ベトナムが石油掘削を強行 中国の報復も
2017.7.5 17:50 産経新聞
【シンガポール】英BBC放送(電子版)は5日、中国も領有権を主張する南シナ海海域で、ベトナムが石油探査に向けた海底掘削に着
手した、と報じた。この探査をめぐっては、中国人民解放軍首脳が激高し、訪越日程を切り上げた経緯がある。報道が事実であれば、
ベトナム政府は、中国側の猛抗議を無視して掘削を強行したことになり、中国による報復も予想される。
シンガポールの石油コンサルタントの話として伝えた。ベトナム南東部の南シナ海の鉱区開発権を持った国際石油会社が、委託した
探査船で先月21日、ベトナムから約400キロの海底掘削を始めたという。
別の関係者は、ベトナム政府は過去3年間、中国を刺激することを避けるため、同社に掘削許可を出さなかったとしている。BBC
は、中国との衝突リスクが弱まったと判断したベトナム上層部が、「大胆な行動」に出た可能性を指摘した。
同鉱区と重複する海域では、中国も独自に権益を設定し、中国共産党の幹部が名を連ねる香港の石油会社が2014年、開発権を
購入しているという。
ベトナムの石油探査の動きを受け、人民解放軍制服組トップの范長竜・中央軍事委員会副主席は6月18日、ハノイでのベトナム首
脳らとの会談で中止を要求。だが拒否されて激高し、20日から予定していた二国間防衛対話などを突然キャンセルして出国した。
中国人民解放軍首脳がベトナムとの防衛対話をドタキャン 日米との接近にいらだちか
ベトナムが南シナ海で石油掘削を開始 中国と領有権争う海域
2017年7月5日:18時 BBC
ベトナムは中国と領有権を争う海域内で石油の掘削を開始した。石油業界関係者が明らかにした。
業界コンサルタントがBBCに語ったところによると、国際企業タリスマン・ベトナム社と契約した掘削船がベトナム南東部沖で掘削を
行っているという。
先月、訪越していた中国の范長竜・中央軍事委員会副主席が日程を切り上げて出国したのも、これに関連している可能性がある。
中国は南シナ海のほぼ全域に対する領有権を主張しているが、ベトナムを含む近隣各国と一部の島々や岩礁の領有権をめぐって
争っている。
シンガポールのコンサルタント会社モイスのイアン・クロス氏は、掘削船の「ディープシー・メトロ1」がベトナム沿岸から約400キロ離れ
た海域での掘削を、先月21日に開始したと語った。
極めて慎重を要する内容のため、掘削開始の事実が伏せられていた可能性がある。
ほかの石油業界関係者らはBBCに対し、タリスマン・ベトナムは過去3年にわたって掘削許可を求めていたものの、中国の反発を避け
たい当局が許可していなかったと話した。
問題となっている海底の地点は、ベトナムが「ブロック136-03」と呼んでいるが、中国は別の名称「ワンアンベイ21」を使っており、そ
れぞれ別の会社にリース権を与えている。中国は2014年に香港のブライトオイル社にリース権を与えた。ブライトオイルの役員のうち
2人は中国共産党の幹部も務める。
タリスマン・ベトナムは当初、カナダのタリスマン所有だったが、タリスマンがスペインのレプソルに買収されたことを受けて、2015年か
らレプソル傘下となっている。
范長竜・中央軍事委員会副主席は最近、レプソルが本拠地とするマドリッドを訪問している。中国当局がレプソルに抗議をしたのかどう
かについてのBBCの取材に、同社はコメントしなかった。
2014年には、西沙(パラセル)諸島に近い南シナ海の別の海域で、ベトナムと中国双方の沿岸警備隊を含む船の間で衝突が起きて
いる。
(英語記事 Vietnam drills for oil in South China Sea)