*** june typhoon tokyo ***

脇田もなり@WWW X


 歌う喜びと自信を実感したステージは、次のステップへの大きな指針。

 「1周年は祝ってもらえると思っていたけど、2周年は正直不安だった……」と思わず吐露した目先には、脇田もなりの歌を信じ、愛し、渋谷・WWW Xに集った多くのファンで埋め尽くされていた。感極まり涙し、オーディエンスとともに歌う幸せに微笑み、安堵の表情も浮かべた彼女。それでも最後には「3周年も大きな会場でやる、今そう決めました」と凛々しい眼で決意表明。“より前へ!”の想いをタイトルに冠した2ndアルバム『AHEAD!』のリリースツアー・ファイナルとソロ2周年を兼ねたライヴ〈Up and Coming~2ndアルバム「AHEAD!」リリース・ツアー・ファイナル & 脇田もなりソロ2周年~〉は、歌っていくことへの喜びと自信を手にしたステージとなった。

 自身のバンド“Up and Coming”を従えて、というよりも気鋭の面々を揃えたバンドが鳴らす音に刺激されながら、提供された音楽的振幅の広い楽曲とともにさまざまなトライを続けている脇田もなり。7月に行なわれたベースの越智俊介が在籍するShunské G & The Peasとの2マン・ライヴ(記事はこちら→「脇田もなり@六本木Varit.」)で成長への貪欲な姿勢を見せた彼女が、イヴェントや8月下旬から大阪、京都、名古屋、福岡と巡ったツアーでの経験を糧にして迎えたファイナルで、どのようなパフォーマンスを披露するかに耳目が注がれた。



 バンドメンバーに遅れてイメージカラーでもある赤のドレスに身を包んで登場した脇田もなり。自身が作詞し、バンドマスターのラブアンリミッテッドしまだんが作曲、Up & Comingが編曲を行なった、脇田もなりバンドの名刺代わりとも言える「Dear」からライヴは幕を開ける。続いて「やさしい嘘」へ。この流れは7月の六本木VARIT.での2マン・ライヴと同様。その後の「愛のデカダンス」までは落ち着こうと胸に問いかけるがごとく、一歩ずつ足の裏で大地を感触を確かめるように丁寧に歌を綴っていく。

 「EST!EST!!EST!!!」からはこの日のスペシャルゲスト、重住ひろこと岡村玄によるSmooth Aceが登壇。自グループの活動はもちろん、近年ではceroのサポートなど(個人的には『おかあさんといっしょ』内の「パジャマでおじゃま」の歌の人…笑)でも知られる“〈パパパ〉歌いの日本一”の彼らがバンドのグルーヴに加わったことで、このライヴのクオリティを大きく引き上げた要因となった。「PEPPERMINT RAINBOW」「遊星からのアイラビュー oh! oh!」「Gozigen Lover-Joi」と『AHEAD!』からの楽曲を続けての中盤は、新譜の楽曲をどのようにライヴというフェーズでバンドとともに熟成させていくか、彼女自身の表現力の成長をいかに発揮出来るかという点で非常に興味があった。これまではいい音を鳴らすバンドと歌唱のギャップを意識し過ぎていたり、一方で、細かく言えば、その音に頼り過ぎてホッとしたところで歌唱の締りが甘くなってしまうところも散見されていたが、この日のSmooth Aceのユニゾンの力添えは強く彼女に勇気を与え、ヴォーカルとバンドが奏でる音空間にさらなる奥行きをもたらしていった。



 正直なところ(個人的にライヴではヴォーカルの出来を意識しすぎてしまうきらいがあるため)、若干Smooth Aceのコーラスの圧に押されていたり、歌に表情をつけようとしたあまり、ヴォーカルのパワーが流れてしまった場面がなかったかと言えば嘘になる。ただ、そういった些細な技術や質のどうこう以上に、全身に宿った“2周年を迎えられ、多くが集う前で歌える喜び”とバンドやコーラスが生み出す良質なグルーヴの波にも乗ったストレートにオーディエンスへ届く訴求力によって、ラストまで堂々と歌い切った姿が成長の証であり、何よりの収穫だった。威勢を張るもどこか恐々としていたデビュー時から一転、多彩な歌唱法や楽曲を得ながらも向上と葛藤を繰り返し、切磋琢磨した道程が歌という彼女の唯一無二のアプローチによって解き放たれた瞬間、フロアは純粋にその歌声と音に酔いしれ、心身を揺らすオーディエンスがさらに高まる興奮と熱狂の渦で満たされていった。
 その呼応の大きさは、楽曲の世界観を咀嚼しながらも単に歌い手という以上に表現者としての意識が芽生えてきた彼女の成長を、多くが感じ取ったからかもしれない。


 
 当ライヴを迎えるにあたって、活動中に足の指を骨折するというハプニングがあった彼女。ほぼ完治に近いというものの、中盤では万全を期して「CUTi-BiL」や「夜明けのVIEW」では椅子に腰かけての歌唱も披露。しっとりとしたバラードだけに、こういった演出も不幸中の幸いか、効果的に。「TAKE IT LUCKY!!!!」からは再びSmooth Aceの心強いサポートを得て、歌うことの愉しさを全身で表わしながらステージを往来し、ダブルアンコールの「Boy Friend」まで駆け抜けた。愉しさと同時に次のステップを目指したいという意欲に満ち溢れたゆえ、咄嗟に冒頭の発言となったかのかもしれない。その勢いのまま新たな挑戦と野心を抱いて、さらなる高みへ。“AHEAD!(前へ!)”という意志は、ポップ・シンガーとしての次なるステージへ向かう羅針盤となったようだ。終演後のフロアに止むことのない歓声と喝采の渦が、その進路が誤っていないことの証明なのかもしれない。


◇◇◇

<SET LIST>
00 INTRODUCTION
01 Dear(provisional song title“またどこかで”)
02 やさしい嘘
03 愛のデカダンス
04 EST!EST!!EST!!!(special guest with Smooth Ace)
05 PEPPERMINT RAINBOW(special guest with Smooth Ace)
06 遊星からのアイラビュー oh! oh!(special guest with Smooth Ace)
07 Gozigen Lover-Joi(special guest with Smooth Ace)
08 CUTi-BiL
09 夜明けのVIEW
10 走る僕
11 青の夢
12 TAKE IT LUCKY!!!!(special guest with Smooth Ace)
13 IRONY(special guest with Smooth Ace)
14 Callin' You(special guest with Smooth Ace)
≪ENCORE≫
15 IN THE CITY(special guest with Smooth Ace)
16 WINGSCAPE(special guest with Smooth Ace)
≪ENCORE #2≫
17 Boy Friend(special guest with Smooth Ace)

<MEMBER>
脇田もなり(vo)

ラブアンリミテッドしまだん(Healthy Dynamite Club)(g)
越智俊介(Shunské G & The Peas / CICADA)(b)
KAYO-CHAAAN(Healthy Dynemite Club)(key)
山下賢(Mop of Head / Alaska Jam)(ds)

Smooth Ace(cho)

Opening DJ:
新井俊也(冗談伯爵)



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【脇田もなりに関する記事】

・2016/09/23 星野みちるの黄昏流星群Vol.5@代官山UNIT
・2017/06/20 脇田もなり@HMV record shop 新宿ALTA【インストア】
・2017/07/28 脇田もなり@タワーレコード錦糸町【インストア】
・2017/09/08 脇田もなり@clubasia
・2017/11/25 脇田もなり@HMV record shop 新宿ALTA【インストア】
・2017/12/15 脇田もなり@六本木VARIT.
・2018/01/28 脇田もなり@下北沢BASEMENTBar
・2018/03/21 脇田もなり@下北沢BASEMENTBar
・2018/05/06 脇田もなり@新宿MARZ
・2018/07/11 脇田もなり@六本木Varit.
・2018/08/09 脇田もなり『AHEAD!』
・2018/09/14 脇田もなり@WWW X(本記事)

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