風来坊参男坊

思い付くまま、気が向くまま、記述する雑文。好奇心は若さの秘訣。退屈なら屁理屈が心の良薬。

尺貫法が日本の尺度 

2008年10月23日 19時51分12秒 | 随想

立呼び出し 小鉄が謡うような節回しで呼び上げる。

「ひがし~い とちにしき~~い とちにしき~~い にいし~~い わかのはな~~あ わかのはな~~あ」

紫色装束の立行司木村庄之助が独特な語調で結びを告げる。
 
「番数も取り進みましたるところ、かたや栃錦、栃錦~~、こなた若乃花、若乃花~~。この相撲一番にて千秋楽にござりまする~~」

小鉄は箒で土俵を掃き清める時、標準語の場内放送が始まる。

「東方、横綱栃錦、東京都出身春日野部屋、五尺八寸七分、三十五貫。西方、横綱若乃花、青森県弘前市出身二所ノ関部屋、五尺九寸三分、二十八貫。この一番にて千秋楽でございます」

栃錦 清隆は力士にしては小柄であるにもかかわらず廻しを取るとしぶとく寄る、食らいついたら離れない取り口から土俵のマムシと言われた。

土俵の鬼・若乃花 幹士は昭和3年3月16日生まれで血液型はB型。おいらは昭和19年3月16日生まれで血液型はB型。家紋は丸に隅立て四つ目で同じ。親戚かもしれない。

アルプス一万尺 小槍の上で アルペン踊りを さあ踊りましょ。箱根八里は馬でも越すが、越すに越されぬ大井川。土俵は十五尺。尺八は虚無僧の笛。ジャイアント馬場の靴は十六文。

昔の日本には尺貫法が有った。木造建築、和裁、酒造、指物の寸法の基準であったが、敗戦後の進駐軍の影響で西洋のメートル法に統一され、尺貫法による商売はお上の法に触れ、犯罪者になる悪法が成立した。永六輔や小沢昭一的心が、職人世界で尺貫法を復活させた。

国際化社会の八百長疑獄の大相撲の場内放送は様変わりである。

「東方、横綱白鵬、モンゴル・ウランバートル出身宮城野部屋。192cm、156kg。西方、横綱朝青龍、モンゴル・ウランバートル出身高砂部屋。184cm、147kg。この一番にて千秋楽でございます」

違和感が有るのである。酒は一合の徳利からお猪口に、妙齢のご婦人にお酌頂き、時間を掛けて嗜むのが日本的である。駅の構内の立ち飲みで180mlを一気飲みして立ち去るのは、西部劇の決闘の場面が想像され恐怖すら覚える。メートル法が日本文化を破壊した。

真の国際化は尺貫法の良さを啓蒙する事なのである。算盤が2進法のパソコン痴呆の治療に役立ち、大海原の魚介類がメタボを駆逐し、お蔭様の心が戦争を終結する。

田舎の草庵の四畳半で、坪庭の木立に囲まれ、時折のししおどし(鹿威し)の音を聞き、涼風に包まれ、ご婦人と一献傾ける情景が瞼に浮かぶ。


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