
モネ 睡蓮のとき
2024年10月5日〜2025年2月11日
国立西洋美術館
モネの「水の庭」作品、そのなかでも「大装飾画」に向けた制作を開始した1914年(74歳)以降の作品に焦点をあてる本展。
東京会場では、パリのマルモッタン・モネ美術館所蔵の48点を中心として、国立西洋美術館所蔵の10点、他の国内美術館所蔵の6点、全64点が展示される。
2015-16年のマルモッタン・モネ美術館所蔵作品による「モネ」展(東京会場は東京都美術館)は、印象派の呼称の由来となったとされる《印象・日の出》が目玉作品で、初期から最晩年まで画業全体を対象とし、モネ自身が所蔵していた同時代の作家作品も展示される総合的な内容であった。
本展は、対象を絞ることで、見やすく、かつ、見応えのある内容となったと思う。
以下、国立西洋美術館所蔵の10点により、本展を辿る。
一番下(地下3階)の展示室(3章 「大装飾画への道」)のみ撮影可の本展。
画像は別の機会に国立西洋美術館にて撮影したもの。
1章 セーヌ河から睡蓮の池へ
1883年(43歳)、ジヴェルニーに移住。
1890年(50歳)、邸宅と土地を正式に購入。
1893年(53歳)、自宅に隣接する土地を購入し、「水の庭」の造成に着手。
1897年(57歳)頃、池の水底に根付いた睡蓮を描き始める。
1900年(60歳)、個展「クロード・モネ近作展」にて、計12点の《睡蓮の池》を公開。
1904年(64歳)、「ロンドン風景」連作37点による個展を開催。
1909年(69歳)、個展「睡蓮:水の風景連作」展を開催し、1903-08年制作の48点の「睡蓮」を公開。
最初のコーナーは、ジヴェルニーに移住して以降の、セーヌ河や支流エプト川を描いた作品が並ぶ。
《舟遊び》
1887年、国立西洋美術館

《陽を浴びるポプラ並木》
1891年、国立西洋美術館

《セーヌ河の朝》
1898年、国立西洋美術館

《柳》
1897-98年頃、個人蔵(国立西洋美術館寄託)
✳︎撮影不可のため画像なし
《ヴェトゥイユ》
1902年、国立西洋美術館

このコーナーでは、1897年制作の「セーヌ河の朝」を描いたひろしま美術館とマルモッタン・モネ美術館の2点を特に見る。
同じ構図だが、前者が日の出の時間、後者がその後の時間となるのだろうか、その色彩の違いを楽しむ。
続くコーナーは、「ロンドン」連作。
《ウォータールー橋、ロンドン》
1902年、国立西洋美術館

《チャーリング・クロス橋、ロンドン》
1902年頃、国立西洋美術館

「ウォータールー橋」は、国立西洋美術館の1点の展示。
一方、「チャーリング・クロス橋」は、国立西洋美術館のほか、マルモッタン・モネ美術館、メナード美術館、吉野石膏コレクションの4点!!
見応え大なので、じっくりと見比べできる展示スペースを用意して欲しかった。
そして、1897年頃から1907年に制作された「睡蓮」のコーナー、展示数は7点!
池の造成に着手したのは1893年、池の水底に睡蓮が根付いたのは1897年頃で、その頃からモネは睡蓮を描き始める。
最初期(1897-99年)の「睡蓮」は8点ほどが知られているらしいが、本展にはうち2点が出品される。
1点はマルモッタン・モネ美術館。もう1点は鹿児島市立美術館。こんな貴重作が国内美術館に所蔵されていることに驚き。たぶん初見。後年の荒々しい感じがすでに見受けられる。
2023-24年の上野の森美術館「モネ ー 連作の情景」展でも、この時期のロサンゼルス・カウンティ美術館所蔵作を見ている。最初期「睡蓮」8点のうち3点を1年の間に見た、とは凄いことだ。
続き、1903-07年制作の「睡蓮」が5点。
個展「睡蓮:水の風景連作」展(実現は1909年)に向けて制作された作品である。
アーティゾン美術館の1点と、マルモッタン・モネ美術館の4点。
もう1点、吉野石膏コレクションの《睡蓮》は、残念なことに、急遽出品中止となったようだ。
ここまでがプロローグ的な位置付け。
プロローグだけで充分に濃い。
充分に濃いのに、本展としてはプロローグ的な位置付けということか、充分なスペースが用意されず、詰め込み過ぎ感があり、さらにたいへん混雑しているので、満足ゆく鑑賞は困難。
2章以降は、本展のメインテーマ、「大装飾画」に向けて制作を開始した1914年(74歳)以降の「水の庭」作品。
2章 水と花々の装飾
《黄色いアイリス》
1914-17年頃、国立西洋美術館

アイリス、キスゲ、藤、アガパンサス。水と花々のモティーフ。
本作のほか、マルモッタン・モネ美術館の10点と、アサヒグループ大山崎山荘美術館の1点からなる。
最終的な大装飾画では、水と睡蓮、柳の木以外のモティーフはいっさい見当たらない。
3章 大装飾画への道
《睡蓮》
1916年、国立西洋美術館

《睡蓮、柳の反映》
1916年?、国立西洋美術館

本章は撮影可(上記2点の画像は本展にて)。
「大装飾画」を展示するオランジュリー美術館の楕円形の展示室を模した展示室に、上記2点のほか、マルモッタン・モネ美術館の7点、計9点の「大装飾画」の習作・関連作品に囲まれる。
囲まれる、と言いたいところだが、たいへんな混雑なうえに、撮影大会の場と化しているので、各作品を個々に見ることしかできない。囲まれる感じを味わうためには、日と時間をよく選ぶ必要がある。
4章 交響する色彩
エピローグ さかさまの世界
マルモッタン・モネ美術館の22点。
表現主義的なきつい色彩・形の「睡蓮の池」「ジヴェルニーの庭」作品が並ぶ。
本展は、国立西洋美術館のあとは、京都と豊田に巡回する。
東京と京都・豊田では、国内美術館からの出品作に違いがある。
国立西洋美術館所蔵作で京都・豊田にも出張するのは、《セーヌ河の朝》、《ヴェトゥイユ》、《チャーリング・クロス橋、ロンドン》の3点で、他の7点は東京限り。
また、他の国内美術館所蔵作6点のうち、1点が東京・京都限りで、他の5点は東京限り。
一方、北九州市立美術館所蔵作1点が京都・豊田に、ポーラ美術館所蔵作1点が豊田に出品予定となっている。