東京でカラヴァッジョ 日記

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ジェルメーヌ・リシエ《蟻》&《ランド地方の羊飼い》を見る -所蔵作品展&「TRIO展」(東京国立近代美術館)

2024年06月14日 | 展覧会(西洋美術)
ジェルメーヌ・リシエ(1902-59)。
フランスの女性彫刻家。
第二次大戦後における女性彫刻家の先駆的存在の一人で、近年その再評価が急速に進んでいるという。
 
 東京国立近代美術館の所蔵作品展の小企画において、2022年度に購入したジェルメーヌ・リシエの《蟻》が初公開されている。
 
新収蔵&特別公開|ジェルメーヌ・リシエ《蟻》
2024年1月23日〜4月7日
新収蔵&特別公開|ジェルメーヌ・リシエ《蟻》 インターナショナル編
2024年4月16日〜8月25日
東京国立近代美術館2階ギャラリー4
 
 ともに《蟻》を起点として、前者では日本人作家、後者では海外作家を中心とした関連作品を展示する。
 
 
ジェルメーヌ・リシエ
《蟻》
1953年、東京国立近代美術館
 
 初めて名を知る作家。
 前者の小企画を訪れているが、昆虫と人間のハイブリッド、気味が悪い姿をした、とっつきにくい作品だなあ程度で流した。
 
 
 その4ヶ月後、東京国立近代美術館の企画展を見る。
 
TRIO パリ・東京・大阪
モダンアート・コレクション
2024年5月21日〜8月25日
東京国立近代美術館
 
トリオ「24 デフォルメされた体」に、大阪中之島美術館が所蔵するジェルメーヌ・リシエが展示されている。
 
24 デフォルメされた体
 
 
ジェルメーヌ・リシエ
《ランド地方の羊飼い》
1951年、大阪中之島美術館
 
 
 凄く惹かれる。
 情報は、会場内に記されていた「フランス南西部ランド地方の湿地帯に暮らす羊飼いが、移動のために竹馬に乗る姿を彫刻で再現しました」のみ。
 あとで、ネット検索すると、大阪中之島美術館のXにて以下のとおり紹介されている。
 
 女性彫刻家の先駆的存在であるジェルメーヌ・リシエは、穴のあいた物体を偶然に海岸で拾い、それを頭に見立てて人体の彫刻を作りました。表現されたのは、フランス南西部、ランド地方で働く羊飼いの姿です。水はけが悪く、やぶの深い荒野で、羊飼いたちは竹馬で歩き回り、杖にもたれて体を休めたそうです。よく見ると牧童の胴体にも穴があいており、命あるものの内部が外の世界と有機的に通じ合っているのが、リシエの創作ならではの特色です。
 
 ハイブリッドでないところがとっつきやすかったようだ。
 
 「TRIO」展を退室後、所蔵作品展の2階に向かう。
 
 後者の小企画となって、周りの関連作品は入れ替えられ、《蟻》の位置も少し移動されている。
 
 
 
 《蟻》も、前回とは違って、魅力的に見える。
 ジェルメーヌ・リシエに興味が湧く。
 この2点は、現時点で日本に所在する全てのリシエ作品であるようだ。
 
 
【略歴:所蔵作品展会場内解説より】
1902年、南仏アルル近郊グランの生まれ。
モンペリエのエコール・デ・ボザールにて、オーギュスト・ロダンの弟子ルイ=ジャック・ギーグに彫刻を学ぶ。
26年パリに出て、エミール=アントワーヌ・ブールデルに師事する。
34年、初個展。
35年、ポンペイを訪れ、溶岩により石化した身体から新たな表現へのインスピレーションを得る。
39年、第二次大戦のためチューリヒに居を移し、同地にて制作を続け、ジャン(ハンス)・アルプ、アルベルト・ジャコメッティ、マリノ・マリーニなどと親交を結ぶ。
46年、パリに戻る。
50年、スイス国境近くの村アッシーにある教会に、キリスト像を設置するも、翌年、記号的に表現されたその像は地元の反対によって撤去される(71年に再設置)。
51年、第1回サンパウ口・ビエンナーレ彫刻部門で一等賞受賞。
56年、パリの国立現代美術館で回顧展開催。
59年、南仏モンペリエで死去。
 
 
 
 ネット検索すると、リシエの大回顧展が、2023年にパリのポンピドゥーセンターおよびリシエの故郷であるモンペリエのファーブル美術館にて開催されたことを知る。
 両会場あわせて、139点の彫刻作品を含む、200点近くの作品が出品されたようだ。
 
 作家や大回顧展については、東京国立近代美術館研究紀要に掲載された同館研究員の横山由季子氏の研究ノートにおいて詳しく紹介されている。
 横山氏は、「TRIO」展企画者である。
 
 また、竹下節子氏のブログに、16回に渡るパリ大回顧展鑑賞記事が掲載されている。
 作品画像により、どのような作品を制作してきたのか、その概要をうかがうことができる。
 
 日本ではなかなかリシエ作品を見る機会には恵まれないような感じだが、展覧会で1点とか出品されることもあるかもしれず、今後意識したい。


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