東京でカラヴァッジョ 日記

美術館訪問や書籍など

徐渭《花卉雑画巻》、八大山人《安晩帖》など ー 典雅と奇想(泉屋博古館分館)

2017年12月10日 | 展覧会(東洋・アジア美術)
典雅と奇想
明末清初の中国名画展
2017年11月3日〜12月10日
泉屋博古館分館
 
 
   会期最後の週末に駆け込み訪問。
 
 
本展の構成
 
1   文人墨戯
2   明末奇想派
3   都市と地方
4   遺民と弐臣
5   明末四和尚
6   清初の正統派、四王呉


 
印象に残る作品3選
 
 
徐渭(1521-98)
《花卉雑画巻》
明・1575年、東京国立博物館

   画家中期の絵巻。前半・中半・後半と巻替あり、訪問時は後半の公開。
   たらしこみ技法というのかどうかは分からないが、墨の濃淡による花卉(訪問時1図)や野菜・小魚・蟹(訪問時1図)の表現は見応え大。
   隣には、画家晩年の同趣作《花卉雑画巻》(泉屋博古館蔵)も並び、見比べて楽しめる。
 
   徐渭は、精神を病んで妻を殺害し6年間服役するなど、波瀾の人生を送ったようだ。
 
 
 
傅山(1607-84)
《断崖飛帆図》
清・17世紀、大阪市立美術館

   奇想の山水画が多く展示されるなか、私的には本作が何が描かれているのかさえ分からない、一番不思議な作品。キャプションで画面左上に舟が描かれていることを認識、そんなところに舟があって、題名から断崖が描かれているのだろうけれど、どこが断崖で、その位置関係は、と、?だらけ。時間をかけて観る必要。



八大山人(1626-1705)
重文《安晩帖》
清・1694年、泉屋博古館
 
    一度に1図しか公開できない画帖。全20図を公開するため、会期33日間で1〜3日毎に画面替えを行っている。3日間公開が5図、2日間公開が3図、1日のみ公開が12図。私の訪問時は1日のみ公開の第19図「山水図」。補完として、展示室の壁に全20図+題字2面の画像投影が行われている。
   存在自体を初めて認識した作品、本展のマスコットキャラ第6図「魚図」は気になる、《安晩帖》の公開機会をウオッチしていこう。
 
   画冊・画帖は他に7点出品され、やはり全図を公開するため、短期間で画面替えを行っている。HPにスケジュールが掲示。画冊・画帖の図ぜんぶ観る、となると会期33日中20日の訪問が必要であった。
 
 
 
   明末期の政治的経済的混乱から異民族の清による支配に至る社会の大変動期。「遺民」「弐臣」など、画家の身の処し方も大変な時代の作品群である。泉屋博古館所蔵のみならず、東博、京博、大阪市立美、根津美、大和文華館、文化庁、個人からも出品されている。全54点。
 
 
   これまで中国美術に特段関心を持たなかった私、画家名も作品も解説に出てくる言葉も初めてのものばかりであったが、本展は充分楽しめた。
 
 
   ところで、出品番号52の重文作品は、出品リスト上の所蔵は京博とあるのに、キャプションの英語では泉屋博古館。会期末になっても修正されていないということは、何か意図があるのか。
 
 

   中国の明時代末期(16世紀後期-17世紀前期)は、反乱や飢饉など政治的経済的混乱から不安な時代が続き、ついには北方の異民族であった清の支配へと大きく社会が変動しました。 
   明に仕えた画家たちは追われる中で絵を描く者や新たに清朝に仕えるなど、先の見えない時代の中で創造力を発揮したのです。 
   この明末清初(16世紀後期~18世紀初)の中国には、主流となった呉派を発展させた正統派の画家が活躍する一方で、彼らの典雅な山水表現に背を向けた異端の画家たちが現れます。 
   呉彬はじめ徐渭や石濤、八大山人から清初の惲寿平など、これらの画家たちは非常に個性的で、人目を驚かすような奇想的ともいえる造形を生みだしました。彼らの作品は、中国絵画史の中では長く等閑視されてきましたが、近年の研究によってその造形的魅力が広く認識されはじめています。 
   本展は、泉屋博古館のコレクションを軸として、他の美術館・博物館所蔵の名品優品をこれに加え、「典雅と奇想」という切り口で明末清初の中国絵画を見直し、歴史の変動期に生きた画人たちを紹介するものです。
 


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