カラヴァッジョ展
2016年3月1日~6月12日
国立西洋美術館
本展の第3章は、「静物」をテーマとして、カラヴァッジョの初期の代表作《果物籠を持つ少年》《バッカス》、およびカラヴァッジェスキ作品4点が展示されている。
カラヴァッジョの2作品は、一見人物画だが、その一部に描かれた静物が主役。果物や植物などの迫真の描写は、実に素晴らしい。
《果物籠を持つ少年》
1593-94年頃
ローマ、ボルゲーゼ美術館
(画像は部分)
《バッカス》
1597-98年頃
ウフィツィ美術館
(画像は部分)
カラヴァッジョの純粋な静物画といえば、
《果物籠》
1597年
ミラノ、アンブロジアーナ絵画館
いつか実物をじっくり味わってみたいものである。来日してくれると幸せなのだけど。
現存しないが、純粋な静物画をもう1点描いていたらしい。《花を生けた水差し》。「水やガラスの透明感を見事にとらえ、部屋の窓さえも映し出している花瓶」。こんな感じ?
カラヴァッジョ
《トカゲに噛まれる少年》
1596-97年頃
フィレンツェ、ロベルト・ロンギ美術史財団
(画像は部分)
一方、カラヴァッジェスキ。カラヴァッジョの静物を見た後では、なんとも言えない4作品。
ある作品の作者名が目に留まる。
ハートフォードの静物の画家
《戸外に置かれた果物と野菜》
ランプロンティ画廊
今はこの名前で呼ばれる逸名画家の作品を、かつて、カラヴァッジョに帰属させようとした動きがあったらしい。
ボルゲーゼ美術館が所蔵する「ハートフォードの静物の画家」の2作品は、1607年にボルゲーゼ枢機卿のコレクションに入ったが、その直前は画家ダルピーノが所持していた。ダルピーノの工房には、一時期カラヴァッジョが出入りしていた。そして、伝記作者ベッローリによれば「カラヴァッジョはダルピーノの工房で花や果物の模写に専念した」。また、冒頭の《果物籠を持つ少年》や同じくカラヴァッジョ作《病めるバッカス》も同様の経緯でボルゲーゼ美術館の所蔵となっている。
この2作品は、1985年NY・ナポリ開催の歴史的展覧会にカラヴァッジョ(周辺)作として出品されたが、そういう理屈だったようだ。
ハートフォードの静物の画家
《2匹の蜥蜴がいる静物》
ローマ、ボルゲーゼ美術館
ハートフォードの静物の画家
《鳥のいる静物》
ローマ、ボルゲーゼ美術館
蜥蜴の方は、2010-11年京都・東京開催のボルゲーゼ美術館展に「作者不詳(17世紀に活動)、カラヴァッジョの追随者」として来日している。
「ハートフォードの静物の画家」の呼称は、この画家の基準作とされる作品の所蔵者にちなんでいる。その基準作も、1985年の歴史的展覧会に出品されている。
ハートフォードの静物の画家
《花と果物のある静物》
ハートフォード、ワズワース・アシ二アム美術館
ワズワース・アシ二アム美術館は、カラヴァッジョの真作《聖フランチェスコの法悦》を所蔵するアメリカの美術館である。
カラヴァッジョの静物といえば、もう1点、宗教画に描きこまれた果物籠を忘れるわけにはいかない。
カラヴァッジョ
《エマオの晩餐》
1601年
ロンドン・ナショナル・ギャラリー
(画像は部分)
いつの日か実見したい。