無線脳の視点

無線関係のモノ・ヒトに毒された日常を地味に書いてみる。

調布飛行場から離陸した小型機の事故について考える

2015年07月30日 | 航空
今回の航空機事故に際して、亡くなられた方にはお悔やみを、ケガをされた方にはお見舞い申し上げます。
この事故は、そもそも何が要因で発生したのか。
公開されている映像や各種報道の情報から、自分勝手に「結局、こうだったんでないの?」と考えてみた。

飛行機という乗り物は、航空法で、離陸する前に出発前点検をすることを定めている。と言いながらこれは航空機に限ったことでもなく、身近で使われている自動車でも運行前点検をすることは定められているし、自動車教習所でも必ず習う項目である。
ここで、事前に飛行機のエンジンの出力の試験をしたとかしてないとか、前回トラブル起こしたときにエンジン交換しないで直しただけだったとかという情報も出ているが、エンジンはそうそうアッセンブリ交換する性格のものでもないから、きちんと修理を行った上で、かつ、今回の飛行前にも点検したという前提で述べることにする。
(※注:航空機は、規定の耐用時間数を超えた部品はバンバン交換するので、壊れるまで使うという概念は基本的にはありません)

事故の当日はかなり暑い日で、風が弱くて、たくさん人が乗ってて、燃料もいっぱい積んでいて、しかも滑走路は元から短くて…という話がある中、今掲げたような状況は、操縦士が実際に飛び立つ前とか離陸操作をする前に、あらかじめ確認出来る既知の情報だったと位置づけられる。今回墜落事故を起こした飛行機が離陸する時の映像が残っており、報道経由で映像を見た限りでは、「滑走路のエンドのギリギリまで走らないと上がれなかったんじゃ、操縦士の離陸判断ミスだよね(≒人的要因)」と結論づけることが出来るかもしれない。

ここで、タラレバの話ではあるけれど、操縦士が滑走路を半分ぐらい走った段階で、「ダメだこれじゃ上がれない!離陸中止!」を決心していたなら、そして「この機体が安全に停止できずにオーバーランしてしまったとしても、最低限、命は助かる!」と覚悟を決めてくれていたのなら、今回のような痛ましい事故は未然の防げたかもしれない。現時点でテレビに出てくるような航空評論家諸氏が「今回のは人為的なミスだよね?」と明言しないのは、あくまで証拠が無いから言えないだけだと思う。

今回の事故の件で、「結局のところ、コイツら遊覧飛行だったんじゃね?」「慣熟飛行は名ばかりじゃね?」とか、「調布飛行場あぶねーから廃止しちゃおうぜ」「ハンターイハンターイ、ワッショイワッショイ」「オスプレイも基地もハンターイ」という方向にミスリードして対立を煽るマスコミ連中のメシの種にすることは、ちょっと違うだろうよと思う航空関係者・航空従事者は多いはずだ。

航空機に関する事故を目にするたび、航空関係で仕事していた身からすると、多少なりとも関係者側からの視点がある分、余計に胸が締め付けられるような思いである。このような悲しい事故はもう起こらないで欲しいと願うばかりだ。

AOR AR8200Mark3 ツマミだけチューン

2015年07月18日 | 無線機器
使い勝手が良く、出掛ける際にはそれなりに重宝しているエーオーアール社製の広帯域受信機のAR8200 Mark3であるが、どうもボリュームやスケルチのツマミの操作感・タッチ感がちょっと好みでは無いというか貧乏くさいというかチャチというか(自主規制
受信機そのものの仕上がりが良いだけにちょっと残念。

では、ちょっと外装チューンというかイタズラしてやろうということで、見つけ出したのが業務用無線機に装着されていたであろうアルミ削り出しのツマミである。

たぶんモトローラかどっかの古いアナログ業務用無線機に付いていたのでは?という感じのツマミだ。
コイツをAR8200に装着されているものと交換してみると、まぁステキ。

これのおかげで、ツマミを回したときの指先の引っかかり感は、標準のツマミでは得られない雲泥の差が。
海の日の連休初日に新たな自己満足。

パソコンでD-STARの電波を受信(復調)してみる

2015年07月09日 | 無線機器
パソコンのUSBに差し込むタイプのテレビチューナーを使って、パソコンをお手軽に受信機の代わりにするという遊び(SDR#とか)は、しばらく前に着手したものの、チューナーが徐々に発熱して周波数がずっこけたり、USBの接触具合が良くないとハングアップしたりと、出先で使うならまだしも、安定して受信させるには少々難ありだなあと思っていた。かと言って、周波数を安定させるために、わざわざ本体の入手価格よりも高い水晶に交換するってのも気分がよくない。

そこで、「受信性能は普通の広帯域受信機の性能があって安定していて欲しいけど、デジタル通信も聴いてみたいぞ」という欲張りな思いつきから、手持ちのユニデン製の受信機(スキャナー)BCT15を使って遊んでみることにした。

ちょうど、受信機の基板にはディスクリミネータ出力のポイントがあるので、この信号出力をパソコンで取り込んでみようという訳だ。
物理的な接続は、パソコンのマイク端子と、受信機のディスクリ出力間を繋ぐオーディオケーブルだけである。(ただし、10k程度の抵抗一本はカマしてます)
※注1 このBCT15受信機のリアパネルは、思いのほかブ厚いので、穴を開けるよりシールド線を引き出してジャックつけたほうが良いです。
※注2 UNIDEN製の受信機には、基板上にこれ見よがし的なディスクリ端子があるものが多いので、BCT15に限らずこの遊びは出来そう。


ここで出てくるのは今回のキモである DSD (Digital Speech Decoder)というオープンソースのソフト。これがまた良く出来ていて、海外規格を中心としたあらゆるデジタル通信に対応している。このファイル一式をフォルダごと任意のディレクトリに置いておき、コマンドプロンプトからD-STARを動作させるためのコマンドを打ち込むと、受けた信号をソフト上で復調して音声を出力してくれるという便利なものだ。

対応している規格は主に下記の通り。
P25 Phase 1
ProVoice EDACS Digital voice
X2-TDMA - Motorola public safety TDMA system with P25 style signaling (mostly based on DMR)
DMR/MOTOTRBO - Digital Mobile Radio standard
NXDN - 9600 baud (12.5 kHz) NEXEDGE and 4800 baud (6.25 kHz) NEXEDGE/IDAS
D-STAR - The Github version of dsd/mbelib can parse and play back D-STAR traffic.
C4FM modulation
GFSK modulation (including GMSK and other filtered 2/4 level FSK)
QPSK modulation (sometimes marketed as "LSM")

「dsd -h」というコマンドを打つと、ヘルプ画面が出てきて、何を打ったらどんな設定になるのかが分かるので、あらかじめバッチファイルを書いておいて、受信したいと思ったらすぐ実行出来るように用意しておく。
「dsd -i /dev/dsp -o /dev/dsp -fd」などと、DSDを実行するにあたって、入力先と出力先、復調したい種類を指定しただけの簡単なものだ。


D-STARはあまり難しい信号では無いようで、あっさり復調してくれた。何か復調具合が悪いようであれば、パソコン側の入力レベルを適当に調整すれば良い。

それじゃぁこのDSDの設定をいじくり回すと、国内規格のデジ簡とかデジタルで通信している業務用の電波が受信出来ちゃうのか!?・・・とは簡単にいかないのが、モノづくり大国ニッポンの特徴である国内ガラパゴス。コイツを細工してニッポンのデジタル消防無線とかがあっさり復調できたら、きっと楽しいのだろうが、そうは問屋が卸さない。
とは言え、このDSDにはデジタル信号の復調に関する、たくさんのヒントが隠されていることは言うまでも無い。

とっても分かりやすい参考サイト(英語)
DSD For Windows Basic Setup Instructions
 DSD For Windows Basic Setup - Easy Instructions Noobs Guide