CICADA、UKO、AFRO PARKERを擁する良質レーベル〈para de casa〉(パラ・デ・カサ)の4周年とライヴハウス「六本木Varit.」の1周年を兼ねたレーベル・パーティ〈para de casa 4th anniv × Roppongi Varit 1st anniv party!!!〉が、同レーベル/アーティストと懇意にある西恵利香を迎えた4組で開催。会場はEspeciaのモーニングライヴ企画でも馴染み深い六本木Varit.。一昨日に代官山UNITでのワンマンライヴを成功させたCICADAをトリに、華やかなグッドミュージック群が六本木の夜を彩った。
元来好んで聴くAFRO PARKER、CICADAが六本木Varit.というアーティストとの親近感を持てるステージに登場するということもあり、何とか都合をつけて開演時刻ギリギリにフロアに滑り込んだ。
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先陣を切ったのはUKO。個人的には初見となるが、「きらめきシーサイド」「Boogie Aroma」ほかの歌詞提供やコーラスに参加するなど、Especiaファンには知られた存在。この日は記念イヴェントということで、長野県松本市で開催された〈りんご音楽祭〉(松本が地元らしく、ということは松本山雅サポーターの可能性も?)出演時の衣装を着用。袖がシースルーの黒のブラウスに赤いパネルスカート(スカートの上に別布などを重ねて装飾したスカート)といった出で立ちは、プレゼントのデコレーションのよう。2016年に1stアルバム『Saturday boogie holiday』をリリースしており、同作収録曲を中心に披露してくれた。
中低音の声域を軸にしたソウル・ポップ作風で、ディスコやファンクなどの要素がチラチラと顔を覗かせるスタイリッシュなグルーヴ・ミュージックが特色。渋谷系のなかでもクラブ寄りの、たとえば土岐麻子や鈴木桃子在籍時のCOSA NOSTRAが展開していた心地良いポップネスに溢れているといったらいいか。アプローチという意味ではニューミュージック、一十三十一あたりのムードも。「タイムトラベラー」には流線形のクニモンド瀧口が関わっているのを知って、なるほどと合点がいった。『Saturday boogie holiday』にはPellycolo、カキヒラアイ、Schtein & Longerらが参加し、ぺシスト&ペシスタ(Especiaのファン)の嗜好とも合う。個人的にはオリジナル同様にリミックス・アプローチを増やして、クラブ・ヒットを狙うと面白いのではないかと感じた。
二番手は、西恵利香。篠崎愛が所属したアイドル・グループのAeLL.のリーダーとして活動後、2014年9月以降はソロ・シンガーとしてシングル1枚、(ミニ、リミックス、Erika名義含む)アルバム5枚をリリースしている。UKOにセットしてもらったという“お団子”ヘアで登場し、モデルのようなフォトジェニックぶりを見せた。
彼女はとにかく清々しいほどの正統派ヴォーカルが印象的。スコットランドや北欧系の血が入っていそうな美形ルックス(実際は純日本人らしい)と嫌味やクセがない爽やかで抜群の歌唱力を誇る。フロアからのコールの声量が小さいと「もっとアーティストに優しくして」と応えたり、レーベル所属外ながら〈para de casa〉レーベル・パーティに参加していることに言及する際に「ソロでやっていると、いろいろ“癒着的”なことをやっていかないと稼げない」などと言ってオーディエンスを沸かせたりとMC力にも長けている。フレッシュな曲風もリスナー層を狭めることはないし、一つのきっかけでヒットする要素も持ち得ていると思う。
ただ、やや穿った見方をすれば、詞世界も歌唱も正統派過ぎるきらいゆえ、強く印象に残るインパクトが不足しているのかもしれない。これは正解例では全くないが、たとえば、艶やかな世界観に一つ踏み込んでみたり、クセのあるヴォーカルワークを採り入れてみたりと、何かフックになるものがあれば、より深みや懐の深さも出ると思う。とはいえ、闇雲に小手先のアレンジに走って折角保たれているバランスを崩しては元も子もないゆえ、なかなか難しいところ。MCで自主企画復活のアナウンスをする際にはマネージャーがステージへ現れ、西の目の前を遮るようにフロアの観客へビラ配りを始めるなど、スタッフともどもコミカルでアットホームな部分もあって個人的には好感が持てるのだが……注目されるタイアップに起用されるなどのチャンスが巡ってくることを期待したい。
続いては、“アフロパ”ことAFRO PARKER。冒頭から弥之助とWAKATHUGのMC陣がマネキンが運ばれてくるかのごとくメンバーにステージまで運ばれる小ボケをかました後、生音ヒップホップ・バンドのライヴ感を繰り出していく。彼ら随一のフューチャリスティックなグルーヴ・チューン「Cosmic Dance」で一気にヴォルテージを上げると、JBのビートに乗せて“バス来ない”を連呼する「The Rapper In The Rye」で相変わらずのエンターテインメントぶりを発揮。これまでスケッチブックやフリップを使っていたが、この日は黒板を取り出して“田舎にはバス来ない”“ここにはバス来る?”と殴り書きしながら“バス来る”を叫ばせて、初見のオーディエンスをロックオン。
後半では「最近、バンドの集中力がなくてMC陣は困っている」との振りから、弥之助の左腕を振る合図でバンドがオーケストラヒット的な“キメ”を打つというパフォーマンスを入れて(バンドの音が揃わないことに怪訝な顔をする弥之助とバンド勢のあたふたした態度のギャップが笑いを誘う)、横揺れのグルーヴが楽しい「Still Movin' On」、人生の素晴らしさを歌った安らぎのアンセム「Life Is Good」で幕。ジョイフルだがそれだけではないスキルをさりげなく披露するスタイルで魅了した。また、WAKATHUGのフロウの切れ味が増しているようにも思えた。
トリはレーベルの大黒柱、CICADA。一昨日にワンマンライヴを終えたばかりだが、どうやらその緊張が解き放されたようだ。UKOのステージの時に及川創介が風邪を引いてうつす可能性があると断りを入れていたり、城戸あき子が本編ラストの(彼らが常に大切な曲だと言う)「YES」の前のMCで噛んでしまい、グダグダになりかけるなど一見気の緩んだように思えるところも、演奏自体にとっては力みないリラックスしたパフォーマンスを生み出す要素になったのかもしれない。城戸のヴォーカルもしっかりとしたメリハリの陰影がつき、ライヴ経験で培ったヴォーカルワークの著しい成長(特に表現力という意味で)は目を見張るものがある。
ワンマンライヴの際にはあまり強い印象がなかった新曲群も、心地良いグルーヴとソフィスティケイトなヒップホップ・マナーで快活に聴かせるまでに精度を高めていた。「ふたつひとつ」のジャズ・ファンク感覚や、もはや単なるドラムンベース仕様から高次元で脱却した「stand alone」など、つぶさに彼らの成長が窺えるステージはさすがレーベルの顔といったところか。若林とものパートで及川が「若林、緊張してる」とチャチャを入れたり、新加入の越智俊介が櫃田良輔とこまめにアイコンタクトをとるなどコミュニケーションは良好な彼らだけに、楽曲、アレンジ、演奏などにおいてさらなる高次元での躍進を望みたいところだ。
日本のポップ・フィールドは一部の大メジャーやその類似曲に集約されて、年々中間層が空洞化するようにメジャーとインディ(アンダーグラウンド)の乖離が激しい感じもするが、たとえば、この〈para de casa〉のアーティストたちが広く認知されることで、音楽シーンにオリジナリティと層の厚さをもたらす端緒となればと切に思う。恒常的に開催を望みたい好企画だった。
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<SET LIST>
≪UKO with Sosuke Oikawa≫
Signal
マドンナ
タイムトラベラー
Wonder Time
Sha La Lay
Hectic
≪西恵利香≫
・
Champagne
常花
サマーパーティー
MUSICを止めないで
≪AFRO PARKER≫
INTRODUCTION
Cosmic Dance
The Rapper In The Rye
Welcome to AFRO PARK
Question One
After Five Rapper -SHACHIKU REQUIEM-
Still Movin' On
Life Is Good
≪CICADA≫
INFLUX
Naughty boy
ふたつひとつ
party out(NEW SONG)
stand alone(blue)
YES
≪ENCORE≫
UNTITLED(NEW SONG)
<MEMBER>
UKO(vo)
Sosuke Oikawa/及川創介 from CICADA(DJ)
西恵利香(vo)
AFRO PARKER are:
WAKATHUG(MC)
弥之助(MC)
加地三十等兵(g)
KNOB(b)
TK-808(ds)
BOY GENIUS(key)
BUBUZELA(as)
CICADA are:
城戸あき子(vo)
越智俊介 a.k.a オチザファンク(b)
櫃田良輔(ds)
及川創介(key)
若林とも(key,g)
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