東京でカラヴァッジョ 日記

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高麗仏画 香りたつ装飾美(根津美術館)

2017年03月07日 | 展覧会(東洋・アジア美術)

高麗仏画 香りたつ装飾美
2017年3月4日〜3月31日
根津美術館

   感想。非常によかった。


   「高麗仏画」という言葉自体、本展覧会の開催で初めて知ったほどだが、副題どおりの「香りたつ装飾美」を堪能した。

 

 

   高麗(918~1392)は、朝鮮半島全域を統一した最初の王朝。仏教を国の支柱と定める。周辺諸国との度重なる戦いや交流により、仏教文化をはぐくむ。

   1231年以降、蒙古軍の侵攻により国土や文化が荒廃。
   このため、現存が確認されている約165点の高麗仏画は全て、蒙古軍との和議を結んだ1270年代から1392年の120年間に制作されたものばかりだという。

 

   高麗仏画の本格的な研究が始まったのは、1960年代後半からのこと。


   現存する高麗仏画約165点の所在地は、米国に17点、欧州に6点、韓国に30点ほど、日本に110点ほどという。

 

   本展は、京都の泉屋博古館と根津美術館の共同企画(京都は、昨年11月3日〜12月4日に開催済み)。

   国内での高麗仏画の展覧会は、1978年に奈良の大和文華館で開催されて以来38年ぶり、東京では初めてとのこと。


   東京の出品数は38点。高麗仏画が26点で、残りは写経や磁器、工芸。展示替えは写経を除いて無い。

   高麗仏画の出品数は、京都・東京2会場と合わせると38点、2会場出品14点、京都のみ出品12点、東京のみ出品12点。

 

【構成:高麗仏画のみ】

1 高麗仏画、この50年 4点

2 阿弥陀如来 12点

3 地蔵菩薩 4点

4 水月観音 2点

5 観音菩薩 4点

 

   初めて高麗仏画を高麗仏画と認識して鑑賞する。それもまとまった数の高麗仏画を鑑賞する。高麗仏画の知識は全くなく、そもそも仏画の知識も乏しく、漠然と観るだけ。そんな私でも、高麗仏画の装飾の豊かさは実に魅力的。

 

   一番のお気に入り作品は、ともに重要文化財、京都・大徳寺蔵と泉屋博古館蔵の2点の《水月観音像》。

   海波が打ち寄せる岩窟のなか、かたわらに浄瓶を置き、ヴェールを身にまとった観音が半跏し、この観音を小さな童子が見上げて拝する。

   観音の表情・手や衣装・ヴェールなどの文様、海辺・岩窟の描写、画面最下部の小さな人物たちの様態を楽しく観る。


重文《水月観音像》
徐九方筆、1323年
泉屋博古館

 


   また、展示室3では、1/7〜3/31まで、特別展示「再会 - 興福寺の梵天・帝釈天」が開催されている。


   かつては一組の像として興福寺東金堂に安置されていた、興福寺の重文《梵天立像》と興福寺旧蔵・根津美術館蔵の《帝釈天立像》の2点が並んで展示される。


   ともに、13世紀初め、康慶(運慶の父)門下の仏師・定慶の作。


   1905年、一部破損していた《帝釈天立像》は、廃仏毀釈で疲弊した寺を支援した益田鈍翁に返礼として譲られ、(欠損部が補われ、)その後、根津美術館の所蔵となる。


   本展が、112年ぶりの「再会」。



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