歌川国芳 21世紀の絵画力
2017年3月11日〜5月7日
前期:〜4月9日、後期:4月11日〜
府中市美術館
後期入りした府中市美の国芳展を、GW中に訪問。
前期は、安田雷洲《赤穂義士報讐図》本間美術館蔵、に驚愕。
後期はどんな出会いが待っているのか。
1 新発見の国芳作品
会場の一番最後に、特別出品として、新発見の国芳作品1点が展示される。
本展会期中に発見されたのだそうだ。
府中市美術館HPより。
《猫の左仮》4月19日より展示
本展覧会の会期中に、《猫の左仮》と題する作品が見出されました。
かつてモノクロ図版で紹介されたことがありますが、実作品を見ると、配色が大変美しく、また、猫の絵を得意とした国芳の本領が発揮された優品であることがわかりました。更に、かねてから人気の高い《おぼろ月猫の盛》と関わりのある作品だと考えられます。
そこで、 本展覧会が、この貴重な作品を他の国芳の作品と併せて鑑賞できる有意義な機会であると考え、急遽、4月19日(水曜日)から展示させていただくことにいたしました。展覧会場では、《おぼろ月猫の盛》と並べてご覧いただきます。
2 入場制限
本ブログを始めて以降、府中市美の「春の江戸絵画まつり」には、ほぼ全展、前後期各1回訪問しているのだが、「入場制限」に出会ったのは初めて。
GW中の一番混む時間帯だったのかもしれないが、大人気なのですね、国芳。
15時頃の到着で、入場待ちの列に着いて15分ほどで会場入り。
列について順番に見ていく。相応に進み、詰まっているところは適宜飛ばして、1巡目の鑑賞に75分。閉館までの残り30分は、飛ばした作品の鑑賞と気になった作品の再鑑賞。
列が二重になることもなく、列につけば作品を間近で観ることができるので、混雑とはいえ、ストレスを感じることは少ない。その鑑賞環境を維持するための「入場制限」なのだろう。
3 お気に入り作品
風景画の章が一番のお気に入り。国芳作品に加えて、司馬江漢や亜欧堂田善の洋風画も展示されている。
《東都御厩川岸之図》
《東都名所 かすみが関》
《東都橋場之図》
今回は、特に《東都橋場之図》の大きな地蔵が気になる。
高さ3メートルを超える地蔵は、当時は浅茅ヶ原の松並木の道の傍らにあったが、現在は台東区の松吟寺にあるという(現存することに驚き)。
以下、平成11年3月、台東区教育委員会の掲示より。
お化け地蔵
橋場二丁目五番三号 松吟寺
「お化け地蔵」の名には、かつて大きな笠をかぶり、その笠が向きをかえたから、あるいは高さ三メートル余の並はずれて大きいからなど、いくつかの伝承がある。この辺りは、室町時代以来、禅宗の名刺総泉寺の境内地であった。門前一帯を浅茅ケ原といい、明治四十年刊『東京名所図会』には「浅茅ヶ原の松並木の道の傍らに大いなる石地蔵ありしを維新の際並木の松を伐りとり、石地蔵は総泉寺入口に移したり」とあり、「当寺入口に常夜灯あり、東畔に大地蔵安置す」とも記している。
お化け地蔵の台石によれば、この石仏は享保六年(一七二一)の建立。関東大震災で二つに折れたが、補修し現在にいたっており頭部も取りかえられている。常夜灯は、寛政二年(一七九〇)に建てられた。
総泉寺は、昭和四年板橋区へ移転した。「お化け地蔵」近くにある「元総泉寺境内諸仏供養の為」の碑は移転に際し建てられたものと思われる。
風景画以外では、好みの「西洋画の異境」の章。定番作品《近江の国の勇婦於兼》などを楽しむ。
「特撮ファンタスティック」の章も、国芳らしい大スペクタクルが展開された作品が多数並び非常に興味深いのだが、大スペクタクル系作品はやや疲れる。
以下、展示会の構成。
第1章 19世紀の国芳-国芳の仕事、10のポイント
1)凄み-新しい美の価値(→武者絵)
2)役者を追いかける(→歌舞伎役者)
3)江戸の良さを教えてくれる画家(→風景画)
4)子供のかわいらしさ
5)話題の見世物
6)歴史の物語
7)西洋画の異境(→西洋画を元ネタとした画)
8)きわどい活動(→風刺画)
9)笑いの愛蔵版
10)人気者、国芳
第2章 21世紀の国芳-何が私たちの心をつかむのか
1)「綺麗なもの」と「かわいいもの」の復権
2)特撮ファンタスティック
3)ヘタウマの極み
4)猫がむすぶ国芳と現代人の心
来年の「春の江戸絵画まつり」は何を取り上げるのだろう。今から楽しみである。