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【画像】亜欧堂田善《浅間山図屏風》、司馬江漢と亜欧堂田善の版画 - 2024年8〜9月の東京国立博物館総合文化展

2024年08月30日 | 東博総合文化展
亜欧堂田善
重文《浅間山図屏風》
江戸時代・19世紀
 
 江戸時代最大の油彩画といわれる作品。
 師の谷文晁の『名山図譜』の木版挿絵をもとにして、雄大な浅間山を描く。
 近年、本作の下絵が発見された。昨年(2023年)の千葉市美術館「没後200年 亜欧堂田善」展にその下絵が出品されていた。
 下絵の段階では、田善らしい風俗描写が構想され、2人の人物、斧で木を割る人と炭焼きの番人が描かれていた。
 最終的には、人物を削り、炭焼きの煙と切り出された材木や切り株を残した。
 そのためだろうか、実にシュールな風景で、実に印象的な作品となっていて、私的に大の好みである。
 
 
 
 
 
 
 本館2階の7室および8室の安土桃山〜江戸時代の「屏風と襖絵」および「書画の展開」の展示室では、8月20日〜9月29日の間、南蛮屏風、洋風画、洋風表現の作品が展示される。
 
 私の好む亜欧堂田善や司馬江漢の作品も。
 亜欧堂田善は、重文《浅間山図屏風》のほかに、版画7点。
 司馬江漢は、油絵1点、版画1点。
 
 以下、江漢の2点と、田善の版画5点の画像を掲載する。
 
 
司馬江漢
《西洋人樽造図》
江戸時代・18世紀
 日本で初めて腐食銅版画を完成させた江漢が描く西洋人の姿。自著『春波楼筆記』で、天明6年(1786) 頃から蠟画(油絵)を描いたと記しています。船載された油彩画を研究し、えごま油を使って独自の油彩画を開発しており、本作にもその技法が用いられています。
 
 
司馬江漢
《不忍之池》
江戸時代・天明4年(1784)
 覗き眼鏡で見るための銅版画「眼鏡絵」。
 深い奥行きと臨場感を出すために、遠近法や陰影が強調されています。左右反転して見えるため「不忍之池」の文字は逆文字で書かれています。
 
 
亜欧堂田善
《不忍池ノ図》
江戸時代・19世紀
 本図は、上野山下から寛永寺に向かう坂の途中の雑木林越しに不忍池を見た図で、光の明暗を強調し、樹木の幹を描き分ける銅版表現の多様な試みがなされています。
 
 
亜欧堂田善
《三囲の図》
江戸時代・19世紀
 銅版画に筆彩を施した作品で、隅田川の東、堤の上から上流を眺めた図。右下に三囲神社の鳥居が見えます。ドイツの画家リーディンガーの「プロシア馬図」を参考にした馬と人物が大きく描かれています。左に立ち昇る煙は今戸焼のもの、遠くに筑波山が小さく見えます。
 
✳︎ 「没後200年 亜欧堂田善」展図録によると、「テンセン」「アワウテンセン」などという署名があり、作品名にもカタカナが用いられている銅版画群について、その質から、田善とテンセンは全くの別人だとする説が提唱されているとのこと。
 今回の展示作品では、《不忍池ノ図》と《三囲の図》がそれにあたる。
 
 
亜欧堂田善
《龍図》
江戸時代・19世紀
 同心円のような線を執拗なまでに重ねて表現された雲から2匹の龍が現れる様子を描いています。田善は紙だけでなく布にも銅版印刷を試みており、同様で縮緬(ちりめん)に銅版印刷した作品が現存しています。本作は田善が制作した更紗意匠の見本帖の一部であった可能性が高いです。
 
 
亜欧堂田善
《曳馬及地球図》
江戸時代・19世紀
 上の曳馬図は、田善が熱心に研究していたドイツの版画家リーディンガーによる銅版画をもとに描いたもの。下の地球儀を描いた図は、画面下部が3分の1ほどなくなってしまっていますが、どちらも更紗のための意匠として制作されたものと考えられます。
 
 
亜欧堂田善
《イスパニア国女帝コロンブス引見の図》
江戸時代・19世紀
 地球儀を乗せた机の周りでくつろぐ西洋人と風景を描いた作品。田善の高い技術を示す精緻な線描による人物や風景、そして周囲にほどこされた優美な植物文まですべてが1枚の銅版の画面です。本作も、布に印刷する意匠として制作された可能性が考えられています。
 
 
 
 司馬江漢、亜欧堂田善といえば、来年(2025年)の府中市美術館の「春の江戸絵画まつり」。
 
かっこいい油絵 司馬江漢と亜欧堂田善
2025年3月15日〜5月11日
府中市美術館
 
 江漢と田善は、江戸時代に油絵や銅版画を手がけた洋風画家です。風雅を愛する文人だった江漢と、西洋の技術にのめり込んで「ものづくり」に熱中した田善。二人の作品の特徴は異なりますが、共通して感じられるのは、遠近法への素直な驚きから生まれた造形の「かっこよさ」でしょう。二人の持ち味の違いにも注目しつつ、洋風画の魅力に迫る展覧会です。
 
 今から楽しみ。


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