甘茶ソウル好きによるモダン・ヴィンテージ・ソウル・ショウ。
米ニュージャージー州ニューアーク拠点のヴォーカリスト/マルチプレイヤー、ズィー・デスモンデスとドラマー/プロデューサーでプロ・スケーターのテディ・パウエルによる米ソウル・ユニット、ザ・ジャック・ムーヴス。ストリート・カルチャーを背景にブギー・ファンクからアーバン・ソウルやディスコまでを包含したスウィート&メロウなサウンドで、メイヤー・ホーソーンやマイロン&Eに続く逸材として早耳のソウル/R&B好事家などの間で話題の二人が初来日。会場はビルボードライブ東京。
ステージにはキーボードのジョシュ・オーティスを向かって左に、ベースのアーロン・フランシスコを右に配置した4人でのミニマム・セット。白地と黒の“ヒゲ”模様とのコントラストが印象的なギターを持ってステージ中央ではにかみながら弾き語るズィーとそのバックバンドという風にも見えたが、実際MCや進行はズィーが指揮をとっていた。
煽り文句等でよく上述のようにメイヤー・ホーソーンが引き合いに出されるが、確かに“白人が演奏するソウルというスタイル”という意味では似ているけれども、ヒップホップなどを経由して描出方法としてのソウル・ミュージックを体現せしめたメイヤー・ホーソーンに対して、このザ・ジャック・ムーヴスなるユニットは単純にヴィンテージなソウル・ミュージックを追い求めている過程で得たオールド・スタイルで自らの音楽性を発露させているといえばいいか。歌やサウンドは、特にミディアム・スローからスローになるとリズム&ブルースやロック的な雰囲気もちらほらと見え隠れしていて、話題性を狙うような“飛び道具”もなし。純粋にモダンなソウルを衒いなく歌い奏でるといったところに好感と清々しさを覚えた。
ただ、アルバムのクオリティをそのままライヴの完成度へと期待した人たちにとっては、少々物足りなさもあったかもしれない。4人編成のミニマムセットということもあろうが、リズム隊の音がそれほど図太くないのとコーラスの声量がそれほどなかったことで、音の厚みはやや薄く、音圧も押し出しが足りないものになってしまっていた。また、本格的なライヴ経験がそれほど多くはないのかステージングも発展途上で、開演後から中盤あたりまではツアーというよりもローカルなバーやレストランでの演奏旅行を続けるファミリー・バンドのような風情も漂っていた。もう少々強いボトムと専任のバック・コーラス(出来れば女性)が二人くらい加わった編成で音圧を高めると、全体の音鳴りもグッと深みを増して、よりいいムードを構築するのではないかと感じた。
それでも、「デイ・アンド・ナイト」などでベース・ソロを組み込んでファットなボトムを強調させると、ズィーは持ち味のファルセットを多用した甘茶ソウルに絶妙な歌唱で、何とも言えないスウィートな空間を創り上げていく。そして、マーヴィン・ゲイ、ウィスパーズ、テンプレスと自身たちが好むソウル・ナンバーのカヴァーを次々と披露して2016年の夜をヴィンテージ・ソウルで染めていくと、本編ラスト「ダブリン・ダウン」では待ってましたと言わんばかりに立ち上がり身体を揺らすオーディエンスの姿も。
楽曲が素晴らしいのは明白。それゆえ、今後はライヴ経験値を積み重ねていくと、より彼らが構築する世界観の純度が増すのではないかと思う。
アンコールでは1曲、オリジナルズ「ベイビー・アイム・フォー・リアル」のカヴァーを。ジンワリと噛み締めるような歌唱で歌い終えると、微笑ましい表情を見せた彼ら。自らが好きなカヴァー曲を多く披露する姿に、生粋の“ソウル・ラヴァーズ”を見た感じがした。
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<SET LIST>
01 Lucky Charm(Time & Enemy?)
02 A Fool For You
03 All My Love
04 Make Love
05 Day and Night
06 Joyride
07 Seasons Change
08 We're Here Now
09 Heavy' Love Affair(Original by Marvin Gaye)
10 Keep On Lovin' Me(Original by The Whispers)
11 All at Once
12 My Baby Love(Original by The Temprees)
13 Doublin' Down
≪ENCORE≫
14 Baby I'm For Real(Original by The Originals)
<MEMBER>
Zee Desmondes(Vocals, Multi-instrumentalist)
Teddy Powell(Drums)
Josh Ortiz(Keyboards)
Aaron Francisco(Bass)
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