「うらめしや~、冥途のみやげ」展−全生庵・三遊亭圓朝 幽霊画コレクションを中心に−
2015年7月22日~9月13日
東京藝術大学大学美術館
8月といえば、台東区谷中の全生庵の「三遊亭圓朝・幽霊画コレクション」!
ここ3年連続して全生庵を訪問。エアコン音が響く、エアコン風が掛軸を揺らす、そんな室内で、幽霊画を毎年37点程度観ている。
4年連続となる今年は、上野の東京藝術大学大学美術館の地下2階展示室での対面。
圓朝コレクションが展示される第一会場は、「特別な演出」 -暗い室内、行灯風に作品1点1点に下からの照明、そして会場中央に吊られた大きな蚊帳- が用意されている。実に恵まれた鑑賞環境。
その前段、そこに至る通路(第1章として、圓朝・全生庵ゆかりのものが展示)が暗くて、幅が狭くて、お化け屋敷の通路のようである。
メインの第2章、圓朝コレクション全50点は、2点が通期、48点は前後期制で半分ずつの展示。
(通期展示は、伝応挙作品と、蚊帳の前に立つ美人の幽霊、単なる美人画のような鰭崎英朋による幽霊画。)
なお、全生庵での展示と異なり、作品ごとの解説キャプションは一切ない。あの饒舌な解説がないのは少し寂しい。
第一会場の最後に、絵葉書7枚が展示されている。明治39年、圓朝の7回忌を記念して幽霊画百点余が全生庵で展示された折に作成された《圓朝追福七怪奇絵葉書》である。7枚中3枚は現在の圓朝コレクションに含まれる。つまり4枚はいずれかの時点で散逸したということ。絵葉書に選ばれるのだから、コレクションの中の優品であったに違いなく、現在のコレクションは残念ながら当時の半分弱のパワーということか。その4枚も見たいものである。
第二会場は、いつもの明るい展示室。第3章の浮世絵、第4章の掛軸を中心とする幽霊画を観る。
第3章は、北斎の百物語から2点、お岩さん、お菊さん、浅倉当吾など定番の浮世絵作品が並ぶ。前後期完全入替制。
第4章は、福岡市博物館の吉川観方コレクションや、奈良県立美術館などからの掛軸作品などが並ぶ。これもほぼ前後期完全入替制。
第4章から印象に残った作品。
1)『四谷怪談』の仮面(柳亭左龍使用)早稲田大学演劇博物館蔵
二代目柳亭左龍(1859-1914)が上演時に使用した仮面2点。顔半分が膨れ上がったお岩さん。額の割れた醜女。ギョロリとした大きな目玉はガラスでできていて、左右に動く仕掛けとなっているとのこと。顔の大きさ・青白さ、髪の毛など大迫力。上演中に客席に幽霊が現れる(この仮面をかぶった弟子が現れる)との趣向であったらしい。
2)長沢蘆雪《幽魂の図》奈良県立美術館蔵
いかにも恨めしそうな表情。怖いなあ。
3)河鍋暁斎《幽霊図》
行灯のあかりに照らされた正面向きの俯いた痩せこけた女性の幽霊。なんでも、2番目の妻の臨終時のスケッチをもとに描いたらしい。げっ!
本作はロンドンからの招聘らしく、通期展示である。
4)月岡芳年《幽霊之図 うぶめ》慶應義塾蔵
血に染まった腰巻き姿の後ろ姿の女性の幽霊。赤ん坊を抱いているらしくその足が見える。この絵も怖い。
なお、本作は展示期間が短く、前期の前半のみ。他にも展示期間の短い作品が何点かあって、例えば本展のメインビジュアルの一つである上村松園《焔》(東博蔵)は後期の後半のみ。
幽霊画を堪能。
もちろん、後期(8/18から)も訪問する。