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過年度有価証券報告書等の訂正報告書の提出および過年度決算短信訂正に関するお知らせ(西川ゴム工業)

過年度有価証券報告書等の訂正報告書の提出および過年度決算短信訂正に関するお知らせ(PDFファイル)

西川ゴム工業(東証スタンダード)のプレスリリース(2024年8月26日)。

メキシコ子会社における棚卸資産をめぐる疑義について、社内調査結果(不正ではなく誤謬なのだそうです)などを、すでに開示していますが(→当サイトの関連記事)、それに関連して、8月26日に「有価証券報告書等の訂正報告書を中国財務局へ提出するとともに、過年度決算短信の訂正を行いました」とのことです。

「当社は、2024 年5月 29 日に適時開示しました「当社連結子会社における棚卸資産の計算等に関する調査のお知らせ」および同年6月 25 日付「当社連結子会社における棚卸資産の計算等に関する調査の進捗及び 2024 年3月期有価証券報告書の提出期限延長申請の検討に関するお知らせ」にてお知らせしましたとおり、当社の連結子会社(ニシカワ・シーリング・システムズ・メキシコ S.A. DE C.V.)(以下、「本件子会社」といいます。)において棚卸資産の計算等に関して疑義のある事象(以下、「本件」といいます。)が存することが判明したことを受け、社内調査を行っておりました。

社内調査の結果、同年8月 16 日付「当社連結子会社における棚卸資産の計算等に関する調査結果及び再発防止策の策定に関するお知らせ」にて記載のとおり、本件子会社およびその他の子会社1社において過年度より棚卸資産の残高が過大に計上されていたことが判明したため、調査結果を踏まえ、過年度の決算を訂正することといたしました。」

これとは別に、環境対策引当金というのを2024年3月期に計上したそうです。また、調査費用等も引当てしたそうです。

「また、本日付「特別損失(環境対策引当金繰入額および特別調査費用引当金繰入額)の計上に関するお知らせ」に記載のとおり、2024 年3月期末の連結決算および個別決算において、本件の調査費用等に関する特別調査費用引当金繰入額および当社工場の土壌の入替等に伴い発生が見込まれる額としての環境対策引当金繰入額を特別損失として計上することといたしました。」

2023 年3月期の有報、2023 年3月期と2024年3月期の四半期報告書の訂正報告書を提出したそうです。決算短信は、これらの期のもののほか、2024年3月期本決算の決算短信を訂正しています。

本決算の影響額は...(単位:百万円)

四捨五入すると、2023年3月期は約10億円、2024年3月期は約20億円の純資産への影響となります。

同じ日(8月26日)に、遅れていた2024年3月期の有報も提出しています。内部統制報告書は、開示すべき重要な不備ありとなりました。

2024年3月期(第75期)有価証券報告書の提出完了に関するお知らせ(PDFファイル)

第75期有価証券報告書(PDFファイル)

財務報告に係る内部統制の開示すべき重要な不備に関するお知らせ(PDFファイル)

「上記の棚卸資産過大計上の直接的な原因は、本件子会社における棚卸資産の決算処理手続の属人化や在庫管理システムの不十分な運用管理等にありますが、当社による本件子会社の管理体制にも不十分な点がありました。具体的には下記の内部統制の不備があったと認識しております。

(全社的な内部統制における開示すべき重要な不備)

(1) 本件子会社において、棚卸資産に関連する決算処理につき、内部統制の構築が不十分であり、業務が一部属人化していました。
(2) 当社の管理統括本部内におけるグローバル経営戦略本部において、各連結子会社の決算体制につきモニタリングは実施していたものの、業務の引継ぎの状況や親会社からの支援の要否について十分な検討ができておらず、また、関連部署への情報伝達が十分に行われていませんでした。
(3) 本件子会社において使用されている在庫管理システムの仕様に関する理解が不十分であり、棚卸資産の単価に与える影響が把握されておらず、在庫管理システムの運用管理が十分に機能していない状況でした。

(決算・財務報告プロセスにおける開示すべき重要な不備)

(1) 本件子会社における棚卸資産に関連する決算処理につき、業務手順書、マニュアルの整備が不十分であり、また担当者の交代に際して十分な引継ぎもできていませんでした。
(2) 棚卸資産の残高明細表の合計金額と試算表残高を照合し、差異に関する調査がなされるべきところ、両者に差異が発生しているにもかかわらず、十分な調査がされていませんでした。
(3) 上位者や他担当者による残高明細表内において異常な項目を検知する手続および残高明細表の合計金額と試算表残高の整合性の検討や、差異調整をする際の決算整理仕訳の査閲が求められるべきところ、これらの手続きが適切に実施されていませんでした。
(4) 本件子会社における決算数値の比較分析により異常値を発見すべきところ、実施された決算数値の比較分析に不十分な点があり、異常な数値の推移を十分に捕捉できる運用になっていませんでした。
(5) 当社による連結子会社の財務諸表数値の分析により異常値を発見すべきところ、分析方法に関するマニュアルが不十分であり、モニタリングが十分に実施できていませんでした。」

2024年3月期に追加で計上した引当金について、プレスリリースを出しています。

特別損失(環境対策引当金繰入額および特別調査費用引当金繰入額)の計上に関するお知らせ(PDFファイル)

「1.環境対策引当金繰入額の内容

当社は、当社工場における土壌の入替等に伴い発生が見込まれる額として、2024 年3月期第4四半期の連結決算および個別決算において、環境対策引当金繰入額 510 百万円を特別損失に計上いたしました。

2.特別調査費用引当金繰入額の内容

当社は、連結海外子会社(メキシコ現地法人)であるニシカワ・シーリング・システムズ・メキシコ S.A. DE C.V.において、棚卸資産の計算等に関して疑義のある事象が存することが判明したことを受けた調査費用等に関し、2024 年3月期第4四半期の連結決算および個別決算において、特別調査費用引当金繰入額 300 百万円を特別損失に計上いたしました。」

環境対策引当金については、なぜ、以前の期ではなく、2024年3月期に計上したのかがよくわかりません。土壌を入れ替えるということは、土壌汚染か何かがあったのでしょうか。そうだとすると、2024年3月期に急に発生した事象ではないように思われるのですが...。土壌汚染は以前からあったが、土壌入れ替えは、決算作業中に決定されたので引当てしたということなのでしょうか。

特別調査費用引当金については、前にも書きましたが、調査自体は決算日後に行われていて、報告書がまとめられ経営者や外部に開示された後の経営のプラスになる支出でしょうから、わざわざ引当てする必要はないようにも思われます。また、調査費用は、対象となった年度に遡って計上するというのであれば、一部は2023年4月期にも計上すべきということになります。いずれにしても、こういう特別な調査費用の会計慣行がどうなっているのか、気になるところです。

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