千葉市美術館にて開催中の「ジャポニスム - 世界を魅了した浮世絵」展。
なんと!!ロシアのプーシキン美術館が所蔵するゴッホの素描1点が出品されている。
ゴッホ
《少女の肖像(「ラ・ムスメ」)》
1888年7月末〜8月初旬、32.5×24.5cm
羽ペンおよび葦ペン、鉛筆下書きにインク、紙
プーシキン美術館

この素描は、2017年の東京都美術館「ゴッホ展 - 巡りゆく日本の夢」に出品され、魅了された。
再見できる日が来るとは、それもこんなにも早く訪れるとは想像していなかった。
ところで、君は「mousmé(ムスメ)」が何のことか知っているかな(ロティの『お菊さん』を読んでいればわかるのだが)、僕はそれを一枚描いたところだ。これにはまる1週間を費やしてしまった。体の調子がまたあまりよくなかったのでほかのことは何もできなかった。全くうんざりされられるよ。体調さえよかったら、その間にさらに風景をいくつかやっつけただろうに。でも、僕の『ムスメ』を首尾よく処理するために頭脳の力を温存しなければならなかったのだ。ムスメというのは12歳から14歳の日本の――今度の場合はプロヴァンスだが--少女のことだ。これで手元にある人物画はズワーヴ兵のと彼女のとで2点になる。
[中略]少女の肖像はヴェロネーズグリーンの色を強く帯びた白を背景にしており、胴着は血紅色と紫の縞模様。スカートはオレンジ=黄の大きな斑点のついたロイヤル・ブルー。艶のない肌は黄灰色、紫がかった髪、黒い眉、そして睫毛。オレンジ色とプルシャン・ブルーの目。指の間に夾竹桃の枝が一本。二本の手を描きこまれているので。
ゴッホからテオへの手紙(1888年7月25日頃)『ファン・ゴッホの手紙』(みすず書房刊)より。
この手紙で触れられているのは、「ミレイユ通りの古い風車の近くに住んでいた若いアルルの女性」をモデルとして、唇を尖らせた東洋的な容貌に描いた油彩画である。
ゴッホ
《ラ・ムスメ》
1888年7月、73.3×60.3cm
ワシントン・ナショナル・ギャラリー

この油彩画をもとに、ゴッホは3点の素描を描いている。
1点が上掲のプーシキン美術館所蔵作品で、エミール・ベルナールに贈られたもの。
画面右に走る文字は、次のとおり書かれているとのこと。
ヴェロネーズ・グリーンを強く加味した白の背景、灰黄色の膚、黒い髪と眉、栗色の目、血紅色と紫の横縞の上着、ロイヤル・ブルーの地に大きなイエロー・オレンジの水玉模様のスカート、手に夾竹桃の枝、髪にヴァーミリオンのリボン
次の1点は、ゴーギャンに贈られたもので、ルーヴル美術館が所蔵する。
ゴーギャンによる手書きのメモ(アルバム)に貼り付けられた形で存在しているように見える。
ゴーギャン
「Notes manuscrites: 'Diverses choses du regrette Vincent Van Gogh' 」
31.5×23.2cm
ルーヴル美術館

もう1点が、オーストラリア・シドニー出身の画家ジョン・ラッセルに贈られたもの。
ロンドンの個人蔵であったが、2021年3月のクリスティーズのオークションに出品され、ゴッホの素描としては史上最高額となる1,043.6万ドル(約11億円)にて落札された。
ゴッホ
《ラ・ムスメ》
1888年7月31日〜8月3日、31.3×23.9cm
個人蔵?

プーシキン美術館のゴッホ素描が出品されているからには、千葉市美術館の展覧会に行かなければならない。
ジャポニスム - 世界を魅了した浮世絵
2022年1月12日〜3月6日
千葉市美術館

千葉市美術館に行くのは、2019年の春以来。コロナ禍では初めて、2020年7月のリニューアル・オープンしてから初めて。多摩地区からだと、東京都心の美術館の倍の移動時間を要するので、このご時世もあって、どうしても優先順位を下げてしまっていた。