*** june typhoon tokyo ***

CUBERS『マゼンタ』


 “青と赤”が引き寄せた必然のコラボレーション。

 FC東京のファン・サポーターにとっては“FC東京U-23応援隊”としての活動や、TOKYO MXの応援番組『F.C.TOKYO 魂!』のエンディング・テーマ「TOKYO HERO」を歌っていることで知られるボーイズ・グループ、CUBERS(キューバ―ズ)。10月4日にリリースされた2nd EP『マゼンタ』には、会場および通販限定ながらFC東京とのコラボ盤が登場。ということで、コンサドーレ札幌戦があった10月21日に味の素スタジアムで購入し、『F.C.TOKYO 魂!』のエンディングではサビパートしか流れていない「TOKYO HERO」の全貌も含め、全7曲がどんな塩梅なのかを興味を持ちながら、CDをプレイヤーへとセットしてみた。

 CUBERSは2015年4月から“只今、研修中です。男子”としてのプレ始動を経て、同年7月に正式にCUBERSとして結成。“聴けるボーイズユニット”として各方面から高い楽曲性が支持される、TAKA(タカ)、優(ユウ)、春斗(ハルト)、綾介(リョウスケ)、末吉9太郎(スエヨシキュウタロウ)の5人組で、これまでデビュー曲「SHY」からシングル3枚、アルバム『PLAY LIST』を経て、2017年に入って1st EP『シアン』を発表。『マゼンタ』はそれに続く2nd EPとなる。

 元来、CUBERS自身が青と赤を基調とした衣装ということもあり、その縁からか“FC東京U-23応援隊”へも就任したようだ。色の表現法であるCMYKカラーモデル4成分のうち、青系の“シアン(Cyan)”に続いて赤系の“マゼンタ(Magenta)”を冠するEPをリリースする際に、青赤をチームカラーとするFC東京のコラボ盤が企画されるというのも絶妙なタイミング。この“FC東京コラボ盤”は、メンバーが作詞を手掛けた「TOKYO HERO」への解説コメントページを含み、青と赤を交互に配色したブックレットとなっており、“青赤の仲間”を強調したデザインも親近感が湧いてくる。



 冒頭のリード曲「君に願いを」はアンダーグラフの真戸原直人が作詞、NEWS、Kis-My-Ft2やBOYS AND MENらの編曲に名を連ねる高橋諒が作・編曲を担当。1979年リリースのダン・ハートマン「リライト・マイ・ファイア」を想起させるフレーズをフック的に用いながら、ジャニーズ・テイストの爽快なポップ・ダンサーにまとめている。元来CUBERSがディスコ/シティポップへの近似値を感じさせる作風だったこともあり、このあたりのファンクネスはお手の物といったところか。スウィート&キュートなハーモニーを軸としているゆえ、女性ファンへ向けたアイドル・ソングと早計しがちだが、軽やかなカッティング・ギターと快活なストリングス・サウンドの躍動に背中を押されるかのように伸びやかなヴォーカルワークを披露する展開は、ディスコ・ポップとして優れているといえる。

 続く「カラフルにしよう」は彼らのマネージャーの堀切裕真が曲を手掛け、高橋諒が編曲を担当。エモーションズが1977年発表にしたモーリス・ホワイトによる名ディスコ・クラシックス「ベスト・オブ・マイ・ラヴ」をモチーフとしたような作風で、こちらも「君に願いを」同様にディスコ調の仕上がり。エモーションズはアース・ウィンド&ファイア「ブギー・ワンダーランド」のコーラス隊として著名だが、「カラフルにしよう」のメロディやアレンジにアース風の色付けが見え隠れしているのは、偶然ではないだろう。やはり高橋諒によるファンキー・ポップへ昇華させるアレンジが、ジャニーズ曲にも比肩するクオリティをもたらしている。

 そして、『マゼンタ』で一番耳に引っ掛かったのが、「Bi' Bi' Bi'」をはじめ、CUBERS楽曲ではお馴染みの大西洋平が詞曲を手掛けた「PINK」。大西は本作でインスト曲「いつか忘れられるさ」の作曲&コーラスも担当している。
 とにかくスタイリッシュなファンクネスを追求したポップ・ダンサーで、シングルにしても問題ないほど(むしろシングル化するべき)のクオリティを持っている。大西は『手裏剣戦隊ニンニンジャー』『動物戦隊ジュウオウジャー』『宇宙戦隊キュウレンジャー』などのスーパー戦隊シリーズの楽曲に数多く提供していることもあってか、疾走感に溢れ、エッジの効いたドラマティックなメロディを構築。ただ、この曲を一段上のクオリティに高めているのは、心揺るがすスピーディなグルーヴを生み出しているアレンジにある。“ギザギザのピンク Get Get Get you back me”のコーラスに80年代のポップ・ファンク歌謡をソフィスティケイトさせたアレンジを絡み合わせたフックは、実にクセになるキャッチーな中毒性を孕んでいる。と思い、編曲のクレジットを見てみると、記されていたのはHi-Fi Cityの名。残念ながら解散してしまったが、ディスコ、ファンク、シティポップ、フュージョン、AORあたりをアーバンに彩ったかと思えば、メロウネスなネオソウル/R&B作風へと移行して驚かせた“楽曲派”ガールズ・グループ、Especiaを聴いてきた人であれば、Hi-Fi Cityの名は承知するところ。楽曲の質の高さの理由も納得だ。



 「今日はどんな日だった?」は、堀切マネージャー作曲、NEWSやチームしゃちほこに参加曲がある芳賀政哉と、喜多村英梨や久保ユリカら声優陣に参加曲のある竹市佳伸が編曲。芳賀や竹市、さらに高橋諒も音楽制作会社アルタス所属で、このあたりの人脈が『マゼンタ』の楽曲の軸を築いているようだ。アッパーでエナジーが漲る楽曲で駆けてきたところを一つ落ち着かせ、メリハリをつけるのに役立っているのがこの曲。ちょっぴり切なく甘酸っぱくメロディの“泣いて 笑って 泣いて”のフックが女子の胸キュン度を高めそうな、ハートウォームなミディアムに仕上がっている。そっと寄り添うような優しい肌あたりのヴォーカルワークに、表現力の幅が窺える。

 「ボクラチューン!!」を手掛けたR.FUKUOKAは、V6「Answer」、ケツメイシ「君と出逢って」、アイドリング!!!「Cheering You!!!」などが代表作に挙げられる福岡良太のこと。晴れやかでキャッチーなメロディが特色で、“Happy, Lucky, and Smiley Days.”のラストフレーズよろしく、ポジティヴでフットワークの軽い曲風がテンションを高めてくれそう。“シュシュシュ、シュビドゥビドゥワー”のコーラスとリズミカルなギターによるクリーンで明澄なアクセントも耳に残り、幅広い層にウケそうだ。

 ラストを飾るのは、TOKYO MX『F.C.TOKYO 魂!』のエンディング・テーマとなっている「TOKYO HERO」。メンバーが作詞し、マネージャー堀切が詞曲に携わった“借り物でない”思いが込められいる曲だ。スタジアムでのチャントを意識した“オーオーオーオーオー”のコーラスや“前へ前へ東京”という前向きな気持ちを綴った詞には、勇気とあともう一歩を踏み出す力を与えてくれそう。編曲には再び高橋諒を起用。シンプルなギターリフから鍵盤やドラムが次々と重なっていく展開は、誰もいないピッチやスタンドの景色が次第にファン・サポーターが集い活気を帯びてくるスタジアムを映し出したかのよう。時折挟み込まれる鐘の音もヒーローの奮闘を待ちわびる胸の高鳴りをなぞらえているようで、真摯にFC東京と向き合った熱を感じられるのが、FC東京サポーターとしては嬉しいところだ。



 全編を聴いて感じたCUBERSの楽曲の良さは、ファンクやディスコを下敷きに洗練されたポップスを衒いなく表現していること。もちろん、ユニットがアピールする層は女性ファンが多くを占めるであろうが、それまでのアイドル・ポップスの概念を変えたSMAPや、その作風を受け継いで普遍的なヒットを飛ばした嵐などと同様、老若男女幅広い層の身体を揺らし耳を手繰り寄せる楽曲のポテンシャルの資質は備わっていると思う。あとは、その資質をどう大きく開花させ、自身が成長していくかだろう。

 11月5日には渋谷WWWでワンマンライヴも控えている彼ら。ライヴでのパフォーマンスも気になるところだが、まずは彼らと彼らの楽曲が持つ可能性を感じるべく、この『マゼンタ』に触れてみてはどうだろうか。特にFC東京ファン・サポーターは、奇しくも“青赤”の同士という縁もある。アイドルだから、ボーイズ・グループだからと先入観で片付けてしまってはもったいない。いわゆるブラコン(ブラック・コンテンポラリー)やファンク、ディスコあたりの音に反応する人には共感も多い作風となっているはずだ。


◇◇◇



■ CUBERS 2nd EP『マゼンタ』(2017/10/04)Bermuda Entertainment japan
[FC東京コラボ盤]BMEJ-0044
メンバーによる「TOKYO HERO」解説収録
FC東京イベントでの会場販売、通販サイト限定

01. 君に願いを[作詞:真戸原直人/作曲・編曲:高橋諒]
02. カラフルにしよう[作詞:央海 加亥/作曲:堀切裕真/編曲:高橋諒]
03. PINK[作詞・作曲:大西洋平/編曲:Hi-Fi City]
04. いつか忘れられるさ[作詞・作曲・編曲:大西洋平]
05. 今日はどんな日だった?[作詞:小山良太/作曲:堀切裕真/編曲:芳賀政哉・竹市佳伸]
06. ボクラチューン!![作詞・作曲・編曲:R.FUKUOKA]
07. TOKYO HERO[作詞:CUBERS・堀切裕真/作曲:堀切裕真 /編曲:高橋諒]
   ※ TOKYO MX『F.C.TOKYO 魂!』エンディングテーマ

[Type-A]BMEJ-0042
音楽ジャーナリスト高橋芳朗によるライナーノーツ収録
[Type-B]BMEJ-0043
メンバーによるセルフライナーノーツ収録

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