

検証東芝危機 不正の温床(4)あらゆる手で黒字に固執 監査法人、機能せず(記事冒頭のみ)

日経で東芝粉飾事件に関する連載をやっていましたが、最終回は監査法人を取り上げています。

「13年秋。パソコン部門が悪用した「バイセル取引」を解消しようと、社内調査を進めた元幹部は絶句した。新日本には事業の実績データが毎月渡っていたが、チェック機能が働いた形跡はない。「期末の利益が多いのは慣例のコスト削減の成果です」「今期は数字が大きいですが、そんなものですか」。こうした緩いやり取りが両社の間で続いたという。

見えてきたのは監査法人の限界だ。監査法人にとって東芝は年間10億円超の監査手数料を得られる最重要顧客だ。東芝の立場は強くなりやすい。「なぜ必要なのか」。監査法人が詳細な会計情報を求めても、窓口の東芝担当者から逆に問い詰められることも多かったという。数十人規模で送り込まれた会計のプロも目が曇った。」

会社側も驚くほど、監査が甘かったということでしょうか。力関係からそうせざるを得なかったのかもしれませんが。

そうはいっても、ウエスチングハウスに関しては会社も神経を使っていたようです。

「買収に6千億円を投じた米原子力子会社ウエスチングハウス(WH)。14年初め、東日本大震災などで苦境に陥ったWHは、減損を計上する考えを東芝に伝えてきた。しかし、東芝は減損を回避させるため工事費用の見積額を引き下げるようWHに指示したとされる。

「コンサルの情報では、東芝が圧力をかけてくるとWHが言っているそうだ」「その事実が監査法人に伝わった瞬間にアウトになる」。14年3月、電力事業部の幹部陣に一斉メールが送られ、緊張が走った。監査法人は気づいているのか。本当に減損は必要なのか。東芝は外部のコンサルに調査を依頼し、監査法人の目をかいくぐろうとしていた。」

このコンサルも実名を出してもらわないと、新日本には不公平でしょう。

連載の全体を見ると、これといって新しい情報はなかったようです。一応、日経も「不適切」会計ではなく、「不正」だとあらためて認めたという意味はあるのでしょう。

しかし、新監査人が指摘した6千億円粉飾疑惑にまったくふれていないのが、日経らしいといえます。

不正の温床(3)日立超え・財界総理 渇望 歴代社長、功名争い(日経)(記事冒頭のみ)

「財界総理、そして日立超え。名門復権への執着が行き過ぎた当期利益至上主義を生み、不正会計の一因となった。歴代社長同士のライバル意識もこれに輪をかけた。虚飾の構図は約10年にわたり隠し通された。」

不正の温床(2)そしてイエスマンだけに 報復人事恐れ感覚マヒ(日経)(記事冒頭のみ)

「08年度から7年間続いたとされる不正会計。損失の先送りや利益水増しに疑問を感じた幹部もいた。だが、反論は許されなかった。多くの幹部は抵抗もできずに不正を胸にしまいこんだ。

12年12月。財務部門トップの久保誠は、不正のウミを一掃するための「裏中計」を佐々木に提案した。正規の中期経営計画と異なる秘密裏の計画には、パソコンやテレビ事業で累積した利益のかさ上げ分を損失処理し、事業リストラも進める抜本策がまとめられていた。だが、内容を見た佐々木は「破滅主義。大学教授の理屈だ」と一蹴。正常化への願いは打ち消された。結局、久保は15年7月に引責辞任した。」

このCFOは東芝の中では良識派なのでしょうが、外から見れば、粉飾を隠蔽しようとしていたとしかいえません。経理・財務のプロとしての倫理観が不足していたのでしょう。社外取締役に通報するなど、いくらでも方法はあったのでは。

不正の温床(1)「社長お預け」から始まった 成果に焦り 利益かさ上げ (日経)(記事冒頭のみ)

「15年に発覚した東芝の会計不祥事。第三者委員会が300ページに及ぶ調査報告書をまとめ、全容は解明したかにみえたが、大きな謎も残った。不正はいつ始まったのか。報告書には今も関係者の間で物議を醸す文言がある。「バイセル取引は04年から始まった」。悪用すれば不正会計の手口となる、PCなどの生産委託先との取引手法だ。」

ということは、監査人は2004年からこの取引の会計処理を検討するチャンスがあったわけですが...。

粉飾決算 ―問われる監査と内部統制粉飾決算 ―問われる監査と内部統制
浜田 康

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