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クラーナハ《パリスの審判》-「メトロポリタン美術館展 2021-22」

2021年12月18日 | メトロポリタン美術館展2021-22
メトロポリタン美術館展
西洋絵画の500年
2021年11月13日~2022年1月16日
大阪市立美術館
 
 ドイツ・ルネサンスの巨匠の1人、ルーカス・クラーナハ(1472〜1553)の《パリスの審判》。
 
 私の印象では、主に15〜17世紀の作品が展示される第1会場内にて、フェルメール《信仰の寓意》に続く2番目に人が集まっていた作品。
 ただ、クラーナハは展示室の角に展示されている分滞留し、密集しているように見えただけかもしれない。
 
 本作品の見どころは、三美神がそれぞれ側面・正面・背面から描かれたエロティックな姿態となるだろうか。
 
 
 さて、本展出品作であるメトロポリタン美術館所蔵のクラーナハ《パリスの審判》は、次の18点のうちどれでしょう?
 
「Cranach Degital Archive」サイトより
https://lucascranach.org/home
 
 
 
 
 ヴィッテンベルクで大工房を運営するクラーナハは、革新的な経営者でもあった。
 大量の注文を、多くの協働者を使用して、質を維持しながら、効率的に制作する。
 そのための「標準化」を確立させる。
 絵の寸法、構図、人物像や風景モチーフを定型化する。さらに、これらの組合せにより、作品ごとに変化をつける。
 そのような制作方法であるため、作品がクラーナハのオリジナル作か工房作かの判断は困難。質の優れたものがオリジナルで、そうでないものが工房作、という分類に陥ってしまう。工房作も含めてクラーナハ作と捉えるべき、との意見もある。
 
 
 
【本展出品作:画像2枚目の一番左上】
クラーナハ《パリスの審判》
1528年頃、101.9×71.1cm
メトロポリタン美術館
 
【参考:画像1枚目の一番右下】
クラーナハ《パリスの審判》
1528年、84.7×57.0cm
バーゼル美術館
 
【参考:画像2枚目の一番右上】
クラーナハ《パリスの審判》
1530年、35×24cm
カールスルーエ美術館
 
 制作時期の近い3点を並べる。
 舞台も、登場人物+馬も、同じと言いたいところだが、それぞれ変化をつけている。
 人気主題であるが故に、同一とならないよう、作品ごとの差異を徹底管理しているような印象を受ける。
 なお、メトロポリタン美術館作品は、本主題作品のなかではサイズが一番大きいようである。その分、上掲画像では人物像が小さく見える。
 
 
 「パリスの審判」。
 狩りの途中で迷ったパリス。白馬を木につないて、その根元で眠りこんでいた。
 人の気配に目を覚ましたところ、眼前には、水晶玉(黄金の林檎ではない)を持った一人の老人と、裸体の三人の美女が立っている。
 老人はパリスに何か話しかけてくるが、パリスはまだ夢の中にいるような気分でいる。
 パリスの頭上には、矢を放とうとするキューピッドが飛んでいる。
 
 この絵の次の場面では、老人メルクリウスは、裸体の三人の女神のうち誰が最も美しいかをパリスが選ぶよう求める。女神たちは、もし私を選んでくれたら、とそれぞれ報酬を提示する。
 ヘラ:国の支配者にする
 アテナ:戦争の勝者にする
 アフロディア:絶世の美女を与える
 
 パリスは、アフロディアを選ぶ。
 
 三人がどの女神にあたるのか判別できるようには描かれていないが、うち一人が我々鑑賞者を見てアピールしているのは、クラーナハ流か。


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