会計ニュース・コレクター(小石川経理研究所)

「金融検査・監督の考え方と進め方(検査・監督基本方針)」公表(金融庁)

「金融検査・監督の考え方と進め方(検査・監督基本方針)」(案)へのパブリックコメントの結果等について

金融庁は、「金融検査・監督の考え方と進め方(検査・監督基本方針)」を、2018年6月29日に公表しました。

「検査マニュアル」に関する部分より。

1998 年、大蔵省の決算経理基準通達が廃止されて金融機関にも一般の会計基準が適用されることとなり、また、債権償却証明制度を中心とした償却・引当から自己査定を中心とした償却・引当への転換がなされた。1999 年に発出された検査マニュアルの別表は、延滞や貸出条件変更の有無、担保・保証の有無等の外形的な基準を中心に用いて、債権をⅠからⅣに分類するよう求めた。これは、金融機関に自己査定の態勢が整っていない状況の下で、十分なデータの蓄積がない場合にも用い得る一定の簡便法を示したものと考えることができる。別表は、特別検査の実施とも相まって、自己査定、償却・引当に関する最低限の実務を確立する上で大きな役割を果たしたと考えられる。」

(その後の考え方の変化が書かれています。)

「以上に鑑み、検査マニュアルは、別表も含め、廃止することとする。検査マニュアルの廃止は、別表の廃止も含め、これまでに定着した金融機関の実務を否定するものではなく、金融機関が現状の実務を出発点により良い実務に向けた創意工夫を進めやすくするためのものであるが、実務での誤解や戸惑い、混乱の生じないよう、準備期間を設けることとし、廃止の時期は平成 30 年度終了後(平成 31 年 4 月 1 日以降)を目途とする。

今後、廃止に向け、以下のような準備を進めていく。

- 健全性政策(金融システムの安定を目標とする政策)やコンプライアンス・リスク管理について、後述の分野別の「考え方と進め方」を用いて幅広い関係者と対話を進め、新しい検査・監督についての理解を共有する。

- 資産分類と償却・引当について、現状の実務を出発点に、今後の改善の道筋としてどのようなことが考えられるか、金融機関、公認会計士、有識者等との検討を進め、結果を分野別の「考え方と進め方」にとりまとめた上で、幅広い関係者との対話を更に行う。

- 検査マニュアルの廃止に伴い、法令の適用・解釈の明確化等の面で実務上の支障が生じる場合には、監督指針の修正等により対応を図る。」

コメントの概要及びそれに対する金融庁の考え方(項目別回答版)」より、会計に関係しそうな箇所。(○が金融庁の回答)

「資産分類・償却・引当に関する別表の廃止のスケジュール感を教えてほしい。また、検査マニュアル廃止後の考え方等の適用については十分な準備期間を確保してほしい。」

○ 検査マニュアルの別表の廃止は、これまでに定着してきた実務を否定するものではなく、金融機関が現状の実務を出発点により良い実務に向けた創意工夫を進めやすくするためのものです。

○ そのため、検査マニュアルの別表が廃止されたとしても、これにより金融機関において、従来の自己査定や償却・引当に関する実務が否定されるものではなく、これらに関する内部規程やシステムの変更が求められるものでもありません。

○ また、資産分類や償却・引当に関する金融機関の創意工夫をより進めやすくしていくため、今後、金融機関の規模・特性に応じた対応のあり方も含め、現状の実務を出発点とした今後の改善の道筋としてどのようなものが考えられるか、議論のための材料であることを明示した文書(ディスカッション・ペーパー)等を用いて関係者と議論を深め、検討を進めていきます。

○ こうした考え方が広く関係者間で共有され、実務での誤解や戸惑い、混乱の生じないよう、検査マニュアルの廃止時期については、平成 31 年4月1日以降としています。

○ なお、別表の廃止に伴い実務上の支障が生じる場合には、監督指針等において明確化を図ることを検討します。

「投資家への開示の正確性や、金融機関間での比較可能性をどう確保するのか。」

○ 償却・引当の全体的な水準の見積りが実態に応じた信頼性を有するものであることは重要であり、実態に応じて償却・引当額を算定するためには、各金融機関がその業務や方針、顧客の特性に基づいて、将来の貸倒損失についてより的確な見積りを行うことが望ましいと考えられます。

○ なお、こうした金融機関ごとの手法について、金融機関が幅広い関係者にどのように説明していくかは課題の1つです。また、財務諸表の比較可能性を担保することも重要であると認識しています。今後、関係者との意見交換や研究会の場を通じて検討を進めていきます。

「資産分類・償却・引当に関する検討を含め、今後の検査・監督において、会計士協会や企業会計基準委員会とよく連携してもらいたい。」

○ 今後、日本公認会計士協会や企業会計基準委員会、金融業界等の関係者との意見交換や研究会の場を通じて議論を深め、一層連携していきます。

「別表の廃止に伴い、既に実務に浸透している会計上の取扱い(例えば、予想損失額見積期間(いわゆる1-3年基準)や DCF 法)の取扱いはどうなるのか。」

○ 検査マニュアルの別表の廃止は、現状の実務を否定するものではなく、金融機関が現状の実務を出発点により良い実務に向けた創意工夫を進めやすくするためのものです。

○ ご指摘の点を含めた、金融機関の規模・特性に応じた償却・引当のあり方について、現状の実務を出発点に、今後の改善の道筋について、関係者との意見交換や研究会の場を通じて議論を深め、検討を進めていきます。

会計ビッグバンが、金融機関の自己資本水増しのための税効果会計から始まったことからも明らかなように、銀行監督は会計基準・実務に大きな影響を与えてきましたが、それも変わっていくのでしょう。もちろん、貸倒引当金などをまったくチェックしないということはないと思いますが...。
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