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「時価の算定に関する会計基準」等の公表(企業会計基準委員会)

企業会計基準第30号「時価の算定に関する会計基準」等の公表

企業会計基準委員会は、企業会計基準第30号「時価の算定に関する会計基準」と同適用指針(第31号)を、2019年7月4日付で公表しました。

関連するその他の基準・指針(金融商品会計基準など)の改正もあわせて公表しています。

IFRS 第 13 号「公正価値測定」を基本的にすべて取り入れるという方針に基づき、時価算定の詳細なガイダンスを定めたものです。我が国における他の関連諸法規において時価という用語が広く用いられていること等を配慮し、「公正価値」ではなく「時価」という用語を用いています。

基準等の概要は以下のとおり(項番号は特に記載がない限り時価算定会計基準)。

1.範囲(次の項目の時価に適用)(3項)

・金融商品(「金融商品に関する会計基準」)
・トレーディング目的で保有する棚卸資産(「棚卸資産の評価に関する会計基準」)

2.時価の定義(5項)

・「時価」とは、算定日において市場参加者間で秩序ある取引が行われると想定した場合の、当該取引における資産の売却によって受け取る価格又は負債の移転のために支払う価格をいう。

(「市場参加者」「秩序ある取引」は、4項で定義されている。)

・現行の金融商品会計基準におけるその他有価証券の期末の貸借対照表価額に期末前 1 か月の市場価格の平均に基づいて算定された価額を用いることができる定めについては、削除(金融商品会計基準50-4項)

3.時価の算定単位

・時価を算定する単位は、それぞれの対象となる資産又は負債に適用される会計処理又は開示による(6項)。

・金融資産及び金融負債のグループを単位とした時価を算定することができる例外が、定められている(7項)。

4.時価の算定方法

(1)評価技法(8~10項)

・時価の算定にあたっては、状況に応じて、十分なデータが利用できる評価技法(そのアプローチとして、例えば、マーケット・アプローチやインカム・アプローチがある。)を用いる。評価技法を用いるにあたっては、関連性のある観察可能なインプットを最大限利用し、観察できないインプットの利用を最小限にする。

・時価の算定にあたって複数の評価技法を用いる場合には、複数の評価技法に基づく結果を踏まえた合理的な範囲を考慮して、時価を最もよく表す結果を決定する。

・時価の算定に用いる評価技法は、毎期継続して適用する。当該評価技法又はその適用(例えば、複数の評価技法を用いる場合のウェイト付けや、評価技法への調整)を変更する場合は、会計上の見積りの変更として処理する。この場合、変更の旨及び変更の理由を注記する。

(2)インプット(4項、11項)

・「インプット」とは、市場参加者が資産又は負債の時価を算定する際に用いる仮定(時価の算定に固有のリスクに関する仮定を含む)をいう。相場価格を調整せずに時価として用いる場合における当該相場価格も含まれる。

・時価の算定に用いるインプットは、次の順に優先的に使用する。

1) レベル 1 のインプット

・時価の算定日において、企業が入手できる活発な市場における同一の資産又は負債に関する相場価格であり調整されていないものをいう。当該価格は、時価の最適な根拠を提供するものであり、当該価格が利用できる場合には、原則として、当該価格を調整せずに時価の算定に使用する。

2) レベル 2 のインプット

・資産又は負債について直接又は間接的に観察可能なインプットのうち、レベル 1 のインプット以外のインプットをいう。

3) レベル 3 のインプット

・資産又は負債について観察できないインプットをいう。関連性のある観察可能なインプットが入手できない場合に用いる。

(「観察可能なインプット」:入手できる観察可能な市場データに基づくインプット
「観察できないインプット」:観察可能な市場データではないが、入手できる最良の情報に基づくインプット)

(3)資産又は負債の取引の数量又は頻度が著しく低下している場合等(13項)

・取引価格又は相場価格が時価を表しているかどうかについて評価し、当該取引価格又は相場価格が時価を表していないと判断する場合(取引が秩序ある取引ではないと判断する場合を含む。)、当該取引価格又は相場価格を時価を算定する基礎として用いる際には、当該取引価格又は相場価格について、市場参加者が資産又は負債のキャッシュ・フローに固有の不確実性に対する対価として求めるリスク・プレミアムに関する調整を行う。

(4)負債又は払込資本を増加させる金融商品の時価(14、15項)

・負債又は払込資本を増加させる金融商品(例えば、企業結合の対価として発行される株式)については、時価の算定日に市場参加者に移転されるものと仮定して、時価を算定する。

・負債の時価の算定にあたっては、負債の不履行リスクの影響を反映する。

5.その他の取扱い(時価算定適用指針第 24 項)

・第三者から入手した相場価格の利用について、一定の場合、例外的扱いを認めている。

6.市場価格のない株式等の取扱い(金融商品会計基準第 19 項及び第 81-2 項)

時価を把握することが極めて困難な有価証券の記載を削除

・ただし、市場価格のない株式等に関しては、従来の考え方を踏襲し、引き続き取得原価をもって貸借対照表価額とする取扱いとした。

7.開示(金融商品会計基準第 40-2 項、金融商品時価開示適用指針第 5-2 項、四半期適用指針第 80 項)

・基本的には IFRS 第 13 号の開示項目との整合性を図っているが、一部の開示項目についてはコストと便益を考慮して採り入れていない。

2021年 4 月 1 日以後開始する年度の期首から適用ですが(1年早期適用可)、2020年3 月 31 日以後終了する年度の期末から適用することもできます。

また、適用初年度は、本会計基準が定める新たな会計方針を将来にわたって適用します(変更の内容について注記)。

ただし、遡及適用することができる場合も定められています。

開示に関しては、経過措置が定められています。

従来の実務対応報告第 25 号「金融資産の時価の算定に関する実務上の取扱い」は廃止となります(21項)。

インプット、評価技法、時価の関係や、インプットと時価のレベル分類は、この図のようなイメージです(ASBJ資料より)。



相場価格をそのまま時価とする方法も、「評価技法」となります。

「時価の算定に関する会計基準」等のポイント(新日本監査法人)
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