快勝には程遠い内容に終始。
3月18日のホームでの川崎戦以来1分け2敗としていたFC東京が、アウェイで新潟に勝利し、約1ヵ月ぶりに勝点3を挙げた。28分に太田宏介のFKで先制、69分に左サイドへ展開して東慶悟からのパスを受けた太田がマイナスのグラウンダークロスで折り返したところ、中央に走り込んできた橋本拳人が正確に枠内へ収めて2点目、さらに82分には大久保嘉人がボックス内へ侵入しようとしたところで足を引っかけられるとPKの判定をもらい、冷静にゴールを決めて3点目。時間経過だけを見れば、先制、中押し、ダメ押しと理想的な展開にも見えるが、それは全くスコア上だけでのこと。前半から終始新潟にボールを支配され、終盤でもロングボールに苦しむなど、結果からは到底窺えない質の低い勝利となってしまった。
新潟はホニ、チアゴ・ガリャルドのブラジル人FWコンビにロメロ・フランク、加藤大、小泉慶、さらには矢野貴章、ソン・ジュンフンといった上背のあるDF陣で幾度となくエリア内へ侵入し攻撃を仕掛けてくるが、チアゴ・ガリャルドの惜しいシュートなどもあったものの、決定機を含めて全体的に精度を欠いていた。新潟は良質な外国人選手を獲得する印象が強く、そのタレント性と結果がなかなか結びつかないのが不思議に感じたりもするが、例年残留争いに顔を覗かせてしまうというのは、そのタレント性を活かす精度が整っていないままという証拠でもある。今季もこの試合を終えて1試合3失点が3度を数える。立ち上がりからの攻勢を得点に出来ていれば、FC東京は勝点3どころか勝点1も奪えなかったかもしれない。決めるべきところで決めて有利に試合を運ぶ術を持っているか、そういった巧者ぶりを確実に励行出来るかが上位との僅かな、しかしながらなかなか埋めるのが難しい差となっているのだ。
こういってはなんだが、新潟が精度を欠いた攻めでチャンスを逃してくれていたなかでFC東京は勝利したというだけのこと。それも流れの中の得点ではなく、太田のFKという“飛び道具”が決まったに過ぎない。もちろん、FC東京にとってもサッカーという試合において、セットプレーを活かす強力な武器を持っていることは素晴らしいことだが、それは長いシーズンを戦う上での継続性に繋がるかというと、それが占める割合はあまり大きくない。
FC東京は連敗中からか守備を軸に攻撃を仕掛けようとするが、何より大久保嘉人と前田遼一にボールが入らない。高萩が途中でピッチに入るまでは、得点上はリードしていたとはいえ、中盤の支配力が脆く、もしそこを徹底的に新潟に詰められていたら、連敗中と同様の展開になっていたことは想像に難くない。
それぞれの距離感が非常に悪いため、大久保が動いても連動したパス渡しが行なえず、孤立する場面も散見。また、いつものクセのようにボールをサイドに回して狭い地域でゴチャゴチャとパスを繰り返した挙句、ボールを奪われてカウンターを受けるなど、ストレスが蓄積するような攻めも。同時に狭い地域でのボール争いに複数人数を掛けて獲りに行ったものの奪えずに、中盤をがら空きにしてピンチを招くなど、チーム全体としての意思統一がなされていない。正直なところ、相手が不調な新潟で助かった、というのが実際のところだ。
太田はFKを決め、橋本のゴールをお膳立てするなど攻撃では良さを見せたが、61分あたりのホニにシュートを打たれた場面での守備は全くいただけない。ボールに一番近い位置にいながら、相手選手の攻撃を読めずに、自らシュートコースを開けるような動き。幸いシュートが林の正面だったからいいようなものの、仮に決められていたら、それまでの攻撃での貢献と差し引きすればマイナスになってしまう。
また、札幌、鳥栖戦同様、ロングボールの対応がなぜあれほど危なっかしいのか。アディショナルタイムの森重のクリアも不十分でエリア内の相手に当ててあわやの場面を作ってしまうなど、中途半端な判断やプレーが多過ぎる。これは当然直接プレイした選手の集中力の問題はあるが、距離感や共通理解が構築されていないからこその綻びであり、チームとして考えなければいけないこと。守備を軸にしてそこから攻撃をと謳っているチームが守備での連係を明確に出来なければ、攻撃での連動性が生まれないのは至極当然のことだ。
それでも、得点が生まれた時はダイレクトなプレイだったり、判断の早いシンプルなプレイがチャンスを生み出している。高萩がいなければ機能しないという状況は非常に問題だが、少ないながらもゴールへ繋がった成功例から一つずつ学べるところを積み重ねていき、試合では泥臭い勝利も厭わずに、内容面で少しずつチームとしての基盤と連動性を高めていくしかない。
次はホームでの広島戦。ピーター・ウタカが契約上出場不可というなかで、前線がどのように躍動出来るか。前田、大久保でそれぞれシュート数1しかないというのは、あまりにも少な過ぎる。全体でもFC東京のシュートは6本。新潟はそのほぼ倍の11本だ。FC東京はこの数字上の快勝はいち早く忘れて、7割以上は硬直した試合展開へメスを入れてもらいたい。
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【明治安田生命J1リーグ戦 第08節】
2017年04月22日(土)14:03 試合開始 デンカビッグスワンスタジアム
入場者数 18,292人
天候 晴 / 気温 13.2℃ / 湿度 56%
主審 村上伸次 / 副審 中井恒、武田光晴 / 4審 高寺恒如
新 潟 0(0-1 / 0-2)3 FC東京
≪得点≫
(潟):
(東): 太田宏介(28分)、橋本拳人(69分)、大久保嘉人(82分、PK)
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【FC東京 メンバー】
≪スターティングメンバー≫
GK 33 林 彰洋
DF 22 徳永悠平
DF 03 森重真人
DF 05 丸山祐市
DF 06 太田宏介
MF 37 橋本拳人
MF 10 梶山陽平 → 高萩洋次郎(56分)
MF 17 河野広貴 → 永井謙佑(58分)
MF 13 大久保嘉人
MF 38 東 慶悟
FW 20 前田遼一 → 阿部拓馬(90+2分)
≪サブスティテューション≫
GK 01 大久保択生
DF 02 室屋 成
MF 15 永井謙佑
MF 23 中島翔哉
MF 44 阿部拓馬
MF 08 高萩洋次郎
FW 09 ピーター・ウタカ
≪監督≫
篠田善之
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【2017明治安田生命J1リーグ FC東京 日程】
第01節 02/25(土)14:00〇FC東京 1-0 鹿 島(A・カシマ)
第02節 03/04(土)15:00〇FC東京 2-0 大 宮(H・味スタ)
第03節 03/11(土)19:00✕FC東京 0-3 G大阪(A・吹田S)
第04節 03/18(土)19:00〇FC東京 3-0 川 崎(H・味スタ)
第05節 04/01(土)16:00△FC東京 3-3 鳥 栖(H・味スタ)
第06節 04/08(土)19:00✕FC東京 1-2 札 幌(A・札幌ド)
第07節 04/16(日)14:00✕FC東京 0-1 浦 和(H・味スタ)
第08節 04/22(土)16:00〇FC東京 3-0 新 潟(A・デンカS)
第09節 04/30(日)15:00 FC東京 vs 広 島(H・味スタ)
第10節 05/07(日)14:00 FC東京 vs 仙 台(A・ユアスタ)
第11節 05/14(日)15:00 FC東京 vs 柏 (H・味スタ)
第12節 05/20(土)19:00 FC東京 vs 神 戸(A・ノエスタ)
第13節 05/28(日)16:00 FC東京 vs 甲 府(H・味スタ)
第14節 06/04(日)13:00 FC東京 vs 清 水(A・アイスタ)
第15節 06/18(日)18:00 FC東京 vs 横浜FM(H・味スタ)
第16節 06/25(日)18:00 FC東京 vs 磐 田(A・ヤマハ)
第17節 07/02(日)19:00 FC東京 vs C大阪(A・金鳥スタ)
第18節 07/08(土)19:00 FC東京 vs 鹿 島(H・味スタ)
第19節 07/30(日)19:00 FC東京 vs 新 潟(H・味スタ)
第20節 08/05(土)19:00 FC東京 vs 川 崎(A・等々力)
第21節 08/09(水)19:00 FC東京 vs 大 宮(A・NACK5)
第22節 08/13(日)19:00 FC東京 vs 神 戸(H・味スタ)
第23節 08/19・20・18※ FC東京 vs 浦 和(A・埼 玉)
第24節 08/26(土)--:-- FC東京 vs 横浜FM(A・日産ス)
第25節 09/09・10※ FC東京 vs C大阪(H・味スタ)
第26節 09/16・17※ FC東京 vs 仙 台(H・味スタ)
第27節 09/23(土)--:-- FC東京 vs 柏 (A・ 柏 )
第28節 09/30・10/01※ FC東京 vs 磐 田(H・味スタ)
第29節 10/14・10/15※ FC東京 vs 甲 府(A・中銀スタ)
第30節 10/21・10/22※ FC東京 vs 札 幌(H・味スタ)
第31節 10/29(日)--:-- FC東京 vs 清 水(H・味スタ)
第32節 11/18(土)--:-- FC東京 vs 鳥 栖(A・ベアスタ)
第33節 11/26(日)--:-- FC東京 vs 広 島(A・Eスタ)
第34節 12/02(土)--:-- FC東京 vs G大阪(H・味スタ)
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