会計ニュース・コレクター(小石川経理研究所)

従業員が対価払う株式購入権 報酬か投資か議論熱く(日経より)

従業員が対価払う株式購入権 報酬か投資か議論熱く(記事冒頭のみ)

(10月の記事なのでかなり古くなってしまいましたが)ASBJで検討している有償ストックオプションの会計処理基準が、反対が多くてもめているという記事。

「従業員が事前に対価を払う有償ストックオプション(株式購入権)は「報酬」か、それとも「投資」なのか。明確なルールが無かった会計上の扱いを巡って激しい議論が起きている。報酬と見なされて人件費の扱いになれば、企業は費用負担を迫られる。新興企業を中心に業績に影響が出る可能性もある。」

「草案に対して過去最高とみられる253件のコメントが寄せられ、8割が反対だった。」

多くの反対コメントが寄せられたということは、会計基準のすきまを放置していたために、そこに多くのほこりやだにが溜まってしまったということでしょう。年内には、確定基準の公表までもっていって、ほこりやだにを一掃してほしかったと思いますが、ASBJのサイトを見ると、まだ、大量のコメントへの対応に追われて、作業が進んでいないように感じられます。

「報酬」か「投資」という問題の立て方もおかしいと思います。企業は役員や従業員などから企業に対して提供された「資金+役務」の対価として新株予約権を交付しているわけですから、企業から見れば、新株予約権は資金部分を除いて役務提供の報酬でしょうし、役員・従業員から見れば、報酬の対価を新株予約権という投資資産で受け取ったということになります。つまり、企業から見れば報酬、役員・従業員から見れば(報酬として受け取った)投資ということでしょう。どちらかという話ではないはずです。

そもそも、もし新株予約権が報酬でないとしたら、なぜ時価より低い値段でそれを交付するのでしょう。もし、報酬でない(つまり役務提供などがなかった)のに、時価より安く新株予約権を交付したとしたら、それは会社に対する背任行為でしょう。

ストックオプションの会計は、費用計上されずに(つまり株主によくわからない形で)株主持分の価値の一部が、役員や従業員に流出してしまわないようにというのが、その目的でしょう。その意味からは、当然、ASBJの案のように費用計上すべきです。

実際のコメントはこちら。

実務対応報告公開草案第52号「従業員等に対して権利確定条件付き有償新株予約権を付与する取引に関する取扱い(案)」等に寄せられたコメント(企業会計基準委員会)

コメント提出者の中の、カタカナあるいはアルファベットの社名の会社の割合が非常に高いように感じられます。

これもひどい記事です。企業は雑誌の取材源でもあり広告主でもあるので、その意向に引きずられるのでしょう。トーマツがどうのこうのというのは本質的な話ではありません。

会計基準草案が“炎上”
ちらつくトーマツの思惑
日本の企業会計基準をつかさどる総本山が今、大きく揺れている。
(東洋経済)(記事前半のみ)
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