IASBが財務諸表における気候関連及びその他の不確実性の報告を改善するための設例を提案
国際会計基準審議会(IASB)が、2024年7月31日、気候関連などの影響をどのように報告するのかについての8つの設例を提案したというプレスリリース(ASBJによる日本語訳)。
「利害関係者は、財務諸表における気候関連の不確実性に関する情報が不十分であったり財務諸表の外で提供されている情報と不整合に見えたりする場合があることを懸念している。これらの懸念に対応するため、IASBが提案している設例は次のことを目的としている。
- 財務諸表における情報の透明性を改善する。
- 財務諸表と企業の報告のその他の部分(サステナビリティ開示など)との間のつながりを強化する。
8つの設例は、重要性の判断、仮定及び見積りの不確実性に関する開示、並びに情報の分解などの領域に焦点を当てている。これらの設例で例示されている原則及び要求事項は、気候関連の不確実性以外の他の種類の不確実性にも同様に適用される。」
「これらの設例は、IFRS会計基準における要求事項を追加するものでも変更するものでもない。」
設例のリスト(公開草案より)。括弧内は関連する会計基準。
例として、最初の設例をみてみると...
これのグーグル翻訳。
「当該企業は資本集約型産業で事業を展開する製造業者であり、気候関連の移行リスクにさらされています。これらのリスクを管理するために、当該企業は気候関連の移行計画を策定しました。当該企業は、今後 10 年間に温室効果ガスの排出量を削減する計画に関する詳細な情報を含め、計画に関する情報を財務諸表以外の一般目的の財務報告書で開示しています。当該企業は、今後、よりエネルギー効率の高い技術に投資し、原材料や製造方法を変更することで、これらの排出量を削減する計画であると説明しています。当該企業は、一般目的の財務報告書で気候関連の移行リスクに関するその他の情報を開示していません。」
こういう事例に対して、既存のIFRS基準の規定をあてはめていくと、どのような開示(注記)が必要なのか、あるいは必要でないのか、などを検討するものとなっているようです。会計処理にもふれていますが、この設例では、追加の会計処理は不要という前提(そもそも定量的な設例ではない)で、開示について議論しているようです。
日本基準でも、「会計上の見積りの開示に関する会計基準」(「IAS 第 1 号」の規定を取り入れたもの)のような、重要な見積りについて、追加開示させる会計基準があります。また、財務諸表外(サステナ情報など)で、気候変動に関する戦略などを開示するようになっていて、財務諸表との整合性も問われるようになるでしょう。日本基準に全く無関係というわけでもなさそうです。
そのうち、公開草案の正確な翻訳がASBJから出ると思いますので、詳しくはそちらを参照してください。