*** june typhoon tokyo ***

Bluey presents CITRUS SUN@BLUENOTE TOKYO



 インコグニートの主宰として活躍するブルーイが立ち上げたプロジェクト“シトラス・サン”のライヴを観賞。シトラス・サンは、イギリスにおいて各賞でベスト・ギタリストに選ばれたジム・マレン(元アヴェレイジ・ホワイト・バンド)をはじめ、インコグニートのメンバーとしても知られるマット・クーパー、フランシス・ヒルトン、フランチェスコ・メンドリア、ジョアン・カエタノらが集うグッド・ミュージック・グループだ。
 70年代のソウル、ジャズ・ファンク、ラテン・ミュージックなどの要素をスタイリッシュに描き上げるブルーイのフェイヴァリットが詰まった作風が魅力の彼らが、インコグニートとは一味異なる爽やかなステージを展開した。

 幕開けはブルーイのヴォーカルを強調したアコースティックなスタイルでの『コート・アップ・イン・ザ・グレイ』から。インコグニートではそれほど自らヴォーカルを執ることはないが、実は意外と味わい深い声質でメロディアスに歌っていることに気づく。本家シンガーまでの圧力はないが、彼の心を揺るがしたと思われる“音楽との出会いの瑞々しさ”を削ぐことなく、童心に戻ったかのような輝かしい表情で歌う姿が印象的だ。

 童心に戻ったといえば、まずはマイルス・デイヴィスへの想いと共に「ラルク・アン・シエル・デ・マイルス」で腕利きトランペッターのケヴィン・ロビンソンを迎え入れてジャズへの憧れを示すと、続いてブルーイが敬愛するギタリストのジム・マレンをフィーチャー。以前、若きブルーイがクラブに入れなかった頃、窓の外から石を台にしてよろけながらも見ていた相手こそ、そのジム・マレンだったという。そして、「今日のステージは石が要らない! 夢がかなったんだ(No stone! My dream comes true!)」と叫ぶブルーイ。早速そのジム・マレンの「ソウル・アイズ」をプレイして見せたが、椅子に座りながらの演奏ではあるものの、70代とは思えないエッジーな弾きっぷりと滑らかな手さばきで軽快なAORサウンドを奏でていく。ブルーイが多大なるリスペクトを送るのも頷けるとともに、ブルーイの音楽的視野の広さの一部が窺えた瞬間でもあった。
 その後、マーヴィン・ゲイ「ホワッツ・ゴーイン・オン」も“シトラス・サン”ヴァージョンとしてウェストコースト(ここでは地中海といった方が適切なのかも)の爽やかな夏風のようなアレンジで魅せてくれた。

 初来日だという紅一点のヴォーカル、スリーン・フレミングも適宜加わって、熱量の高いヴォーカルワークを披露。
 スリーン・フレミングはドラマーのニック・ヴァン・ゲルダー(ジャミロクワイのオリジナル・メンバーで、オマーやブラン・ニュー・ヘヴィーズ、インコグニートなどでも共演)とのユニット“ヴァン・ゲルダー/フレミング”のヴォーカリストで、クインシー・ジョーンズやラリー・グラハムなどのツアー帯同経験もあるシンガーで、モダン・ソウル、ディスコ、ハウス、アシッド・ジャズ、ファンクあたりとの相性は言わずもがな。前面に飛び出し過ぎることなく、微かな艶色とインパクトあるパッションを醸し出し、インストゥルメンタル中心のステージに絶妙な陰影を加えていた。

 そしてもちろん、これらのサウンドをしっかりと支えているのはインコグニートでもおなじみのメンバーたち。マット・クーパーの色彩鮮やかな鍵盤に、分厚いボトムを鳴らすフランシス・ヒルトン、ドラムのフランチェスコ・メンドリアとパーカッションのジョアン・カエタノの丁々発止のパーカッション・セッションでの競演など、ブルーイが安心して任せられる演奏陣だからこそ、ブルーイ自身も好きなものを楽しむことに注力出来るのだろう。
 その一方で、したたかにメッセージも込めているのがブルーイ。アルバム『ピープル・オブ・トゥモロー』で認めた“明日を生きる人たち=子供達こそが未来であり、それが大きな愛となって満ちていく”というテーマと同様、自らの心をワクワクさせた瞬間、人、場所(MCでは影響を与えた都市として、ロンドン、東京、ニューヨークを挙げていた)などへの愛を、洗練されたグルーヴで響かせていった。

 インコグニート本隊ではないからか(ヴォーカル・パートが少なめのインスト中心ということもあるだろう)、フロアが満席とはならなかったのは残念ではあったが、ジム・マレンほか名手の腕とブルーイの音楽的ルーツに楽しく触れられた、音楽的刺激や好奇心をもたらしてくれたステージ。柑橘系の薫りにくすぐられるような清々しさに満ちたひとときとなった。



◇◇◇

<SET LIST>
01 CAUGHT UP IN THE GREY
02 L'ARC EN CIEL DE MILES
03 SOUL EYES
04 MAIS UMA VEZ
05 SEND ME YOUR FEELINGS
06 RIDE LIKE THE WIND
07 WHAT'S GOING ON
08 WHAT COLOR IS LOVE
09 COLUMBUS AVENUE
10 COOKING WITH WALTER
11 THINK TWICE
12 LOVE HAS COME AROUND
13 PEOPLE OF TOMORROW
≪ENCORE≫
14 FUNKIN' FOR JAMAICA

<MEMBER>
Jean-Paul ‘Bluey’ Maunick(vo,g)
Jim Mullen(g)
Sulene Fleming(vo)
Kevin Robinson(tp)
Matt Cooper(key)
Francis Hylton(b)
Francesco Mendolia(ds)
Francisco Sales(g)
João Caetano(per)

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