会計ニュース・コレクター(小石川経理研究所)

仮想通貨でベンチャーが資金調達 海外では持ち逃げ増加(朝日より)

仮想通貨でベンチャーが資金調達 海外では持ち逃げ増加

「イニシャル・コイン・オファリング(ICO)」を取り上げた記事。ICOで多額の資金を集めた例を紹介しています。

「資金調達に使ったのがICOだ。新株にあたる「トークン」と呼ばれる電子的な証票を投資家らに仮想通貨で買ってもらう。企業は仮想通貨を円やドルなどに換金して事業に使う。投資家は企業のサービスを割安に受けられるなどのメリットがある。

安さんらは今夏に事業計画をネットで公表し、投資家からの質問に応じた。9月からの1カ月で約100カ国から4・3億円が集まった。「実績や資金がなくてもビジネスを始められる。日本のベンチャーに勇気を与えられたのでは」と安さんは語る。

ネットでお金を集める「クラウドファンディング(CF)」に似ているが、仮想通貨によるICOは、世界中から低コストで送金でき、国境を越えてお金を集めやすいメリットがある。株式上場に比べると、規制がなく、間に入る証券会社に払うコストもない。ICOですでに100億円超を調達した例も出ている。」

こういうのを見ると、すぐに会計処理を考えてみたくなりますが、投資家に対してサービス提供の約束をしているのであれば、一種の前受金でしょうから負債となります(その金額をどう決めるるかという問題はありますが)。投資家が特に見返りを求めない、社会的意義がある事業だから応援する意味で仮想通貨を拠出したということであれば、カネを集めた方は受贈益(使途が決められている場合は実際に使われるまで預り金)でしょう(それともトークンの発行益とみるか)。拠出した方も、条件に応じた会計処理となります(あるいは、将来のサービスに対する前払金ではなく受け取ったトークンの資産価値に着目した会計処理とするか)。前払金とする場合、その金額に見合うだけのサービスやモノが獲得できるのか、毎期チェックする必要があるでしょう。

なお、ASBJの仮想通貨会計処理案では、ICOについてはふれていないようです。へたに基準を作ると、取引自体が公認されたものと誤解されるおそれがあるので、慎重な方がよいのかもしれません。

記事では、ICOのリスク(投資家にとっての)についてもふれています。

「プロジェクトが実施されなかったり、商品やサービスが提供されなかったりするリスクがあります――。

 金融庁は10月末、ICO取引に注意を促す文書を公表した。集めたお金を持ち逃げする例が海外で増え、国内でも懸念が出ている。ICOを検討する企業には、「刑事罰の対象になる場合がある」と警告した。

 米調査会社チェーンアリシスによると、仮想通貨イーサリアムを使うICOで今年調達された16億ドル(1792億円)のうち、1割にあたる1・5億ドル(168億円)の行方が分からないという。

中国や韓国の金融当局はICOの全面的な禁止を決定。米証券取引委員会は、詐欺の疑いのあるICOの告発を始めた。英金融当局は「全損の覚悟を」と投資家に警告した。」

投資家にとっては、はじめから寄付のつもりならともかく、ほとんどメリットがないように思われます。

こちらの解説記事はもっと厳しい見方をしています。

仮想通貨は“錬金術”にあらず
ICOによる資金調達が普及しない3つの理由
(日経ビジネス)

当サイトの関連記事(金融庁による注意喚起について)

タレント「GACKT」が仮想通貨ICO参入も問題続発、フィンテックバブルはどうなるのか(Yahoo)

「現在乱立している仮想通貨交換業者も、金融庁への登録こそ済ませているものの、実情は顧客の売買を自社内で相対取引をさせて消し込んでしまう「ノミ行為」や、実質的な決済未執行状態にもかかわらず顧客に不利なレートで取引が成立したと嘘の決済報告をする「タタキ」や「握り」といった、古式ゆかしい証券詐欺を堂々と行っている業者すらもいます。」

黒田総裁、ビットコインは「異常な高騰」「投機対象化」(朝日)
名前:
コメント:

※文字化け等の原因になりますので顔文字の投稿はお控えください。

コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

 

  • Xでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

最近の「企業会計」カテゴリーもっと見る

最近の記事
バックナンバー
人気記事