東京でカラヴァッジョ 日記

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カルピス ー 「杉浦非水 時代をひらくデザイン」展(たばこと塩の博物館)

2021年10月03日 | 展覧会(その他)
杉浦非水   時代をひらくデザイン
2021年9月11日〜11月14日
たばこと塩の博物館
   日本におけるモダンデザインのパイオニアとして知られる杉浦非水(1876~1965年)は愛媛県松山市に生まれました。東京美術学校入学後は円山派の川端玉章に師事して日本画を学んでいましたが、在学中に、フランス帰りの洋画家・黒田清輝がもたらしたアール・ヌーヴォー様式の図案に魅せられたことで、図案家としての道を進むことになりました。 
   非水は明治41年(1908)に三越呉服店の嘱託となり、その後図案部初代主任をつとめ、昭和9年(1934)に退社するまで足かけ27年にわたって同店のポスターやPR誌表紙などのデザインを一手に担いました。三越以外にも、様々な企業のポスターやたばこの「響」「光」といったパッケージなどを手がけ、非水の単なる「宣伝」の枠を超えた図案家としての幅広い活動から生み出された作品の数々は、現在でいう「グラフィックデザイン」の原点といえます。
   本展覧会は4章で構成、非水の故郷にある愛媛県美術館所蔵のコレクションを中心に、ポスター、装丁、雑誌表紙、パッケージデザイン、図案集などの代表作はもちろん、彼の創作の背景を知るためのスケッチ、写真、遺愛の品々もご紹介します。東京美術学校時代の作品から晩年のデザインまで、前後期合わせて約300点を展示し、非水の足跡をたどります。
 
 
   カルピスのポスターに注目する。
 
 
   日本初の乳酸菌飲料「カルピス」が販売されたのは1919年。
   広告事業にも熱心であった創業者は、非水を社の顧問として迎える。
 
 
《美味滋強飲料  カルピス》
壜を抱えるマンモス
1919-23年
「マンモスの昔から幾千年の経験と大正の文明とが生んだ」とは、なんとも大きく出たものだ。
「結核の危険から免れんと望まるる」に時代を感じる。
 
 
《爽快美味滋強飲料  カルピス》
小壜3本を鼻から吊り下げるゾウ
「コビン一ポン 二十セン
   コップニ タップリ 三バイブン」
 
 
《「カルピス」発売70周年記念復刻版  化粧箱付壜》
1989年(1919年発売当時のデザインがモデル)
   化粧箱の「ミロのヴィーナス」。女性美の象徴ということで選ばれたらしい。
 
 
《「カルピス」徳用壜包紙(青、赤)》
 
   青地に白い水玉模様の包紙は1922年に、赤地に白い水玉模様の包紙は1932年に登場。
   なお、おなじみの白地に紺の水玉模様の包紙は、1949年に登場する。
 
 
 
   1922年、46歳の非水は、初めてヨーロッパに行く。
   11月に日本を発ち、23年1月にマルセイユに着く。フランスを中心に、ドイツ、オランダ、ベルギー、イタリアを巡る。ベルリン滞在時に関東大震災の発生を知って予定を大幅縮小、以降は駆け足となって、24年1月に帰国。1年足らずの遊学である。
 
   遊学中の主なミッションは2つ。
   1つはポスター収集。約300種を手に入れたという。
   もう1つが、ラクトー株式会社(後のカルピス株式会社)からの依頼で、同社が実施する欧州(独・仏・伊)を対象とする「カルピス広告用ポスター及図案懸賞募集」事業への協力。非水は、フランス分の募集作業を、現地滞在中の藤田嗣治の協力を得て実施し、70点を集めたという。
 
   同事業は、商業美術家救済事業として、主に第1次世界大戦後のインフレに苦しむドイツを念頭に置いていたらしい。1等賞・2等賞・3等賞とも全てドイツ人の作品。1,400点あったという募集もほとんどドイツからだったのだろうと思われる。
 
   うち3等賞に選ばれたオットー・デュンケルスビューラーの図案が「黒人マーク」。1924年に初めて新聞に広告が掲載されて以降、「1990年1月、差別問題から自主的に使用を中止」するまでの66年間、「黒人マーク」はカルピスをあらわす商標となった。
 
 
   ヨーロッパ遊学関係として、本展には、非水の旅行鞄、日記、スケッチ、撮影した写真などが展示される。写真はほぼ全てパリでのものであるが、1点のみフィレンツェのものがある。1923年のヴェッキオ橋。加えて、懸賞募集に協力した藤田の作品2点、1923年制作の大型油彩画《アントワープ港の眺め》島根県立石見美術館蔵と、1929年制作の《自画像》愛媛県美術館蔵も。
 
✳︎本展には「黒人マーク」関係や「初戀の味」関係の展示は無し。
 
 
 
川柳「むせるほどカルピスが濃いお金持ち」
 
   我が家はいつも、親に指定された量の原液に、水をたっぷりと入れた、薄〜い「ミルトン」だったことを思い出しながら見る。
 


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