つま先立ちの毎日

ちょい悪(ワル)な「みつまめ」が紡いだ日々のできごと…

ジャムの瓶が開かないときに

2005年10月04日 | 気になる人

まだ私が学生の頃
シカゴの科学産業博物館を訪れ
そこで忘れられない展示物に触れた。

ひとつは人体の輪切り
あまり光の当たらない階段の踊り場のようなところに
ひっそりと展示されていたと思う。

囚人だったという女性の体は
縦割りにされたものと、横にカットしたものがあり
骨格から内臓に至るまでじっくりと見ることが出来た。

不思議と「気味が悪い」という思いはなく
自分の体にも同じだけの臓器があるんだ…と
不思議な気持ちになっていた。

そしてもうひとつは胎児の成長過程
事故で亡くなった胎児を集めたそうで
受精後からはっきりとヒトの形になるまでの様子が
ホルマリンに漬けられていくつも並んでいた。

ふたつの人体標本を眺めたあと
静かに博物館をあとにし
明るい芝生を通り過ぎながら
同じツアーのAさんが話し始めた。

そのツアーには初老の方が多く
Aさん夫妻も60歳を超えていたように思う。

「私は結婚して40年以上経って、こどもたちも独立したし
 本当に今あの人(ご主人)と2人なのね」

「あなたたち(私と友人)もいつか結婚して
 家庭を築くと思うんだけれど」

「あの人は本当に頑固で、言い出したら聞かないんだけど
 私がちょっと困ったときにね、さっと助けてくれてね」

「ほら、たとえば瓶の蓋が堅くて、なかなか開かないときに
 ちょっと手を貸してくれたりしてそんな時ふっと
 結婚してよかったなぁと思うのよ」

「私結婚してなかったら
 おいしい佃煮や甘露煮を食べ損なったかもしれないわ」

10年以上経った今も
堅い蓋に奮闘すると、あのAさんの言葉を思い出す。



どんな蓋も、こじ開けられちゃう私だけど。

コメント (2)
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