会計ニュース・コレクター(小石川経理研究所)

“証券会社元社員らに150億円”(NHKより)

“証券会社元社員らに150億円”

オリンパスの粉飾事件で、証券会社の元社員らが当時の経営陣に不正の手口を指南するなどして150億円に上る報酬や手数料を受け取っていたという記事。

「関係者によりますと、こうした手口(注:「飛ばし」)は、山田元監査役らから相談を受けて3人の証券会社元社員が指南したということで、3人は損失の受け皿になるファンドを海外に設立するなど、直接、損失隠しに関わったということです。さらに3人は、その後、損失の穴埋め工作にも関わっていました。このうち2人が、イギリス企業の買収を仲介し、巨額の手数料を受け取ったように見せかけて632億円を捻出したほか、1人は国内3社の買収費を水増しすることを提案して716億円を捻出し、いずれもオリンパスの損失を消す費用に使われていました。こうしたさまざまな工作の報酬や手数料として、オリンパスからは、証券会社元社員などに合わせて150億円が支払われたということです。」

会社側は弱みを握られているので、報酬を値切るわけにはいかなかったのでしょう。

こちらの記事によると、オリンパスは「ファンドへの損失飛ばしに関与するなどした大手証券会社元社員側や外国銀行元行員側などに計72億円の手数料が支払われていたと認定し、返還請求を検討している」そうです。

オリンパス70億返還請求へ、元証券会社員らに(読売)

オリンパスの訂正報告書(2011年3月期)によれば、このような報酬は長期未収入金に計上しているようです。

「貸倒引当金のうち7,211百万円は連結の範囲に記載のあるファンドに関連した支払手数料のうち過大なものとして投資その他の資産の「その他」に計上された長期未収入金7,211百万円に対する回収不能見込額であります。なお、当該支払手数料は、複数のファンドの外部協力者に支払われたものですが、合意されたものではないため当社はファンドの外部協力者に対して請求を行う予定です。」

法律的に、現時点で粉飾協力者に対する請求権が存在する(資産性がある)のかどうかは、わかりませんが、全額引き当てることによって、財政状態に影響しないようにはしているのでしょう。

資産性の疑わしい資産をいったん計上したうえで全額引き当てるというやり方は、税効果会計でも行っています。

(繰延税金資産及び繰延税金負債の発生の主な原因別の内訳より)(2011年3月期)

「上記には金融資産の損失の分離および解消に係る処理を訂正したことにより発生したものが含まれていますが、訂正報告書提出日現在において、法人税の取り扱いが未確定であり、一時差異として取り扱われるか否か不明です。なお、当該一時差異については、全額評価性引当額を計上しています。」

一時差異に該当するかどうかわからない項目について、繰延税金資産を計上することはできないはずですが、その判断を行わないで、全額引き当てるというのは一種の便法でしょう。このままでは、会社の収益力が上がれば回収できるというように誤解を受ける可能性があるので、早急に税務上の扱いを明確にすべきでしょう。

それにしても、オリンパスは、この粉飾によって、法外な手数料だけでなく、税金の面でも大損しています。

仮に投資損失が1000億円として、それを10年前に表に出していれば、税務上も損金になった可能性は高く、その場合には、税率40%として400億円は税金の節約として回収できたはずです(オリンパスは本業ではそれなりに利益を出していたようなので)。つまり、差し引き約600億円の損失で済んでいたことでしょう。

しかし、粉飾を行ったことにより、損失が1300億円超に膨れ上がっただけでなく、その解消のための資金を、水増しされた買収価格やアドバイザリー報酬に含めて支払った(税務上は寄付金とされるおそれがある)ため、税務上はまったく損金にできないかもしれません。結局、税引後でみると、600億円の損失が1300億円超になってしまった(おそれがある)というわけです。

特別リポート・オリンパスの誤算:損失隠ぺいのツケ、見えない再生への道筋(ロイター)
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