投錨備忘録 - 暇つぶしに借りた本のメモを残すブログ

放送禁止歌

過剰な自主規制・思考停止・条件反射的行動しか取れないメディアについて書かれた本。

森 達也 「放送禁止歌」 知恵の森文庫(光文社)

2000年7月に解放出版社から出版された同名の本を加筆修正。
2003年6月15日に初版出版。

放送禁止歌

知恵の森

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著者はテレビディレクター。ドキュメント番組を手がける。

1999年5月22日深夜(23日早朝)にフジテレビ関東ローカル枠で放送された「放送禁止歌 歌っているのは誰? 規制するのは誰?」の制作取材が元になっている。

内容は良く出来ていると思うのだが読みながら「部落解放同盟」に偏り過ぎているなぁとは思った。「イムジン河」を出しながら在日韓国朝鮮人の団体については一つも触れられていないのは何故?などと考えるのは最初の出版が「解放出版社」からであることを考えると無意味か。ちょっと残念だ。番組の取材時点から「解放出版社」が関係していたのか・・・と怪しむのは失礼かな。

著者は当初の番組企画では放送禁止歌の変遷をその歌を実際に放送で流しながら(歌い手に歌ってもらうことも含めて)ドキュメント番組にすることを考えていたが、取材するうちにあまりにも自分たちが知っていた(と思っていた)ことと実態がかけ離れていることに気づき、何故誰がどうして放送禁止歌を作り出してきたのかに内容が変わっていく。

例えば放送禁止歌といえばすぐ「竹田の子守唄」「イムジン河」を私は思い浮かべるのだが、放送禁止されたことなど一度も無かったという。竹田の子守唄については部落解放同盟からの抗議も何も無かったことを同盟自身が証言している。

メディア業界は過去に番組に対し抗議を受けても何故自分たちがそういう表現を使ったのか反論するわけでもなくただ謝罪し引っ込めてしまう思考停止状態。そんな中で多くの歌がいつのまにか放送禁止になっていく。放送を自主規制するにしても自分たちの価値判断があるはずなのにそれも無く、単なる噂を真に受けて皆でしたがう横並び世界。そんな業界を放送取材を通して内部から書いてある。

告発!というようなものではなく、肩から力を抜いた文体で表現されている。

本は「紙ふうせん」の後藤悦治郎への電話取材の内容で終わる。後藤は「竹田の子守唄」を自主的に放棄したと業界でまことしやかに噂されていたそうだ。

しかし著者は後藤との会話で、後藤は一度も「竹田の子守唄」を捨てたことはなく歌い続けてきたことを知る。そして竹田に行き著者が会うことがかなわなかった「竹田の子守唄」の元歌を歌っていた老婆に会い、自分たちが「竹田の子守唄」を歌い続けることの許しを得ようとしたことも。結局許しは得られなかったが、今も自信をもって歌い続けていることも。


以下メモより。

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放送禁止歌は正確には「要注意歌謡曲」
日本民間放送連盟が取りまとめたもの
強制力はない 判断は放送局で行う
1983年度版が最後(1983.12.10)効力は5年
網走番外地、手紙、イムジン河、自衛隊に入ろう、チューリップのアップリケ、竹田の子守唄、このどれも該当せず

手紙、チューリップのアップリケ、竹田の子守唄は部落解放同盟から糾弾された記録は無い(解放同盟)

解放同盟の抗議・糾弾にメディアやレコード会社はいっさい反論してこなかった

メディアは誰一人として糾弾に反駁してこなかった。信念を持っているならば反論すればいい(解放同盟関係者)

みんなあっさり謝ってしまう(解放同盟関係者)

著者は「穢多(えた)」という言葉を番組で使うことの了承を解放同盟に求めるが「充分注意して使ってください」と回答を得る。(実際は使う必要性が無いため使用せず)

もんば飯 → おからの飯 (竹田の子守唄の元歌 守子歌に入っている言葉)

在所 → 特殊部落?(竹田の子守唄の「この在所こえて」の部分)

アメリカの放送禁止歌 (デーブ・スペクターより)
・性と暴力には注意が必要だが基本的にない
・ほとんど放送局独自のガイドライン
・アメリカの生放送は6秒遅れ ← この6秒で事故を防ぐ
・放送禁止用語は数個、日本はむやみに多すぎる

※アメリカの規制と日本の規制の違いは私は良くわからなかった。ただデーブが披露するアメリカの話は面白い。

後藤悦治郎
・竹田の子守唄は多くの人がコンサートで歌っていたが、
 脅しがあったことは事実。
 そういうこともありだんだん歌われなくなったのでは・・・。

 ※エセ同和は多いから・・・と私は納得するのだが、
  これについての解放同盟への取材は無い。

・竹田の子守唄はコンサートでは歌っているが
 レコードアルバムには入れてもらえない。レコード会社の都合か?

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