いわずと知れた

発想の転換。
自由な発想が、時として大成功を収める。

菓子屋の一隅に、席が設けてある。
仕事の疲れで、甘いものを、体が要求する。
先客の荷物が気になる。

「今日は、どこかでお祭りでも？」

赤いひらひらが泳ぐ、水の入った袋。

「違うよ。これ、、熱帯魚のえさ」

小学校を卒業するかしないかの少年二人が
怒涛の如く説明を始める。

アロワナがいかに大きくなるか、亀はどうなのか、爬虫類も飼っている、
そのうち、私のひざに垂れたジェラートの心配も。


そして、去っていった。

テーブルの上には、彼らの食べ終えた和菓子とお茶の湯のみ。

「浜松の少年は、かっこいいね、渋いね」
うなるわたし。
「いや、彼らは特別ですよ」
苦笑する店主。

浜松駅に程近い春華堂での今日のヒトコマ。

和菓子、洋菓子、ジェラートも揃え、
店内で食べる客には、お茶やコーヒーを供してくれる。

リーフパイにうなぎの粉を入れるという
意表をついた発想を美味しさにした、あの春華堂だ。

アーモンド、ピーナッツ、ゴマ、
これはわかる。
ここに、
うなぎ粉、ガーリック、、、

菓子の発想を飛び越えている。

なにがあったのだろう。

発想もすごいし、形にするのも、そして何よりも、
「よし、それをやってみよう」
に敬意を表さずにはいられない。

しかし。

やはり、この大成功は、それだけではない気がする。

こうして立ち寄ると、
お菓子を通じて温かいもてなしをする心が溢れている。
昨日今日の付け刃ではない、
守り続けてきた、客への感謝の空気が充満している。

あの少年たちも、地元の美味しいお菓子を忘れることはないだろう。
きっと、胸を張って、自分の町のうまい菓子として、自慢するだろう。

歴史というのは、そういうことかもしれない。

さあ、お得用袋を手に入れた。
真夜中に、バーボンをパートナーに過ごすことにしようか。


春華堂のサイト。