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フィンランド建築・デザイン雑記帳

ユハ・レイヴィスカの照明器具・・・・・JL 2



フィンランドの建築家、ユハ・レイヴィスカ (Juha Leiviska 1936- )の名が日本で知られるようになったのは、恐らくこの10年ほどのことだろう。
彼は、アールトやピエティラ亡き後のフィンランド建築をリードする建築家の一人である。 
代表作の一つ、ヘルシンキのミュールマキの教会 (Myyrmaki kirkko)は、繊細な空間構成と清楚な美しさで、日本にも多くのファンがいる。
彼の建築からは、光り、音楽、空間の連続性、環境といった言葉が頭に浮かんでくるが、その特徴は彼のデザインした照明器具にも表れている。

写真は、1988年レイヴィスカがヘルシンキのライブリンカツ(Laivurinkatu)23-25にある 「ヴィラ・ヨハンナ(Villa Johanna )」の改修工事の為にデザインした照明器具。
この「ヴィラ・ヨハンナ・ランプ」は、後にアールト家具で有名なアルテック (ARTEK) 社から 「JL 2」 という名称で発売されたが、彼の照明器具は、ほとんどが彼の建築プロジェクトの一環としてデザインされたものである。

レイヴィスカは、影響を受けた照明器具としてアールトとポール・ヘニングセン(デンマークのデザイナーで、有名なPHランプの作者)の作品をあげている。
しかし、その形は彼の建築のようにもっと直線的で繊細だ。 
彼は、アールトの照明器具は大好きだが、それはオブジェのように照明器具自体だけを際立たせているように見えると述べている。

そんな言葉を頭に浮かべながら、アールトとレイヴィスカの照明器具を見比べると、レイヴィスカの器具は確かに明るい。 
食卓などでのコードペンダントの場合、60Wの電球1個だけで、十分な明るさだ。
アールトの照明器具は、それに比べてどれも暗い。 コードペンダント A 335B や A 337 などで比べてみたが、光の範囲が狭く、暗いように思う。 
レイヴィスカが述べているように、フォルムとして美しいのだが、僕は実用面でチョット、採用を躊躇してしまうことがある。 

レイヴィスカは自分が目指す照明器具は、オブジェのように美しいだけでなく、光源として明確な役割を果たし、教会のヴォールト天井(曲面天井)のように上にも下にも光を反射する照明器具であるという。
改めてこのJL 2を眺めると、なにかレイヴィスカ建築のミニチュアを眺めているような気がしてくる。 
幾層にも壁が重なりあうファサードや多層の天井など・・・。

ユハ・レイヴィスカの照明器具はJL 2の他、JL 340(1968年)、JL 341(1969年)、JL 7B(1991年)、JL 2P(1997年)、JL 2L(1997年)が ARTEK社 より製品化されている。
しかし、ARTEK社日本総代理店のヤマギワは、レイヴィスカの照明器具を扱っていない。 日本国内で購入することが出来ないのは、残念なことだ。







中央がユハ・レイヴィスカ、その左はカリ・ヤルヴィネン
【写真:撮影】 管理人(ヘルシンキにて)
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