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【画像メモ】「衛生のはじまり、明治政府とコレラのたたかい」展(国立公文書館)

2023年03月11日 | 展覧会(その他)
衛生のはじまり、明治政府とコレラのたたかい
2023年1月14日〜3月12日
国立公文書館
 
 欧米に並び立つ国家を目指していた明治政府は、諸外国の衛生を学び、取り入れ、明治8年(1875)には、衛生を専門に担う行政機関として内務省衛生局を設置しました。しかしながら、その数年後には幕末に甚大な被害をもたらしたコレラが再び蔓延し、流行を繰り返します。生まれて間もない日本の衛生行政は、コレラとのたたかいを通じて整えられていきました。
 本展では、衛生行政のはじまりと、コレラに立ち向かう政府の様子、そして、コレラ以外も対象としたより広い伝染病の予防に関する制度が確立するまでをご紹介します。
 
 
プロローグ「幕末コレラと養生書」より。
 
 江戸時代におけるコレラの流行は3度。
 1822年は日本初。九州地方で発生し、西日本を中心に流行する。
 1858年が2度目。長崎に寄港したアメリカ船から広がり、西日本のみならず、東日本、そして江戸にも大きな被害をもたらす。
 1862年が3度目。1858年以降各地で小さな流行を繰り返していたが、再びの大流行。夏の麻疹の大流行に追い討ちを掛けるようなコレラの流行で、1858年より被害が大きかったという。
 
『安政箇労痢流行記』安政5年(1858)
 別名『転寝の遊目』。金屯道人(仮名垣魯文)編。コレラ流行に脅え加持祈祷にすがる人々の様子から、西洋のコレラ治療法まで、幅広い情報が記される。
 展示の絵(私の訪問時はパネル展示)は町ごとに50、60人から100余人の死者が出て、火葬場が満杯となり、火葬しきれない棺が山積みになった光景が描かれる。
 
 
第3章「明治初期のコレラ流行」より。
 
1 西南戦争とコレラ
 
 1877年(明治10年)、明治維新以降初のコレラ流行が起きる。
 
「虎列刺病患者有之諸官員其他出務差止方御達ノ儀上申」明治10年9月 
 コレラ流行に伴い、各省庁の全職員に対して、家庭内でコレラが発生した場合には、治癒したか死亡したかを問わず、適切な消毒法を行い医師の許可を得るまでは出勤を差し控える旨が通達される。
 
「帰陣ノ兵隊流行病予防処分法届」明治10年10月
 西南戦争から帰還する陸海軍の兵士に対し、指定の港への入港制限や、検疫所でのコレラ検査の実施が布達される。
 西南戦争に従軍した兵にコレラ患者が多数確認されたため、患者の移動による被害拡大を食い止めるための方策であった。
 
 
2 明治期最大のコレラ流行
 
 1879年(明治12年)3月にはじまるコレラ流行は、患者16万人超、うち死者10万人超という、明治期最大規模の被害をもたらす。
 
「虎列剌病流行紀事」明治10-15年
 本書は、同年のコレラ患者・死者数の統計等をまとめた、内務省衛生局による明治15年出版の報告書。
 報告書本文には流行の概況が統計データとともに記載され、別冊の附録には地方別の流行状況がまとめられる。火を通していない魚を食べた、川の水を直接飲んだ等々、感染の原因ではないかと疑われる患者の行動についても詳述されている。
 
「第十一号 虎列刺病予防及消毒法心得」明治12年
 内務省衛生局は、年報や定期的な雑紙以外にも、伝染病流行など衛生上の緊急事態に応じて必要な情報に絞った小冊子を発行した。
 本冊子は、コレラ号。
 
 
3 コレラ予防のための規則
 
 明治政府は、1879年(明治12年)1月から伝染病に関する予防規則の制定を進めていたが、3月にはじまったコレラ大流行により中断。
 
「虎列刺病予防仮規則制定ノ件」明治12年6月
 6月、制定が進められていた規則からコレラに対するものを抽出し、仮規則として、急ぎ発行される。
 
「海港虎列剌病伝染予防規則更正検疫停船規則卜改称」明治12年7月21日
 海港における検疫の規則が定められる。
 この規則は、当初「海港虎列刺病伝染予防規則」として公布されるが、「コレラが開港場から日本国内に侵入することを防ぐ目的で制定した」という表現が諸外国からの反発を招く。このため、わずか1週間で「検疫停船規則」に名称を改めたという。
 
 
4 伝染病予防のための規則
 
 一旦中断された伝染病の予防規則の制定は、コレラの流行状況が落ち着いた1880年(明治13年)に実施される。
 
「伝染病予防規則公布ノ件」明治13年7月
 当時、特に問題となっていた、コレラ、腸チフス、赤痢、ジフテリア、発疹チフス、天然痘の6つの病について、本規則にのっとった対応を取るよう定められる。
 
「伝染病予防規則心得書布達ノ件」明治13年8月
 各伝染病に必要な個別対応の前に、すべての伝染病に共通して守るべき事項として、清潔、摂生、隔離、消毒の4点があげられる。
 
 
【本展の構成】
プロローグ 幕末コレラと養生書
 ・幕末のコレラ流行
 ・コレラと西洋医学
 ・高まる西洋医学への期待
第1章 欧米へのまなざし
 ・事典にみる衛生
 ・欧米視察
 ・公衆衛生を知る
第2章 衛生のための組織をつくる
 ・教育と衛生事務の分離
 ・内務省衛生局の誕生
 ・最新の衛生知識の収集
 ・衛生知識を各地へ
第3章 明治初期のコレラ流行
 ・西南戦争とコレラ
 ・明治期最大のコレラ流行
 ・コレラ予防のための規則
 ・伝染病予防のための規則
第4章 コレラを流行させない社会を目指す
 ・衛生知識の普及
 ・コレラに翻弄される社会
 ・水道の整備
 ・広まる水道の大切さ
 ・収束に向かうコレラ流行
エピローグ 続く伝染病とのたたかい
 ・様々な伝染病に備える
 
 
 村上もとかの漫画『JIN-仁-』(テレビドラマも)を思い出しながら見る。


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