東照宮は徳川家康を主祭神とする神社で、家康が没した元和2年(1616)の翌年に2代将軍秀忠が遺言に従い日光山に社殿を設け鎮座させたものです。
寛永年間になって家康を熱烈に崇拝する3代将軍家光が、莫大な費用と一流の職人達を投じて社殿を大造営し、世界にも類を見ない華麗な木造建築の粋として、ほぼ現在の規模での完成を見たのです。
陽明門は寛永13年(1636)建立の装飾華美な楼門として、東照宮の建造物中最も著名かつ絢爛豪華な建物で、我が国を代表する木造建築です。
白・黒・金を基調に彩色され、当時の工芸、装飾技術の粋を集めた彫刻が隙間なく施されています。
その見事な彫刻は一日中眺めていても飽きることがないことから「日暮らし門」とも呼ばれています。
五重塔は境内で唯一、大名が奉納した高さ36mの木造建造物です。慶安3年(1650)小浜藩主酒井忠勝のだが焼失し、文政元年(1818)子孫の酒井忠進が再建しました。
内部は吹き抜け、重心が動かないように芯柱は吊り下げそこは浮かすという、耐震や耐風を考えた構造的工夫がなされています。
屋根の構造にも特徴があり、一層から四層目までの垂木は平行(和様)に造られていますが、五層目だけ唐様(禅宗様)で、扇の骨のように放射状になっています。
奥宮への入口にあり、昔から左甚五郎作として、数々の逸話が伝えられています。
例えば、最初は目を開いていたとか、禅の悟りの境地を意味するとか。
猫の彫刻は、東照宮以外の神社・寺院にも見られますが、ほとんどは獲物を狙って殺気をみなぎらせています。
寝ているのは東照宮だけ。なぜ寝ているのか。猫に聞いても答えてくれません。
世界遺産に登録されたのは、二荒山神社、東照宮、輪王寺などの建造物とその境内地からなる「日光の社寺」です。
東照宮の陽明門、大猷院霊廟本殿・相の間・拝殿など国宝9棟と、二荒山神社の神橋など国の重要文化財94棟の計103棟の建造物群に加え、日本の最高の土木建築技術で造営された、東照宮と大猷院霊廟の地割や石垣など、当時の最新の技術によって整備された水道や排水設備など。
さらに老杉で囲まれた自然美と社殿が一体となった、日本を代表する文化的景観を形成している日光山内地域を含むエリアです。
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〔参考文献〕 悠久の杜の中で日光の社寺 下野新聞編集 東照宮再発見 高橋晴俊著 とちぎ学事始 栃木県企画部編集