先週日曜日に終了した国宝源氏物語絵巻展。なんだか幸せな時間が過ごせました。
五島美術館へ行くのは初めて。国宝源氏物語絵巻を見るのも初めて。
(と思って調べると、1点だけ、2006年の京都国立博物館「大絵巻展」にて「蓬生」を見ています。印象には残っていませんが。)
かなり人が来ると予想しているのでしょう、美術館は臨戦態勢をとっていたようです。
上野毛駅を出ると、係員が「◎◎分待ち」という札を持って立っていました。
初日の16時頃の訪問。待ち時間は0分。
展示室に入ると、明らかに絵の数より、観賞者の数のほうが少ない。3分の2くらい。係員の数のほうが多い。
閉館時間までの約1時間、各々の絵を独占状態で観賞することができました。
展示方法は、上からのぞく方式ではなく、正面から見る方式。
当然ガラス越しではありますが、近い距離なので非常に見やすかったと思います。
詞書はパスして、絵と、そしてその隣に展示された復元模写を観賞。
復元模写と並べられているためか、元の絵の退化度合いが強調されます。
仕方ないですよね。12世紀のものだから。800年以上前の作品がよく現代まで残ったものと感謝すべき。
楽しみ方は、3つ。
1 元の絵を見て、そのかすかに残された跡から、何が描かれていたか想像し、正解(復元模写)を確認する。
2 復元模写を見て、あれっこんなの描いてあったかなあ、というものが、元の絵にどの程度痕跡が残っているかを確認する。
3 元の絵を、あたかも「壁の染みが人の顔に見える」式で、見えるがままに楽しむ。
1つめの方式は、想像力が必要で、すぐに離脱。
3つめの方式は、退化の激しい作品ほど楽しめます。例えば、「蓬生」や「関屋」。
もっぱら2つめの方式で、元の絵と復元模写を行きつ戻りつし、独占状態を満喫しました。
屋内より屋外の情景のほうが楽しめます。
「御法」、「竹河一」、「竹河二」など。復元模写では美しい木や花が、元の絵ではきれいさっぱり消えている。
あるいは言われてみれば確かにわずかながらそれっぽい痕跡が残っている。
と、痕跡眺めに専念してしました。
これが結構楽しかったので、また次の日曜日の同じく16時頃に再訪。待ち時間は0分。
さすがに観客数は絵の数より多くなっています。といっても、1.5倍くらい。
また、時間の経過とともに減少しますので、やはり独占状態で絵を満喫できました。
独占状態は楽しい。会期も後半になると観客も増えるはずで、同じようには楽しめない。とこれで終わりのつもりでした。
が、次回は、今回の展覧会が10年ぶりということを考えると、やはり10年後となるだろう。
やはりもう一度。
と混雑覚悟で、最終日前日の土曜日、15時半頃再再訪。
美術館入口に1時間30分待ちの表示。実際は、その半分くらいで入室できました。
絵の前には、隙間なく人が並んでいる状況。
といっても美術館の入場制限策のおかげで、人が二重三重になることもなく、列につけば最前列で観賞できます。
さすがに、元の絵と復元模写を行きつ戻りつというわけにはいきません。元の絵を過ぎて、復元模写に進むと、元の絵と見比べることはあきらめなければなりません。
17時40分まで延長だったので、その時間まで滞在しました。
1時間×3回の観賞。なんか、物足りない。
と最終日の日曜日にも再再再訪。早めに14時過ぎの到着で、入口には1時間待ちの表示。
今度は表示時間どおりに入室。
閉館(この日も17時40分まで延長)までのたっぷり約2時間半。何周かしました。
疲れたれど満足。
展示作品は全19点。お気に入りの作品は。
屋内情景のみ作品より、屋外情景が描かれた作品が、痕跡探しという点で楽しめました。
(源氏物語自体のストーリーはよく知らないので、その観点からの観賞はできません。)
絵としては、「宿木3」が構図的に気に入りました。
また、退化の激しい「蓬生」。
そもそも描かれた場面が、縁側もぼろぼろで隙間から雑草が顔を出しているような「荒れ果てた屋敷」を訪ねる光源氏。
描かれた場面と、絵の現在の状態がぴったり。今回お気に入りの№1とさせてもらいました。
私にとって、11月は国宝源氏物語絵巻月間だったといえるかもしれません。