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メルケルの寛容にテロがとどめ? ISが犯行声明

2016-12-22 00:31:55 | テロ

メルケルの寛容にテロがとどめ?

Berlin Attack: German Politics Is 'Paralyzed By Terror'

2016年12月21日(水)17時45分 Newsweek
 
ベルリンのトラック突入テロ現場に向かうメルケル

<恐れていたことが現実になった。難民保護の理想を掲げ続けるメルケルのドイツをテロが襲った。これでドイツも極右の餌食になるのか>


 月曜日にドイツの首都ベルリンでクリスマスマーケットにトラックが突入する事件が起きる前から、難民流入とそれに伴う治安上の危険性は、すでにドイツ政治の大きな争点になっていた。アンゲラ・メルケル首相も出馬表明した来年秋の独連邦議会選挙へ向け、メルケルの弱点である難民問題のことしかしゃべらない政治家も出てきそうだ。


 事件翌日の火曜日、トラック突入事件に関する記者会見に臨んだメルケルは、慎重な対応を促した。「おそらくテロ攻撃だろう」と語る一方、「確かなことは分かっていない」とも強調した。


 逃亡中の運転手が難民としてドイツに入国したという報道に話が及ぶと、メルケルは難民を温かく受け入れるドイツ人に寄り添う姿勢を見せた。「難民認定や亡命を希望してドイツにきた人間がこんな行為に及んだとすれば、断腸の思いだ」「(容疑者が難民と確認されれば)日々亡命者や難民を懸命に支援しているドイツ国民にとって痛ましいことだ」


難民受け入れが攻撃対象に

 だが政敵たちは、メルケルの記者会見を待たずして、彼女とトラック突入事件を難民危機に結びつけている。

 

 極右政党「ドイツのための選択肢(AfD)」のフラウケ・ペトリ党首は、2015年後半に始まったドイツへの大量の難民流入を非難した。「もう思い違いをしている場合ではない。こんな犯罪行為が、ここ1年半で体系的にドイツに持ち込まれたということだ」


 最近の世論調査でAfDの支持率は10%程度。メルケルの35%には及ばないとはいえ、彼女が率いる与党・キリスト教民主同盟(CDU)の悩みの種になるには十分な数字だ。今年相次いで実施された地方選挙で、13年に結党したばかりのAfDが大きく躍進した。要因の一つは、メルケルの寛大な難民受け入れ政策を痛烈に批判したことだ。

 

 コンサルティング会社テネオ・インテリジェンスのカーステン・ニッケル副所長は、AfDが今回の事件についても従来の手法で臨むと見込む。「すでにツイッターで『メルケルが残した負債』という内容のコメントを矢継ぎ早に投稿している。彼らが事件を追い風にしていくやり方だ」


 メルケルは、与党CDU内でも批判にさらされている。CDUは長年、保守的なキリスト教社会同盟(CSU)と姉妹政党の関係を結んできた。


 CSU所属でバイエルン州内相のジョアヒム・ヘルマンは、今回のテロによって、政府の難民政策の持続可能性に疑問符が付いたと言った。「我々は今すぐ、大勢の難民が押し寄せたことによる危険に対処しなければならない」


 かねてCSUは難民の受け入れ人数に上限を設けるよう訴えてきたが、メルケルは強硬に拒んできた。彼女に批判的な勢力は同じ主張を再び持ち出してきそうだと、ニッケルは言う。


 すでにメルケルは、右派に譲歩する姿勢を見せている。今年1年を通じて、ドイツに入国する移民の数を抑制するよう取り組んできた。トルコ経由でEUに入ってきた難民や移民をトルコに送還するという合意を取り付けたのも難民減らしの一環だ。今月6日にエッセンで開かれたCDUの党大会では、ドイツ国内でイスラム教徒の女性が身に着けるニカブやブルカなど顔を覆うベールを着用禁止にすることも支持した。


極右に政権はとれない

 メルケルの強みは、異なる立場の間で上手くバランスを取れることだ。折に触れて難民保護や治安強化を図りつつ、他方では広範な支持を確保する「実利主義に基づく中道」の手法だ。その点AfDには与党として国を率いる可能性がないし、極右に近い有権者から人気を取ることしか眼中にない。


 事件を受けてテロや治安対策に注目が集まるなか、メルケルが極右に支持を奪われている可能性はある。だが重要なのは、メルケルはまだ終わっていないということだ。AfDには連立を組める政党が一つもなく、来年の総選挙で大きく躍進したところで政権を取ることはできないからだ。


 「我々は恐怖によって無力になりたくない」とメルケルは火曜の記者会見で語った。それはドイツの文化でもある。ベルリンの人々は事件による恐怖をやり過ごし、クリスマスシーズンは続いていくだろう。だがメルケルは、今後のドイツ政治が「恐怖で骨抜きにされる」可能性があるということも、知っておかなければならない。

 

 ベルリンのトラック突入、ISが犯行声明 実行犯逃走か

2016年12月21日 BBC

 

ドイツ・ベルリン中心部で開かれていたクリスマス市にトラックが突入し、12人が死亡し49人が負傷した事件で、過激派組織のいわゆる「イスラム国」(IS)が20日、犯行声明を出した。

犠牲者に哀悼の意を示すため、ベルリンのブランデンブルク門はドイツ国旗の色でライトアップされた(20日)

IS系メディアの「アマク通信」は、「有志連合に参加する国の人々への攻撃の呼びかけに答え」、「戦士の1人」が実行したと述べた。

 

実行犯の身元は分かっておらず、声明内容の信ぴょう性は不明。

 

ドイツの検察当局は、事件後間もなく容疑者として拘束されていた男性を嫌疑不十分で釈放した。報道では、男性はパキスタン国籍で、名前はナベド・Bとだけ明らかにされている。

 

当局者らは単独か複数の実行犯が逃走している可能性を示唆した。

 

ドイツのトマス・デメジエール内相は、犯行声明の内容に慎重な態度を示し、「捜査は複数の線」で進められていると語った。

 

連邦検察のペーター・フランク氏は記者団に対し、攻撃の手口や標的の選び方からはイスラム過激主義との関連がうかがえると話した。

 

このほかの動き(20日)

・国連安全保障理事会は、「野蛮で臆病なテロ攻撃」だと強く非難し、「どのような動機であれ、どこであれ、誰に対してであれ、テロ行為は犯罪であり正当化はできない」と述べた。

 

・英警察は、ロンドンの観光名所となっている、バッキンガム宮殿前で行われる衛兵交代式の時間に、周辺の道を通行禁止にする計画を発表した。

 

・スペイン・マドリードで開かれたバスケットボールのレアルマドリードとブローゼ・バンベルクの試合前に、犠牲者を追悼する1分間の黙祷が行われた。

 

・各国のクリスマス市で警備が強化された。

フランス北東部のランスで開かれているクリスマス市を巡回する武装警官(20日)

米イリノイ州シカゴのクリスマス市では、爆発物探知犬を連れた警官らが巡回した(20日)

ドイツ・フランクフルトのクリスマス市を巡回する警官(20日)

唯一容疑者として拘束されていた男性は、現場から逃走していると周囲にみられ、一般の人が後を追った末に、公園で取り押さえられた。

 

トラックを元々運転していたポーランド人のルカシュ・ウルバンさんは、トラックの助手席で遺体で見つかった。銃で撃たれ刃物で刺されたもようだが、銃は見つかっていない。

殺害されたとみられるトラックの運転手ウルバンさん

AP通信によると、負傷者の一人で、スペイン人学生のイナキ・エラクリアさん(21)は、事件が起きた数分後にツイッターで「トラックが最初に屋台に突っ込む音が聞こえた。速いスピードで、事故というにはあまりに速く、道から逸れた」とツイートした。

エラクリアさんはその後、「考える度に痛い。この痛みを乗り越えられないと思った」とツイートした。

エラクリアさんは20日にベルリンの病院で、折れていた左足の脛骨(けいこつ)と腓骨(ひこつ)の手術を受けた。右足も足首と足の甲の骨が折れているほか、腰も負傷した。親族によると、手術後の経過は良好だという。


犠牲者の追悼

20日には、事件が起きたブライトシャイト広場の隣りにあるカイザー・ウィルヘルム記念教会に犠牲者を悼む人々が集まった。


アンゲラ・メルケル首相は、攻撃の責任を負う人物を「法が求める範囲で、できるだけ厳しく」処罰すると述べた。また、実行犯が難民申請者である可能性に懸念を示し、「ドイツでの保護と安全な場所を求めていた人物がこのような犯行に及んだとすれば、我々全員にとって特に受け入れることが難しいのは分かっている」と語った。


これまでメルケル首相は、移民に対して門戸開放政策を取ってきており、2015年には89万人がドイツで難民申請を行った。しかし、治安を脅かすとして反対する声も出ており、国内の世論は二分している。


反移民政党、ドイツのための選択肢(AfD)の共同党首フラウケ・ペトリ氏は、事件の責任はメルケル首相の移民に対する開放政策にあると批判し、「このような行為を盛んにできる環境が、過去1年半にわたって無頓着に、また組織的に輸入されてきた」と述べた。

事件現場に集まり犠牲者を悼む人々(20日、ベルリン)

カイザー・ウィルヘルム記念教会で行われtあ追悼式に出席したメルケル首相ら(20日、ベルリン)

クリスマス市に突入したトラック

今回、今年7月14日に仏南部のニースで、革命記念日の花火の見物客にトラックが突っ込み86人が死亡した事件との類似性が指摘されている。ニースの事件でも、ISが犯行声明を出している。


ISやアルカイダは、自分たちの信奉者に対して、車両を使って群衆を攻撃するよう呼びかけてきた。

トラックが市に突入した際のルート(オレンジ色の線)