アルチンボルド展
2017年6月20日~9月24日
国立西洋美術館
ミュンヘンのアルテ・ピナコテークが所蔵するアルチンボルドの《四季》連作のうち、《秋》の図版を見た。
アルテ・ピナコテークは、《春》《夏》《秋》《冬》4点とも所蔵するが、4点のうち、《秋》は極めて保存状態が悪いと聞いていた。
先日、国立西洋美術館での講演会を聴講した際、全4点を並べた図版がちらっと紹介されたが、ちらっと見た感じでは《秋》は画面上に何も残っていないように見えた。
今般、小さい図版ながらも、《秋》の図版を見ることができた。嬉しい。
確かに酷い状態。殆ど絵具が残っていないのだろうか。
とはいえ、よく見ると、薄っすらと絵柄が見える部分も少しある。後頭部の大きな野菜、額、目、鼻、口辺り。下部には葉っぱも。
他の3点と同様、建築的枠組みが描かれていることも確認できる。
画面上部に随分余白があるなあ、とミュンヘン・バージョンのサイズを確認する。
《秋》84×57cm
《春》68×56.5cm
《夏》68.1×56.5cm
《冬》68×56.2cm
横はほぼ同じだが、縦は《秋》だけ大きい。
✳︎ちなみに、ウィーン・バージョン3点は67×50.5cm程度、ルーヴル・バージョン4点は76×63.5cm程度、デンヴァー美バージョン2点は91.4×70.5cm程度である。
アルチンボルドが完成させ、後年、他の画家により建築的枠組みを描き加えられ、その後、《秋》の保存状態が酷いことになり、その後、《春》《夏》《冬》の3点はその上部を切り詰められた、ということだろうか。
ミュンヘン・バージョンは、従来は宮廷の工房の産物と考えられていたが、近年では、1563年のウィーン・バージョンに先行して、ミラノ時代に制作された初期作品(制作年:1555-60頃)と考えられるようになっているという。
ところで、アルテ・ピナコテークにて、アルチンボルド《四季》連作は、もちろん保存状態が悪い《秋》は無理としても、《春》《夏》《冬》の3点は、常設展示されているのだろうか。少なくとも、1990年頃(古い!)にみすず書房が出版した『アルテ・ピナコテーク』画集には、アルチンボルド作品は掲載されていない。