常に先進的で攻撃的な目を持ち、常に優しい眼差しを…
精霊夜曲は実はそういった若者たちで作る反戦劇でもあります。26年前に横浜博覧会の白いテントで初演をむかえたこの劇は、やはり当時でも古臭い印象を与えた感があり、なかなか一般的には認められず、しかし、その後は声優、原えり子さんプロデュースで前進座でやったり、深町章監督作品でピンク映画になったり、放送劇になったり、映画館での興行をやったり、いろいろ形をかえておこなわれてきました。10年前にSATOMIさん含め数名の若手女優でやった時は新人公演みたいな感じだったけど、今回はなんだか違います。SATOMIそのものがハルであり、サキでもあります。何故か、迫力というか、常に演劇的イデオロギー、パッションを感じます。確かに、僕もあの頃より年をとり、あの頃の青い演出とはやはり違います。女優と演出が長い年月に変化し、伸びていく姿はなかなか珍しいかもしれません。いつも彼女と闘ってきた気がします。いや、いまでも闘っています。そんな小さいかもしれませんが、歴史のある、SATOMIの代表作でもある劇です。それに関わってくれたオカシネマプチルピリエの若手メンバーとオーナーであり名優湯沢勉氏にも感謝
です。今までやってきた精霊夜曲の中では最高傑作作品だと信じています。今回、この劇が皆様にどう伝わるか楽しみです。プチルピリエに集まる若手俳優達は本当に不器用だけど、熱く、何かを探り、何かを模索し、何かを訴えているような気がします。それぞれが映画、演劇だけに捕らわれず、マルチに個々で活動してきてもいます。常に先進的に攻撃的な目で、そして優しい眼差しで。オカシネマプチルピリエの精神でいきたいです。最後に、この作品を先日、若くして亡くなった、僕と数々の映画、Vシネマをコンビで作って来た、名プロデューサー竹村正明氏に捧げます。
<内容>
桜の咲く頃、義行は大学を卒業したものの、就職もせずブラブラしていた。そんな時、祖父の亡くなった知らせを聞いた義行は葬式にもいかず何故か現実逃避のためアニメ映画を見ていた。そして気がついた時、彼は来た事のない桜並木に迷い込んでいた。桜の満開さに。彼はわれを忘れ、踊るように散って行くさくらの花びらを追いかけた。その時、落ちたさくらの花びらを拾ってはいけないとどこからか妖しげな老婆が現れる。老婆は義行にたんたんと桜の木とその下にある石の伝説を語るのだった。そして老婆が去った後、石が光だし、石の上に捨てられていた(花と一緒に供えられていた)お菊人形が義行に向かってしゃべりだす。そんな彼を惑わす虚構世界の中、ハルという美しい白いドレスの女が現れ…
過去と現在、虚構と現実が交差する中、ラストタンゴが桜の森に響き渡る。踊ろうか~、踊ろうよ~、せめて今宵限りなら
2011年8月27日~9月5日 梅ヶ丘プチルピリエ