この町の冬は、意外と寒くなかった。
盛り上がった留学生-日本人学生クリスマスパーティーから帰って、
もう十時になったが町中は人がいっぱい。
そういうにぎやかなものは苦手だ。
最近友達に無視されたような気がして、
今日「パーティー一緒に行く?」と聴いたら返事してくれなかった。
二人とも。
一人でおどおどしながら会場に入って、
荷物を指定された場所に置くと、
一人で携帯を見るふりしてぼーっとしてた。
周りに友達三四人で来る留学生たちが大声で笑ったり
日本人のスタッフたちが「やばい」を連発したり
私は横でじっとするしかできなかった。
窓口から上がってくる友達の二人を見て
待ってるわけじゃなかったけど外に出て迎えにいった。
また訳わからずに無愛想にされて、元の場所に戻っておとなしくした。
二時間。
たまに声を掛けられて少し相手と話したこと以外は、
一人で無言のままドリンクと食べ物をもらったりしていた。
パーティーが終わり、
コートをかぶって外に出ると、なんか自由になったような気がする。
まるで逃げようとするかのように、マフラーをまとって急ぎ足で歩き出した。
イヤホーンをつけて、自分の世界に浸らせてもらって
喧騒の聞こえないまま見回し、
なんか映画でも見ているように。
この町は冬のにおいがした。
ラーメン屋さんたちと居酒屋さんたちの、暖かさの匂い。
一度入ると出たくないぐらいの暖かさだ。
たまに漂ってくる中国料理に近いいい香り。
帰りたくなると思わせてくれた香りだ。
十時半になっても興奮して駅で待ち合わせしてる若者たち
彼らを見て
そんなことが自分にはあったのかと、思う。
ぼんやりしてて、どこかに集中しているのかもわからず、
足は自動的に毎日歩く帰り道を沿って進んだ。
三日前母から連絡が来て、
父は閉塞性睡眠時無呼吸症候群という病気にかかったという。
検査の機械によると一晩の睡眠で父は、
最大一度52秒呼吸が止まったことがあったらしい。
父はずっと心臓が弱くて
この病気もたぶんずっと体に宿っていて
心臓状況を悪化させたという可能性があるという。
私はこれを考えるたびにぞっとする。
初めて身近な人は命をなくすような恐ろしいこととすれ違ってるんだ、
という感じがした。
重度ではないけど、中老年の発病率は20-40%で、
補助治療を受けてよくなるかもしれないとはいえ、
私はほっとできない。
ネット通話でニコニコして平気平気と言ってる父に、
早く寝ようよ、としか言えない。
たぶんごく普通の病気なんだけど
今の私はなんとなく怖かった。
遠くできらりと輝いてるネオンの明かりを眺めて
頭の中は空白だった。
いろいろと考えようとしたら
逆に何も考えられなくなっちゃうんだよね。
もしかして寒くないのも
一種の麻痺かも知れないと思った。
白い息が見えた。
この町は、冬の匂いがする。
盛り上がった留学生-日本人学生クリスマスパーティーから帰って、
もう十時になったが町中は人がいっぱい。
そういうにぎやかなものは苦手だ。
最近友達に無視されたような気がして、
今日「パーティー一緒に行く?」と聴いたら返事してくれなかった。
二人とも。
一人でおどおどしながら会場に入って、
荷物を指定された場所に置くと、
一人で携帯を見るふりしてぼーっとしてた。
周りに友達三四人で来る留学生たちが大声で笑ったり
日本人のスタッフたちが「やばい」を連発したり
私は横でじっとするしかできなかった。
窓口から上がってくる友達の二人を見て
待ってるわけじゃなかったけど外に出て迎えにいった。
また訳わからずに無愛想にされて、元の場所に戻っておとなしくした。
二時間。
たまに声を掛けられて少し相手と話したこと以外は、
一人で無言のままドリンクと食べ物をもらったりしていた。
パーティーが終わり、
コートをかぶって外に出ると、なんか自由になったような気がする。
まるで逃げようとするかのように、マフラーをまとって急ぎ足で歩き出した。
イヤホーンをつけて、自分の世界に浸らせてもらって
喧騒の聞こえないまま見回し、
なんか映画でも見ているように。
この町は冬のにおいがした。
ラーメン屋さんたちと居酒屋さんたちの、暖かさの匂い。
一度入ると出たくないぐらいの暖かさだ。
たまに漂ってくる中国料理に近いいい香り。
帰りたくなると思わせてくれた香りだ。
十時半になっても興奮して駅で待ち合わせしてる若者たち
彼らを見て
そんなことが自分にはあったのかと、思う。
ぼんやりしてて、どこかに集中しているのかもわからず、
足は自動的に毎日歩く帰り道を沿って進んだ。
三日前母から連絡が来て、
父は閉塞性睡眠時無呼吸症候群という病気にかかったという。
検査の機械によると一晩の睡眠で父は、
最大一度52秒呼吸が止まったことがあったらしい。
父はずっと心臓が弱くて
この病気もたぶんずっと体に宿っていて
心臓状況を悪化させたという可能性があるという。
私はこれを考えるたびにぞっとする。
初めて身近な人は命をなくすような恐ろしいこととすれ違ってるんだ、
という感じがした。
重度ではないけど、中老年の発病率は20-40%で、
補助治療を受けてよくなるかもしれないとはいえ、
私はほっとできない。
ネット通話でニコニコして平気平気と言ってる父に、
早く寝ようよ、としか言えない。
たぶんごく普通の病気なんだけど
今の私はなんとなく怖かった。
遠くできらりと輝いてるネオンの明かりを眺めて
頭の中は空白だった。
いろいろと考えようとしたら
逆に何も考えられなくなっちゃうんだよね。
もしかして寒くないのも
一種の麻痺かも知れないと思った。
白い息が見えた。
この町は、冬の匂いがする。